フリーダム・コンボイよもう一度

北米大陸の主たる交通手段は、自動車であると誰もがしっている。
次が飛行機で、鉄道の影は薄い。

鉄道がいまいちなのは、「輸送密度」があまりにも低いために、かえってコストがかさむからである。
これは、わが国でJR北海道やJR四国が、どうやっても大赤字な理由とおなじだ。

どうして土光臨調は、こんな阿呆な「国鉄分割」をしたのか?
わたしにはぜんぜんわからない。

ちなみに、電気自動車や水素自動車が、クリーンだ、という知能がないひとが、電気で走る鉄道もエコで、ディーゼルの鉄道は遅れていると主張するけど、鉄道の場合は、線路がないと走れないので、「保線」というおそろしく手間と費用をかけないと、安全運行すらできないことも理解できない低能ぶりになっている。

こないだの上野を起点としていた新幹線が、ずっと止まって大騒ぎになったのは、線路ではなくて「架線」が切れたことによる。
電車は、架線がないと電気を得られない。

そんなわけで、人口密度が薄い大陸では、長大な距離のメンテをするのが面倒だから、アスファルトで固めるだけの「道路」を整備した方が、よほど安上がりなのである。

飛行機も同様で、飛行場さえつくれば、あとは勝手に目的地まで飛んでいくから、レーダー誘導とかの整備はいるけど、鉄道ほどきめの細かい整備が不要なので、北米の交通として利便性が高いのである。

問題は、ひとの移動ではなくて、モノの移動だ。

それで、日本ではあり得ない大きさの「大型トラック」が、物流を支えている。

弱冠25歳だったスピルバーグの低予算テレビ映画、『激突』(1971年)は、後の『ジョーズ』につながる構成でしられるけれど、NHK脳に染まっている世代では、主演の、デニス・ウィーヴァーが、『警部マクロード』だった方に記憶が傾いているにちがいない。

コロナ(風邪)に効くという触れこみの、得体のしれない注射を、アメリカとカナダを行き交うトラック運転手たちに「強制する」ことに反発して、ちょうど2年前、大陸を横断しながらオタワに集結したことは記憶にあたらしい。

カナダ・トルドー首相は、父親のピエール・トルドー首相(当時)が発動した、戒厳令を、これらトラック運転手たち(フリーダムコンボイ)弾圧の手段として、平時における初めての発動を強行し、支援者たちの銀行口座を凍結するまでの、あたかも共産党顔負けの施策を行った。

今年1月23日、「遅い」といえば遅いが、カナダ連邦最高裁は、このトルドー政権の強硬策を、「憲法違反」と認定して、政権はレームダック状態に落ち込んでいる。

さてそれで、ちょっと前に書いたけど、元アメリカ海軍情報局でユーチューバーの「MAXさん」によると、トラック運転手たちが、トランプ氏への不当な判決(ニューヨーク州)に抗議して、ニューヨーク市が受け取り地域の貨物輸送を拒否する運動を開始するという。

アメリカにおけるトラック運転手とは、基本的に個人事業主なので、こうした「抗議活動」が可能なのだ。

仕事は「選ぶ」という、ガチガチの免許制の日本ではできないことができるのである。

当然に、ニューヨーク行きの荷は、運賃が高騰するから、数倍になったら引き受ける運転手も出てくるだろうけど、このコストを負担するのは、結局は「有権者」たるニューヨーク市民なのである。

それに、物資の供給が絶える、という事態にニューヨカーたちの理解が追いつきそうにないために、目の前から消えていく光景を見てはじめて気づくことになりそうだ。

すると、この街に住める状態にならないほどのことになるかもしれず、「商都」としての機能不全が、世界経済に影響する可能性もある。