いまさら「√」の発見的教授法

電卓についてまえにも何度か書いたが,講演会で横道にはなしがズレたときにする「√」の話題が,おもわぬ好評をいただくことがある.
日本の数学教育の「落とし穴」だと感じる瞬間でもある.
すでに世界の主流であるという「発見的教授法(heuristic method)」への「拒否」なのか「無知」なのかしらないが,純粋理論一辺倒で,それがどんなふうに実生活に役立っているかをおしえない.

わが国のこのやり口は,圧倒的に教師有利(生徒不利)のたちばを維持できるという点で,古来からの「諭して教える」という「教諭法」の漢字の意味をそのまま体現しているから,ある意味開き直ってもいる態度である.
先生たちの労働組合としては,この楽な方法を批判する気はないのかもしれない.

しかし,数学の抽象的論理を,さいしょからさいごまで「抽象」のままの解説で,子どもの頭脳に押し込もうとするから,たいがいの人数が理解不能になって,そのまま数学嫌いになってしまう.
だから,あえていえば不良品を大量生産するシステムになるから,これを批判反省して,世界は「発見的教授法」を採用したのだ.

日本の学校教育は,まさにTWI研修の精神に反しているということがわかる.
わが国の製造業では「常識」にあたるものが,サービス業に導入されず今日まで及んでいると書いたが,そのサービス業に「学校教育」という分野もふくまれることがよくわかる.

学校の先生のおおくが,新卒者採用だから,なるほど製造業での実務経験など期待する方がどうかしている.
そういうわけで,人的サービス業という分野に新卒者採用で就職すれば,理論の具体的利用方法をしらないままで幹部になるということが異常ではなくなるのである.

そこで,ビジネスにおける「√(平方根)」のはなしだが,その前にひとつ,道具についても触れておきたい.
「実務用電卓」といわれる「ふつうの電卓」には,二種類あるということだ.
「√」キーが「ある」ものと「ない」もの,である.

電気量販店の電卓コーナーに行くと,あろうことか「ない」ものを「経理用電卓」と表記していることがある.
「経営の理屈」をもって「経理」とすれば,まちがいなくこれは「誤記」である.
「√」キーが「ある」ものをかならず選択するのが,すくなくても経営幹部の幹部たるゆえんである.

ビジネスの場面で「√(平方根)」を必要とするのは,「年利」をかんがえるときになる.
たとえば,本年の数字と昨年の数字を比較して,その「伸び率」をしりたいときには,
本年の数字/昨年の数字-1
で計算する.このあとに100をかければ「%」表示になる.

では,本年の数字と一昨年の数字を比較したいときにはどうするのか?
本年の数字/一昨年の数字-1
では,年率の平均にはならないから,割り算部分を「√」のなかにいれて計算しなければならない.
これを「幾何平均」と呼んでいるが,呼称はこのさいどうでもよい.

世の中は「複利」でできている.
一昨年を計算のスタートにすれば,一昨年 → 昨年 → 本年,と数字はたどる.
だから,一昨年から昨年の伸びを踏み台にして,昨年から本年の数字ができている.
それで,この伸び率の平均がしりたいのだから「√」をつかうのだ.

かんたんにいえば,二年前の数字との比較だから「二乗・平方」の「根」がひつようになる.
実務での表など,よく目にする数字の書類には,一昨年の数字もよくあるから,気を利かせて幾何平均も表内にあればいいが,あんがいとないから,そのときにちょっと電卓で確認したくなる.
このとき「√」計算ができないと,お手上げなのだ.

「√」は,「二」乗をもとにするので,この例では「二」年前の数字につかう.
だから,2の二乗の4年前,2の三乗の8年前の数字なら,「√」キーを二回,三回とおせばこたえがでる.
しかし,そのほかの年数は計算できないから,自在に「累乗」と「累乗根」の計算ができる関数電卓の出番がここにでてくる.

関数電卓は専用の計算キーがたくさんあって,一瞬ひるむが,ビジネス場面で三角関数はつかわないから,目立つ位置にある「Sign」「Cosign」「Tangent」キーは,まず一生必要ない.
そういう意味で,ムダな機能に高いお金をはらうのはもったいない気もするけれど,「利率」にしてどうなの?という疑問をかんたんに解決してくれる文明の利器である.
ボケ防止に,あいた時間で三角関数の問題を解いてみるのも,一興ではあるから,まるでムダではないだろう.

スマホの無料アプリもあるけれど,やはりビジネスの場面では,押し間違えがない「実機」をつかいたいものだ.
ふつうの電卓なら「√」キーの「ある」もの.
関数電卓は,量販店なら980円で手にはいる時代に生きている.

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