素晴らしき「きたなシュラン」

見た目は汚いけれど、料理は美味しいレストラン、というアイデアを「お笑い番組」でやったことが見事だった。
世界的レストランガイドに引っかけた、「ネーミング」も見事で、フランス人には意味がわかるまい。

じつは、一種の「ドキュメンタリー」なのである。

これを真似て、自分の個人的人生経験から、勝手に「きたなシュラン」を見つけて、勝手に認定する、ということもできる応用が効くことも、あんがいとうれしいことになる。
これは自分の「秘め事」にすることだから、SNSで紹介したりはしない。

前にも書いたけど、わたしはネットのレストラン・ガイドをみない。
みても、もっぱら場所と営業日・時間の確認であって、本来の「書き込み」は「みない」ということだ。
「参考にならない」というのが、結論になっている。

なので、自分で「書き込み」もしない。

たとえば、「ものすごく美味い」とたくさん書かれているからといって、「ものすごく美味い」とはおもえなかったり、その逆に感じることがある。
また、インスタントラーメンの方がよほど美味い、という書き込みがあるのに、ぜんぜんちがうこともある。

書き込むひとの正直さがわからないけど、最初に疑うのは「味覚」である。
それでもって、書き込んだひとの正直さも疑うことになるから、最後は日本人の劣化を嘆くことになって、なんだか大袈裟になるのが嫌なのである。

まぁ、どうしょうもない日本と日本人を「これでもか」とこき下ろしながら、だからこそ「伸びしろ」がある、という希望的観測を書いているひともいらっしゃるから、やっぱりひとそれぞれなのである。
むしろ、フランスのように何度も革命で世の中がひっくり返るような、グダグダを経験しないといけないとした、小室直樹の方がわたしの性に合うのも、「好み」なのだ。

それでもって、前から気になっていた店に行ってみた。
何度も前を通過しているのだけれど、コンサバなわたしは遠くの行き慣れた店に入ってしまっていたのである。
しかし、今日はちがう。

腹が減って、いてもたってもいられない。

まるで、『孤独のグルメ』の主人公になったようだ。
いまいる場所から、最も近いのが、「あの店」である。
駐車場は幸いにも1台分だけ空いていた。
それにしても、「近接」して気づいたのは、入口の窓に貼ってあるメニューの「値段」だった。

あまりの「安さ」に、気が引けるだけでなく腰が引けた。
300円台からある。
しかし、もうどうでもよくなって、ままよっと入店した。
なるほど、常連とおぼしきひとたちの店であった。

そこに、妙に人懐っこい親父さんがやってきて、自分ひとりで切り盛りしているから時間がかかる、なので、無料だからコーヒーでも飲んで待っていてくれという。
ちゃんとしたコーヒー・マシンが、きたない店内の奥にあった。

セルフなのでとりあえず、アイスコーヒーを選んだけど、それが「ふつう」のアイスコーヒーなのに、すこしだけ驚いた。
ふつうの喫茶店のように「うまい」のである。
なんだか、異空間である。

壁には、緑のメッシュのジャケットが掛けてある。
「◯◯小学校」と背中にあるから、登下校時の「緑のおじさん」をやっているのだろう。

メニューから「最高額」の「トマト・ラーメン650円」が目に飛びこんだ。
「ソース焼きそば400円」、ぜんぶ税込みである。

両方とも注文した。

先に出てきたソース焼きそばは、意外なボリュームで、しかも、意外な美味さだった。
またまた、ふつうのソース焼きそばなのだ。
具材もちゃんと入っている。

すると、おもむろにトマト・ラーメンができた。
自分でとりにいくと、匂いが「イタリアン」なのである。
スープは、バジルが効いた、およそラーメンどんぶりに入っているとはおもえない、濃厚なトマト・ソースである。

そこに、ラーメンが沈んでいる。
しかしながら、この麺に腰があって、けれどもパスタではない、不思議な感覚だ。

気がつけば、親父さんが横にいて、「トマト・ラーメン初めて?」という。
いやいや、この店が初めてでしょうと内心おもったけれど、構わずに出てきた言葉が、「セットの半チャーハン」だった。
この味にチャーハンはないとおもったら、案の定、ご飯と粉チーズの「スペシャル・セット」があるよ、という。

この際だから、一通り経験しておこう。
たしかに、このスープというかソースにご飯をからめたら美味そうである。
それで出てきたのが、小皿に山盛りの粉チーズとご飯だった。
「リゾットみたいでしょう?」

おっしゃる通りである。
壁の写真にある、特製ピザは昼でもできるかときいたら、うれしそうに、大丈夫、パリパリで美味いよという。
どうやら、親父さん本人がイタリアン好きのようである。

ならば、どうして中華食堂なのか?

「井之頭五郎」のごとく、おおいに食べ過ぎたけれど、美味かった。
しかし、パルメザンチーズをあんなに出して、原価と見合うのかが心配になる。
こんなに食べて、これだけの価格。

だれにも教えたくない、「きたなシュラン」を発見した。

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