中央構造線露頭でかんがえる

日本列島は,おおきく弓なりの形をしている.なかでも「本州」のまんなかあたりではっきりと反りかえっていて,その延長線に北海道も四国も九州も,果ては沖縄もある.
これは,はるかむかしに,地殻がうごいてできたというから,ふだんはまったく意識しないことだ.

地球という星が太陽系にうまれて46億年といわれているが,星として死んだわけでもなく,いまでも活発な活動をしている.
わたしたちは,そういう星に住んでいる.

日本の本州にある「南アルプス」と呼ばれている山岳地帯は,地球上でもっともはやく動いている地域として世界的に有名だ.それは,年間4ミリメートルで高くなっているからだという.
山が高くなっている!

10年で4センチメートル,100年で40センチメートル,1000年で4メートル,10000年で40メートルになる.このままいくと,100万年で4000メートルになるから,いまの高さを加えれば,ヒマラヤ並になる.

もっとも,インド大陸が衝突してできたヒマラヤも相変わらず隆起していて,こちらは年間2ミリメートルだ.日本の南アルプスがヒマラヤを抜き去るのに何年かかるか,各自計算されたい.ちなみこの計算を,小学校では「旅人算」と呼んで中学入試の定番になっている.

ひとの一生がいかに短いものかというよりも,ひとの存在を無視した地球という星の物質的活動である.
この活動のおおもとは,太平洋の海底に噴き出すマグマだという.

われわれが住む地面の30キロメートル下には,ドロドロに溶けたマグマの対流がある.
なぜそんなドロドロのマグマがあるのか?といえば,46億年前に火の玉のような星だったからである.つまり,この星は,46億年たっても,いまだにぜんぜん冷えていない.

陸地より地殻が薄い海底に裂け目ができて,そこから吹き出したマグマが「プレート」になって滑ってくる.そして、ご存じのように海溝で沈み込み再びマグマになる.
このプレートに乗っかった丹沢島が500万年前に,伊豆島が50万年前に本州のまん中に衝突した.

丹沢島は本州の地殻の下に潜り込んで上には丹沢山地から秩父山地をつくり,もぐり込んだ下は甲府盆地に到達した.どちらの山にも,しっかり神社がある.
神奈川県と山梨県の縁は深いが,地面の下でつながっている.
それでか,丹沢の相模平野側に出る温泉と,甲府盆地笛吹川沿いの温泉の泉質が似ている.

伊豆島の衝突では,地上に皺ができて,それが南アルプス,中央アルプス,北アルプスをつくったというからすさまじいエネルギーである.
南アルプスが世界的スピードで高くなっているのは,衝突して伊豆半島になった伊豆島がいまもぜんぜん「止まっていない」ということだ.
南アルプスの山頂付近からは,貝殻などの化石がみつかっているから,伊豆島衝突前のその前には,海底にあった証拠である.かつての海底が2000メートル以上も隆起した.

伊豆半島の付け根,三島にある「三嶋大社」には,伊豆島衝突の伝承があるから不思議である.
どうやってむかしのひとは「伊豆島」が本州に衝突したことを識ったのか?
しかも,いまだにめり込んでいるのだから,三嶋大社の信仰は現在進行形である.
「不思議」と認識した「不思議」がここにある.

本州を南北に真っ二つに分断しているのは,有名な「糸魚川静岡構造線」で,この線で本州は折れ曲がっている.諏訪湖の諏訪大社上社前宮,諏訪大社上社本宮は,不思議と真上にある.
一方,諏訪湖は伊那谷へ中央高速道路がほぼ真上を走る「中央構造線」が交差している.
これより西側は,まるで魚の中骨のように分断線が走る.この線で地下構造がまったく異なっているというから驚きだ.

中央構造線がわかりやすいのは天竜川で,国道152号がある.
伊勢湾から紀伊半島を分断して,四国山地,そして九州を分断し沖縄につづく壮大な地質構造のちがい.豊岡稲荷も,伊勢神宮も,高野山もこの線の上にあるのは偶然か?

中央構造線が,地上に顔を出しているのが数カ所ある.
とくに,長野県下伊那郡大鹿村にある「露頭」は有名で,ここには唯一の「中央構造線博物館」(村営)がある.

わたしが不思議なのは,どうしてここが「一大観光地」になっていないのか?である.
ものすごく「地味」なのだ.
「露頭」の現場を観るための道も,「露頭」そのものも,なんだここは?というぐらい「地味」を通り越して「素っ気ない」.

ほんらい「観光」には理解のための知識が必要だ.
神社仏閣とて,そもそもの意味をしらないと建物を観ても価値がわからない.
仏像だって,「印形」の知識があればグッとわかりやすくなる.
つまり,「観光」には,ひとの知識欲を満たす,という要素が不可欠なのである.だから,教育的なのだ.

現地こそ,という要素と事前知識が組み合わさって,観光の価値は俄然高まるのだが,「余暇」の要素が強すぎるのがわが国の「観光」の姿である.
「中央構造線露頭」のような,地球レベルでも珍しい場所はどうあるべきなのか?
幸いにして手がついていないから,ぜひヨーロッパ人にプロデュースを依頼するとよい.

どうやら「この分野」は,われわれ日本人にはプロデュースができない.
それは、「目的合理性」の追求が論理的でないからだろう.
反省しても,批判しても,できないものはできない.
できるひとを呼んでくるのがせめてもの「合理性」というものだ.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください