残念な韓国大法院の判決

昨日は韓国で歴史的な大法院(最高裁判所)判決があった.
これは、「司法」の判断だから,「政府=行政」の判断ではないという希望的観測がある.
しかし,彼の国では,前大法院長が,裁判の引き延ばしをはかった(日本有利になる)嫌疑で検察の捜査をうけるとか,外交部(外務省)でも日韓協定支持のコメントをだしたことを調査すると現長官が明言しているから,政府の見解も判決を支持するものだ.

むしろ,現政権が大法院に圧力をかけた,という順番を示唆するのが,前大法院長への捜査だ.
つまり,検察とは法務行政の一部だからである.
すると,これは日韓基本条約の根幹をなす「相互主義」にもとづく賠償請求権の放棄への判断だったはずだから,条約の破棄を通告したという意味になる.

相互主義とは,お互い様,という意味だ.
当時,日本だった朝鮮半島で,日本人だったひとたちが,本土の日本人と同等に徴用されたのは,相互主義ではない.
日本国民だったからだ.もちろん,本土の日本人も徴用されている.
なお,「徴用」といってもちゃんと給料はでるので念のため.

「併合」という歴史が間違っているから,日本国民だったことが間違いだ,という論理は,事実を無視している.
どんな理由であれ,当時の朝鮮半島は,日本国であって,そこの住人は日本人として扱われたのは事実である.
慰安婦もしかり.数では本土の日本人慰安婦のほうがはるかにおおいはずだが,国家による強制でないことはすでに明らかだ.

そこで,国家間の条約締結の時点で「相互主義」がうまれるので,日本側は朝鮮半島に投じた莫大な資産の放棄が約束され,そのかわりに韓国側は,これ以上の一切の請求権を放棄したのだ.
それには,個人請求権放棄の保障のため日本からの巨額資金提供もしたから,当時,この条約が片務的(日本の一方的不利で相互主義に反する)として日本国内の強い反対にさらされたのである.

ちなみに,朝鮮は日本だったから,サンフランシスコ講和条約の当事国になっていない.なにを根拠に,「戦勝国」だと主張しているのかわからないが,それで「日韓基本条約」が結ばれた.
「基本条約」で「平和条約」でないのは,戦争状態になかったからだ.日本だったのだから当然である.

そして,これらの残留資産とあらたな資金で,奇跡的な経済復興をなしたのも歴史の事実だ.
ただし,個人請求権放棄のために日本側が提供した巨額資金を,受け取った韓国政府(朴政権)が個人に渡さず使ってしまったのも事実だ.

もちろんいったん相手にわたしたカネだから,ちゃんと当初の主旨どおり国民への保障としと使ってくれないとこまるのだが,そこが国家間・政府間のカネなので,相手政府の判断にまかせるしかないというのも常識だ.
つまり,個人保障のためと理由を明記して相互に納得したからわたしたカネを,あろうことか流用したことを忘れたふりをして,さらにカネをよこせというのが,この判決の主旨になる.

また,ここで「巨額」というのは,当時の金額でという意味と,当時の日本の外貨準備高に比較してという意味がある.なけなしのわずかな外貨から,歯を食いしばって拠出したのである.いまの金額で議論してはならない理由だ.

なお,この手法(残留資産の放棄と請求権の放棄)は,台湾でもおこなわれた.
反日の権化のはずの蒋介石が,親日の筆頭のようにいわれるゆえんだが,そもそも大陸を追われて行き先が台湾しかなくなった蒋介石が,どさくさに紛れて日本の残留資産を濡れ手で粟のごとく得たのだから,請求権などかんがえるひまもなかったのではないか?

むしろ,マッカーサーの優柔不断で,本来はいまも日本領であるはずの台湾の統治権が,宙に浮いたまま放置されていることが問題だ,という李登輝元台湾総統の主張こそがこころに痛い.

李登輝(岩里政男)氏も日本人として京大から学徒出陣し,終戦時は名古屋高射砲部隊の少尉だった.
台湾は朝鮮とちがって「二等」国民扱いだったから,日本名は許可制,兵になることが許されず,血判状を総督府に送りつけて台湾兵が誕生しているが,それでもはじめは兵ではなく「軍属」だったから軍人扱いをされていない.李登輝も,台北帝大には現地人制限から入学できず京大に入学しているのだ.

一等国民の朝鮮出身者は,日本名は届出制,士官学校への入校も許された.それで,朴大統領(高木正雄)は,日本国籍のまま満州国陸軍士官学校へ入校して終戦時は満州国軍中尉になっている.

その意味でいえば,台湾のように戦争の結果ではなく,併合という形式で平和的にきまった日本の領土が,北部を中共に奪われたものの,という文脈でみれば,韓国の独立とはなんだったのだろうか?

