大津に行ってきた

琵琶湖の周りをぐるりと支配しているのが滋賀県で、その県庁所在地が大津である。
湖の左手にあるもっこりした山が比叡山で北方に比良山地がつづき、山頂から向こう側は京都だ。

JR湖西線が日本海の敦賀にむけて走っているのは、琵琶湖西岸断層帯をいく。
そんなわけで、湖西には100以上の地滑りによる「湖底遺跡」がある。

県の中心は日本一の湖だから、ひとが住みようもない。
けれども大津からは、ようやく向こうに琵琶湖大橋がみえるくらいで、手前の広大にみえる湖(南湖)は、地図で確認すれば全体のほんの一部でしかないのである。

琵琶湖自体は世界的にめずらしい「古代湖」で、北湖にある竹生島にちかいあたりでは水深が100m以上もある。
「湖」ではあるが、出口が「瀬田川」一本ということから、法的にはなんと「川」としての扱いになっている。

わたしが滋賀県に宿泊した経験は、長浜と彦根しかなく、しかも自動車移動だったので、このたびの大津駅での下車は、日帰りで栗東に出張して以来である。
京都から電車で9分。途中駅は山科ひとつだ。

距離にすると10Km。
これは、横浜-川崎間とか、東京-新宿間とほぼおなじである。
県庁所在地どうしが隣接しているのは、ほかに仙台市と山形市、
福岡市と佐賀市があるけど、庁舎間でもっとも近接しているほどに「近い」。

どうして、京都に近すぎる大津が県庁所在地になったのか?
それは、江戸時代、大津が天領で「代官所」があったからである。
他の候補地は、みな「藩」の城下町だったし、最大の彦根藩は徳川譜代だから、明治政府にきらわれた。

過去150年で、彦根に県庁を移転させる議論が10回以上もあるというから、10年に1回ぐらいの根深さである。
天領であった街の格式と、人口集積や経済集積との綱引きだろう。
けれども、藩をひきいる一国の大名よりも、お代官様のほうが「格上」とは、明治の役人根性はさすがに下級武士政権ならではと感心もするが、やっぱり違和感たっぷりである。

じっさい、大津駅で下車したみたが、平日とはいえたいへん静かで、県庁までの道のりは閑散としていた。
もっとも、大津駅前に商業集積はほとんどなく、京都からたった10分でかくも雰囲気が激変するものか。

ほんのすこしだけ「東海道」をあるいてみた。
道幅の狭さはおそらく当時とおなじで、数軒の家が往年の街道筋らしい構造のまま残っていたが、おおきなビル建設現場に「NHK大津放送局建替え工事」とあったのがより印象的だ。「東海道」が裏道になるのだろう。

つい先日、「西武百貨店大津店」の閉店が発表され、地元にショックがはしったとのこと。県庁所在地から百貨店が消える。
けれども、京阪電車で30分も乗れば京都の繁華街、四条河原町にいけるから、閉店後のビルのつかいみちをどうするかである。

ほぼ隣接する旧パルコ(現「Oh!Me大津テラス」)は、2017年に閉店後、昨年あらたに開業した複合施設である。
ただし、入店している店舗のおおくが「全国区」なので、わたしのような他県からの者にはほとんど魅力に薄い。

JRの駅では、大津の次、膳所(「ぜぜ」と読む)のほうが近く、またこちらは駅までの道が狭いが、個人商店などの集積もあって大津よりも賑やかだ。
さすが本多6万石のご城下なのだ。

自家用車での利用をかんがえると、さらに周辺にあるショッピングセンターが「便利」になっているのは、このエリアの「駐車場」が琵琶湖ホールの立体駐車場になることなども影響しているはずだ。

ふるい街の街づくりの難しさをみることができるのは全国共通で、江戸時代からの変化にまにあっていない。
それで、江戸時代につかわれなかった場所が、大型開発に向いていることになる。

地元のひとに、大津の魅力を質問したら、黙ってしまった。
ならば、おすすめの土産物はなにかと話題を振ってみたが、これも黙ってしまった。
すすめられる名物は「特にない」というこたえだった。

あんがいこれはわらえない。
わたしだって、いまどき横浜の魅力はなにかと質問されたら黙ってしまうだろうし、おすすめの土産物はなにかときかれたら、「シウマイ」ぐらいしか浮かばない。

これは、「全国一律」という中央集権思想による予算投下がおこした現象で、「全国一律」の金融政策を強制することで、地元企業に「融資がつかない」からである。
それで、地元のレアなお店や商品は、よそ者の目にふれることがない。

だれがわるいかではなくて、そういう仕組みの国になったのである。

たった10分で、京都駅の喧噪にもどってみれば、その京都すら「全国一律」から逃れることができないのだとかんじる。

いったい自分たちは何者なのか?

この問いの意味が、ますます重くなっている。

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