黄昏のEU

日本では忘れられた経済学者になっているハイエクであるが、ハイエクによる「予言」を昨年に書いている。

ようは、EEC → EC → EU とつづくヨーロッパの行方を疑問視し、はては亡くなる前にEUの終わりかたまで書き残したひとである。
そして、その終わりかたどおり、終わろうとしているようにみえてきた。

イギリスのブレグジットはなんなのか?も、前に書いた。
重複するが、友人の英国人が「国会が北京にあって、最高裁判所がソウルにあったら日本人としてどうか?」といっていた。

それに、「EU官僚」というひとたちがきめる「超国家指令」が、一般人にも国家とはなにか?を再考させるにあたいするほど腹立たしいと。

それは、移民の割り当て数を決められたりして、これを国家として拒否できないとか、外国人の犯罪者を強制送還できないとかにまでおよぶ。
日常生活における慣習も無視した指令もあって、「???」がつくことばかりだと。

すなわち、究極の超国家官僚主義体制がEUで実現しているのだ。

こまったことに、日本の報道は地に落ちて、ブレグジットでたいへんなことになる、ということばかりがいわれているが、主語が「英国」なのか「EU」なのかが不明なはなしもある。

たしかに、英国からホンダが撤退をきめたりといったニュースはあるが、英国経済をホンダ一社がささえているのではない。

「合意なきブレグジット」と「合意」のちがいがなんで、英国議会がどうして何回も否決するのかも、くわしい報道があるとはいえないのに、世界経済がたいへんなことになるということばかりがいわれるのはどういうことなのか?

もし、日本の国会でこんなにも否決されたら、内閣がその都度総辞職させられそうだが、メイ首相はよほどの強者なのか、与党保守党にかわりがいないのか?

そもそも、メイ首相がEU側ときめた「案」は、離脱するのかしないのか、それともEUという蜘蛛の巣にからめとられてしまったのかがわからない案なのだ。

英国は離脱をするが、数年間はこのままで、その間は、EUいがいの他国と独自協定は結べない。
それで、保守党の離脱強硬派である元外相は、われわれはEUの植民地になる、と発言している。

ようは、EUは英国の離脱をゆるさない、という態度で一貫しているのだ。
もし、英国が前例となれば、次々と離脱希望国がでてEUが崩壊するという危機感からだろう。

この魂胆がみえてきたから、離脱派が維持派をずいぶんうわまってしまった。

ただし、EUという枠組は、いったん加盟国の国境をなくしたから、英国には、北アイルランドとアイルランドの国境もきえた。
それが復活することになるから、どうするのか?がややこしい。
「特例」というものができるのか?

EUから離脱したら、英国はTPPに参加するといったけど、それは「合意なき」ばあいである。
すると、英国にとって「合意」が絶対条件で必須のものなのか?という疑問がある。

むしろ、「合意なき」という選択が、じつは合理的なのかもしれない。

ブレグジットよりも、EU問題の柱に、統一通貨「ユーロ」がある。
「経済共同体」としての「ユーロ」だ。
英国はとうとうユーロを採用しなかったのは、政治家がちゃんとハイエクを熟読していたからだろう。

早い時期からハイエクは統一通貨の不都合を論じていて、統一通貨としての帰結を「ヨーロッパ中央銀行の設立」だとした。
そして、あまりにも事情がちがう国々の経済を、おなじ通貨のために「統制」することが必要になるから、かならず域内で経済の強い国と弱い国の間で、通貨問題が発生して収拾がつかなくなると予想した。

ギリシャ危機やラテン各国の危機がこれだ。
そのために、ヨーロッパ中央銀行の権限が「強化」されたのは、歴史的事実である。
もちろん、「統制」が強化されたのだから、各国の経済政策の自主性はうばわれた。

そんなこんなで、EUをささえる大国は、もはやドイツ一国だ。
もし、ユーロがなくてマルクのままだったら、ギリシャに例えれば、マルク高ドラクマ安で調整できたものを、ドイツの信用でギリシャ人もユーロで決済できてしまったのである。
つまり、通貨間の為替調整機能がユーロによって妨げられたのだ。

そのドイツが、ドイツ銀行の経営危機で息も絶え絶えになってきた。
日本のメガバンクのような銀行だが、むかしの長期信用銀行のように、自行で債権も発行できる銀行だ。

それに、ドイツ銀行とはいっても最大時で10%の大株主は中国企業だった。
メルケルのドイツと中国の蜜月の遺産である。

もはやこれまでなのか、中国企業は全株を手放すとアナウンスしているけれど、この銀行がやっちまったのは、リーマン・ショックとおなじ債権の保険商品による巨額損失(260兆円)である。
英国にはわるいが、ブレグジットどころのはなしではない。

ドイツ政府も必死になって支えようとしているが、この銀行の破綻はそのままユーロの破たんになって、EUがすっ飛ぶこと必定だ。

英国人は、ドーバー海峡のむこうから、この風景をながめているにちがいない。

処方箋は、ハイエクの『貨幣発行自由化論』にある。
わが国も、いまどき「新紙幣」なんてものではなくて、ふつうの銀行に貨幣を自由に発行させればよいのである。

ただし、われわれはドイツをわらえない。
もっとひどいのが日銀だからである。
ほんとうに10連休もして大丈夫なのか?

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