朝鮮半島統治,台湾統治のための国家予算投入による収支は,あきらかに出超(投資額と税収)だから,じつは日本本土の国民所得は,政府の介入で彼らに強制移転させられた.
欧米型「植民地」の常識からすれば,ありえない本国の一方的赤字なのだ.

しかも,昭和20年の4月に決議された,衆議院議員選挙法の改正で,朝鮮と台湾,樺太に選挙区ができていた.インド人が英国議会に,ベトナム人がフランス議会の議員になるようなものだとすれば,「ありえへん」ことを日本人はきめていた.

つまり,被害者はかわいそうな朝鮮人でも台湾人でもなく,日本人自身だったということが,あまりにも意識されていない.お人好しの日本人として,バカにされるゆえんである.

はなしを韓国にもどそう.
つまり,まったく相互主義ではない,韓国側にとってはものすごい好条件で日韓基本条約は締結された.
これには,当時の東アジア情勢が切り離せないから,とうぜんにアメリカの意向もあったはずで,日本の政権・政府は反対論を押し切ったのだった.

だから,二国間の条約にみえて,ぜんぜん二国間だけの問題ではないのだが,儒教的独りよがりの内部規範に落ちていく韓国を止める術は,もはや他国にはないから,まことに残念な,そして歴史がうごく瞬間を目撃した,というしかない.

わが国からすれば,日清日露の戦争でながした朝鮮独立のための「血」が,百年の時を経て無意味になっただけでなく,状況がおなじになってしまった.
このことは,実質の半島支配者がだれなのか?でかんがえれば,中国とロシアがせめぎ合うこと確実だから,ほんとうはもっとも危機的なのは半島の住民たちなのだが,気の毒なことに百年前同様に気づいていない不思議がある.

この恐ろしいまでの鈍感さこそ,ときの李氏朝鮮末期の混乱の原因だった.
いわゆる,大院君と閔妃による宮廷内の権力闘争である.
そして,その鈍感さと権威主義にあきれた西郷隆盛が,征韓論をいうのだから,まったくもって歴史が360°回転したかのようだ.

ここまで彼らにさせる反日のエネルギーはなんだろうか?
他国人には,自滅にいたること必至の,絶望的な努力にいそしむエネルギーである.
それは,もしや日本による「両班」いじめの「恨」なのではないか?
500年間もつづいた李氏朝鮮王朝をささえた身分制度である.

日本では,支配階級の武士の人口比は江戸幕府発足時で約4%,幕末で約8%だった.武家の分家と,生活に窮した武家が町人に苗字を売ったことが二大原因という.

ところが李氏朝鮮では,高等文官と高等武官の採用試験(朝鮮版科挙)に受験できる身分が両班(文武両方の「両」)に限定されていた.
それで,開国か攘夷かに大揺れしていた日本の幕末頃には,両班の人口比が約52%という事態になっていた.

これは,世界的にもめずらしい比率である.
支配階級のほうが,支配される国民の数よりおおいのだ.
法を支配する階級だから,たとえ主人が無職でも両班の家の使用人は,アメリカの奴隷以下の身分で,主人がなぶり殺しをしても一切罪には問われなかった.

明治維新を達成した日本政府の身分政策は,「四民平等」をカンバンにかかげたものだった.
だから,日本統治下の朝鮮でも,「四民平等」は推進されたはずだ.
日本の内地では見せかけのカンバンでもあったが,朝鮮では本気になった.
さほどに,両班階級とそれ以外の身分差がひどかったからである.

日本軍の協力者だったが,いまや伊藤博文を暗殺したとして英雄になっている安重根は,両班の出身で,自家における使用人への扱いに疑問を持って,身分制に反対する運動に没頭していた.
それが,日本統治の協力につながるのだ.
獄中の安が書いて裁判(ロシア側に任された)に証拠提出している,伊藤暗殺の理由は,日本の天皇崇拝を基本とした論理に満ちているから驚く.

国民の半数以上の両班を,平等の名の下に弾圧したのが日本だった.
だから,日本統治下を「よかった」というのは,両班以外の身分だったに違いない,という憶測をよぶ.
そんなわけで,2013年5月,古き良き日本時代を語った95歳の老人が38歳の男に殴り殺されたという事件は,両班自慢の若者が下級身分の老人を殺したとすれば,それは「無罪」という意識があっておかしくはない.

すると,東アジア地域(中国・ロシア・朝鮮)は,わが国もふくめ,近代国家の定義にあたる国は存在せず,中世封建時代のまま存在しているのだとおもえば,辻褄がつく.

なお,今回の判決で13人中2人の大法官が反対意見を出している.
このひとたちの「異見」には,おおくの日本人も納得するだろう.
条約締結時の事情が正確に与されているからだ.よって,賠償責任は韓国政府にこそある,である.

まことに残念なことではあるが,掃きだめに鶴が存在していることは,両国にとって唯一の希でもある.
むしろ,彼ら2人の存在が,韓国という国にとって歴史的なことだった,のかもしれない.

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