「一泊二食」というプロジェクト

BABYMETALがとまらない.昨年,あの坂本九の「スキヤキ・ソング」から53年ぶりにアメリカ・ビルボード誌の総合アルバムチャートで39位(40位以内)に入った.また,同年のロンドンの名門「ウェンブリー・アリーナ」で開催した公演は,日本人アーティスト初のワンマン公演だった.

世界的ギタリストのマーティ・フリードマン氏は,「(アイドルグループではなく)バンドやスタッフを含めたひとつの『プロジェクト』として見ているんです」と発言している.

プロとしてのプロジェクト・チーム

日本よりも,外国での活躍が目立つアーティストが何組か生まれてきたのは,たいへんよいことだ.この分野では,一日の長がある外国で認められるには,ステージでの実力だけでなく,それを支えるスタッフをふくめた総合力も問われる.BABYMETALというチームは,神がかったテクニックを持つバックバンド(メンバーが入れ替わる)と,天使の声をもつという女性ボーカル,それに,彼女を両脇から合いの手とダンスで支える「天使役」の二人の女の子でできている.しかし,振り付け,作詞・作曲,プロモーションまで,チームとして一つの「ストーリー世界」を一貫してつくりあげる活動をしているのだ.これをプロデュースしている人物が「KOBAMETAL」(小林氏)と呼ばれている.おどろくことに,プロデューサーの小林氏は,芸能プロの経営者ではなく社員なのだ.

いわば,「各職場」がそれぞれの職場の本分を受け持ち,まっとうしているのだ.まさに,宿泊業のあるべき姿との相似形である.

舞台でお客様の目に触れるメンバーは,一流のスキルである.天使役の女の子たちのダンスを侮ってはいけない.彼女らは,これをライブで何曲も続けてやるのだ.おそるべき体力と気力である.観客からは見えない存在のスタッフも,このステージを支えるためにどんな仕事をしているのか?と想像させるにたるプロたちだろう.

圧倒的なプロに出会うとひとは言いなりになる

わたしの棲む横浜には,東京にはない老舗が何軒かのこっている.開港して約160年,横浜が外国文化の受け入れと国内発信をしていた時代は,飛行機よりも船旅がふつうだったおそらく1960年代までだったろう.それでも,元町界隈には老舗があるのは嬉しいことだ.

その元町の老舗の一軒に,ジャケットを買いに出かけたことがある.店に入ると「いらっしゃいませ」という声とともに,主人が近寄ると,いきなり「ジャケットでございますね」という.そして,わたしの体型を一瞥すると,数あるジャケットのなかから一着を選んだ.その間,わたしは上着を脱いでいたので,あたかも着替えるようにそのジャケットに腕をとおした.ぴったりである.「よくお似合いですよ」と主人.わたしは,「これください」と言って,わずか数十秒で買いものを終えた.以来,ちゃんとしたものはこの店と決めている.この店の取り扱う品々のセンス,さりげない提案が,わたしの希望と一致するからだ.だから,わたしは安心して,主人の言いなりになっている.

宿はお客様を言いなりにさせているか?

ラテン語の「HOSPTIUM(ホスピチウム)」が英語の「HOSPITALITY(ホスピタリティ)」や「HOSPITAL(ホスピタル)」あるいは「HOTEL(ホテル)」になったという.だから、病院とホテルは言語上では兄弟である.いまや,病院では「電子カルテ」があたりまえになったが,いぜんから医療現場では手書きでも「カルテ」は必須の情報源である.それは当然だろう.自分の病歴や症状が記入されているから,カルテの情報がなければ事故になりかねない.ところが,案外,宿泊業,なかでも日本旅館で,カルテに匹敵する顧客情報を利用している施設は少ない.だから,これを電子化した利器を活用している旅館も少ないのだ.かつての「団体」主体だった時代の名残である.

情報不足はリテラシー(活用能力)の欠如から生まれる.「団体」からとっくに「個人」に変化した市場にたいして,いまだに「待ちぼうけ」のごとく,たまにやってくる団体を心待ちにしている間,個人客ファンを作らなければならないという業務上の使命を忘れ,個人顧客情報の収集もしないから,活用などできる環境にない.つまり,「カルテを作らない医者」のようになってしまったから,だれも怖くて近寄らなくなる.

こんな宿でも「アレルギー情報だけ」は,収集していると胸を張ることがある.当然である.アレルギーを申告したお客様の命に関わる情報だ.これが,個人顧客情報のすべてと言われると,言われたほうが呆然とする.

存在意義から問わねばならぬ

お客様から圧倒的な信頼を得るには,なにをしなければならないのか?BABYMETALというチームから,プロジェクトとして学ぶ必要がある.

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