第一次世界大戦終結100年の夜

昨日,11月11日は,中国ではひとりっ子の日だが,世界の話題はタイトルのとおりである.
それで,70カ国以上の首脳がパリにあつまって,記念式典がおこなわれた.
敗戦国のドイツからはメルケル首相も参加した.
戦勝国の日本は,麻生副総理・財務相が参加した.

日本人にとって,第一次大戦は船でしか行けない欧州での戦争だから,いまよりはるかとおい戦地でのできごとだったからか,いまはどこか他人事の感がある.
しかし,この戦争で,莫大な利益をえたのが我が国だったから,当時は他人事なぞという日本人はいなかったと前に書いた.

ドイツが租借したから製造がはじまった「青島ビール」で有名な青島を,日本軍が攻略してドイツ軍を降伏させたから,我が国は「戦勝国」になって,戦後処理のベルサイユ講話会議に「大国」として参加している.
その「青島ビール」は,大日本ビールという会社が引き取って,第二次大戦終結まで製造をつづけていた.

「大日本ビール」は,現在の大ビールメーカーが分割解体される前の母体だ.
なんと,アサヒ,キリン,サッポロ,エビスは,ぜんぶ大日本ビールのブランドである.
そのアサヒが1999年に青島ビールの株式を購入して,歴史的な統合化なるかとおもわれたが,昨年に中国の一大企業グループに売却した.

ところで,ドイツ人は青島ビールで二銘柄を製造していた.
われわれがよくしるふつうの「ビール」で,下面発酵のピルスナー系のものと,黒ビールである.
いまの「青島ビール」も,ピルスナーを指すのが一般的だろう.

しかし,エジプトのツタンカーメンの遺品にもあったビール瓶のビールは,上面発酵のエールである.
そういう意味で,青島ビールの黒ビールはその後どうなったのか気になるところでもある.

さてパリでは,フランス大統領がEU軍の創設を提唱したりするなか,米国大統領がそのまえにNATOをちゃんとしろ,と指摘したらしい.
これをロシアの大統領はどういうふうに聞いていたのか,わが国では報道されない不思議がある.

歴史の専門家は,日露戦争を「第ゼロ次世界大戦」と位置づけるのがふつうになってきている.
それは,「消耗戦」のいきつく先である「総力戦」のはじまり,と観るからである.
戦争は戦闘集団をひきいる武将たちがおこなうもの,という常識から,国民国家が総力をあげて取り組むモノに変化した最初の戦争が日露戦争だとかんがえるからだ.

ロシアの新鋭兵器である機関銃に,バタバタと死んでいく日本兵.
にもかかわらず,つぎからつぎに繰り出される日本兵の突撃に,恐怖を感じたのはロシアだけではなかった.それで,欧州各国の戦闘方法が,なんと兵隊かくあるべしと,日本式になる.
これが,第一次大戦の損害を悲劇的に大きくしたのだ.

ところが,バタバタと殺された日本軍は,新鋭兵器による物量戦にあこがれた.
じつは,青島攻略日本軍は,わが国ではじめて,新鋭兵器の物量戦を実施したのだ.
巨大な大砲を海上輸送し,陸揚げして線路で移動させ固定設置する.歩兵よりも土木工事の専門集団である工兵が足りない.
この間,戦闘はできないので,「青島攻略はまだか?」と新聞は軍を責め立てていた.

しかし,いったん火を噴いたこれら新鋭兵器の照準の正確さによる破壊の威力はすさまじく,青島駐留ドイツ軍を文字どおり吹き飛ばして完璧に撃破した.
それで,勝った日本軍が,破壊つくしてだれもいなくなった敵陣地をみて逆に恐怖を感じたのだ.
「敵でなくてよかった」.
この戦闘に,銃を手にした歩兵の出番はなかったから,日本軍の損害はほとんどなかった.

しかし,さらなる日本側が感じた「恐怖」は,物量戦のおそろしく高いコストだった.
青島という局地戦にして,この高コスト.
これを欧米先進国の仮想敵国に全面的にやられたらたまらないから,秘匿しようとした.
わが国民が,青島駐留ドイツ軍はめちゃ弱かった,と信じたのは,ほんとうは軍の宣伝だったのだ.

ヒトラーと手を組むとき,国民も政治家もドイツを侮ったのは,この宣伝が生きていた.
なんともいえないブーメランである.
その弱いはずのドイツ軍が連戦連勝でスターリンを敵だといったから,コロッと信じた.
第一次大戦で,めちゃくちゃに破壊されたことで生まれた欧州の厭戦気分が,第二次大戦のもとになったのは歴史がしめす教訓のひとつである.

そんな日の夜,たまたま日曜日のゴールデン.
東京の民放が,地上波テレビ初という「自衛隊特番」を放送していた.
NHKじゃなくてよかったのか?
とうてい,いまのNHKに,この手の番組は放送できないだろうとかんがえるのがよいのか?

島嶼奪還作戦のための特殊部隊の存在に,
「なんでこんなことが必要なの?」
「いま,どこがそんな状態にさらされているの?」
なかなかの「コメント」が,ゲスト・タレントの口からでた.

奪還する前にそもそも獲られるなよ,というコメントがないのが専守防衛の主旨に合致する.
これも,自衛隊広報が頼んだセリフだったのか?
それとも「忖度」したのか?
いや,たんなる「おバカ」なのか?

100年のおもみを感じる日であった.

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