リモート・UFOキャッチャー

ゲームセンターで「定番」となっているのが、UFOキャッチャーである。
さまざまな景品を、縦横左右に平面移動するクレーンで捕まえて、落とし穴に入れて手にいれる単純なゲームだけれど、ボタンの感度とクレーンの掴む力がだらしないから、おいそれと狙った品をゲットできない。

ひとは、叶いそうなチャンスがあれば挑戦したくなるし、惜しくも失敗となると、それが単純なほどに熱がはいって、あきらかに商品価値を上回る投資をしてしまうものだ。

この心理は、あらゆるギャンブルに通じている。
複雑なルールでは、「賭け」にならない。
そして、1回の「勝負」だって、短時間が望ましい。
よって、何度も繰り返す行動をさせるように設計する。

しかしながら、「達人」も存在していて、どのくらいの「授業料」をかけたのかは不明だけれど、おそるべき「スキル」をもっているひともいる。
両手で持てないほどの景品を得ているひとを目撃するのは、まさか「サクラ」ではあるまい。

このゲームの発祥は、昭和の日本だという説がある。
1965年に、タイトーから発売されたマシーンがある。
すると、日本発の世界的発明品のひとつだともっと認識されていい。

コロナ前、外国人旅行者たちが、このゲームに夢中になっていたのは、自国にない、という理由はもちろんだし、サブカルの発信から自分も「やってみたい」が動機にあった。

クレーンで狙った景品を「掴む」のではなくて、その配置からの作戦が必要で、ターゲットに触ることなく、周辺のグッズをぶつけたり転がしたりして、手中に収めるというテクニックをいかに使うか?
そのための、手数にかかわるコストをどう予測するか?が達人の発想法だということも、事前にしっている。

さらに、その動機には、日本オリジナル・デザインの景品が多数あり、しかも系統立ててシリーズ化されている。
だから、「収集欲」も刺激するようになっているのである。
それは、人気の景品には、「市販していない」という付加価値もお約束になっているからである。

ゲーム機で偶然を操作するという行為における「楽しさ」だけではない、ご褒美としての「希少性」が、二重の価値を創造している。
昨今では、景品を獲るまでのプロセスを動画で記録し、これを公開することで再生回数を得ているひとも多数いる。

つまり、れっきとした「観光資源」になっているのである。

それならば、アプリでクレーンを遠隔操作させたら、日本に来ずともどこでも楽しめる。
これで、爆発的に人気になっている。

すると、ゲーム機の設置場所もどこでもいい。
ひとも訪れないような地域に、家賃が安くて設置できる面積が確保できればいい。
ゲーム機には、作戦が立てやすいようにカメラを設置して、これをプレイヤーが観ながらプレイできればよい。

ただし、プレイヤーが獲た景品をどうするのか?が問題になる。
これは、「国際発送」となる。

けれども、ゲーム機の稼働率や、売上げと景品の原価率管理は、ほぼ自動化管理ができる。
しかも、売上金の回収の手間がない。
リアルなゲーム機では、硬貨を回収しないといけない手間が大変なのだ。

上述の原価管理のために、ゲーム機ごとの売上げ管理をしないといけない。
しかも、テレフォン・カード普及前の公衆電話や現金のみの自動販売機を設置した経験があればわかるとおり、紙幣や硬貨を回収する手間は、気が遠くなるほど面倒くさい。

硬貨はその重量もある金属片のかたまりだから、これを取引先銀行に持ち込むのだって大変だ。

そんなわけで、このゲームの利点とビジネス・モデルをかんがえると、あんがいたくさんの専門分野から成り立っていることがわかるし、売上管理などが「リアル」にできることもわかる。

これは、ずいぶん前にパチンコ店が完成させた管理手法の、あらたな展開だ。

ただし、パチンコは、玉の貸出を得ないとプレイできない。
つまり、パチンコ玉1個いくら、という換算率で玉を貸して、景品交換には再び、パチンコ玉1個いくら、という換算率で計算する。
このときの、換算率の「差分」も利益となるので、金融機関に似ている。

ゲーム機は、日本円での取引を基本とするから、外国からプレイするなら、ここで外貨交換ということも発生する。
この「交換」をどうするのか?
ここに、電子通貨の萌芽がある。

それに、もしかしたら、景品の国際発送ではなくて、保管サービスもあっていい。
保管した景品を、いつでも画像で観ることができる、ということだってうれしいサービスになるだろう。

たかが、UFOキャッチャーなのだけど、ビジネスの拡大範囲はあんがい広くて深いのだ。

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