「産業革命」がどのようにしてはじまったのか?は、いろいろと論じられているけれど、産業革命「前」の状況がどうだったのか?は、あんがいと一般人の意識にあがってこない。
わが国の歴史だと、「江戸時代」を思い起こすことになるのだが、江戸時代の産業がどれくらい「先進的」だったかも、一般人の意識にあがってこないのとおなじなのである。
なにしろ、『夜明け前』の暗い時代だという印象操作がおこなわれて、もう、150年が経つ。
ミーゼス博士がいう、本稿タイトルで、まっ先に浮かんだのが『エレファント・マン』(1981年)だった。
この実話にもとづく映画の舞台は、19世紀末、であるから、産業革命「前」(18世紀前半)という時代ではないし、もうとっくに(産業)革命が成就している時代に移っているのに、「これ」が英国の実態なのだ。
「これ」とは、英国にいまも根強くのこる階級社会にあっての労働者階級のすさんだ日常やら、児童労働の当然がある状況をいう。
ようは、ヨーロッパの王室(いまも残る王侯貴族階級)とは、産業革命をもってしても破壊できなかった「中世」のこと、なのである。
なんと、ヨーロッパは中世のままいまに至っているのである。
フランスにさえ、いまだに「王党派」が存在しているのは、このためである。
だから、いまから250年前の英国がどんな国で、王侯貴族以外でどんなひとたちが、どんな暮らしをしていたのか?については、100年前のインド並み、というのはかなりリアルなのである。
そもそも、結婚と離婚を繰りかえし、あのローマ法王から破門され、英国国教会をつくったヘンリー8世の次女にして、英国を海賊の掠奪国家に仕立てたのは、エリザベス女王(一世:イングランド、アイルランド王)だった。
ただし、財政的に苦しかったので、ヘンリー8世は、国内ローマ教会の資産と、信者が教会に納めていた「10分の1税」の掠奪を狙っての「破門」ではないか?との説がある。
また、エリザベス女王は、織田信長と同年代の人物である。
とった者勝ち、という単純さが道徳であって、日本人の同時代ではあり得ない価値観である。
ちなみに、徳川家康に旗本にまでとりあげられたウィリアム・アダムズ(三浦按針)は、エリザベス女王治政下に航海に出て大分に漂着した人物だ。
むろん、英国王家の男系の血筋をさかのぼると、すぐさまヨーロッパ大陸とつながっていることがわかる。
すると、「資本主義よりも前」という時代が「中世」(詐欺、掠奪、冒険が常識の時代)だというのは間違いで、中世のベースに乗っかって資本主義がある、というべきである。
しかし、その資本主義が、英国大蔵省の高級官僚だったケインズによって破壊され、「中世」の上に、社会主義・共産主義=全体主義が乗っかることに変容しただけ、なのである。
明治新政府によってわが国では、「四民平等」が徹底されて、あたかも武士階級が雲散霧消したかのごとくと錯覚しているが、高等文官試験やら幼年学校から陸・海軍大学に進学し、その成績順に年次内階級化させることで、「将軍なきあたらしい武士階級(文・武とも)」として扱われることとなった。
「将軍がいない」のだから、武士としてどこの誰に忠誠を尽くすのか?
外形上は「皇室」としたがその実は、あたらしい武士階級による政府の私有化、であった。
ようは大量の「エリート=シロアリ」が、国家を簒奪し、なんと敗戦によってもGHQは「おとがめなし」の裁定を下して、日本を芯から腐らせるシステムを温存したのである。
英国の場合はもっと凄まじく、ロンドンの一角にある「シティ」は、いまでも治外法権の場所で、事実上英国政府の支配権が及ばない。
王室の上に君臨する、金融貴族たちの「城」なのである。
われわれの目線は、ついうっかり華やかに見えるヨーロッパ王侯貴族にばかり向かうけれども、一般人の悲惨な生活を詳しくしるチャンスは滅多にない。
逆にいえば、話題にものぼらないように情報統制されているのである。
ときに、英国やフランスを代表するヨーロッパの衰退ぶりは目を覆うばかりとなった。
これは、英国の経済学者リチャード・アウティが唱えた、「資源の呪い」説が参考になる。
「掠奪」によって得た資源も石油などの天然資源とおなじ、とすれば、アフリカやインド、東南アジアからの収奪(人間を奴隷とした)によって、容易に収入が得られたことの「余裕」が、ついには衰退を招く原因と化す、とかんがえられるからである。
逆にいえば、先進国の余裕から生じた「人権」の無限拡散で、植民地からの収奪そのものが不可能となったために、楽して稼げる収入源を失ってしまったのであるし、楽していた分、技術革新やら産業育成をせずにこれた、といえる。
13日から、ヨーロッパ最貧国の部類にはいるアルバニア(旧東欧ソ連圏にあって、90年代まで「鎖国」していた)で、大規模な学生暴動が発生している。
政権がすすめるEU加盟に支障をきたす、というが、学生側は大学を出ても就職先がないことでの学費投資に対する見返りがないと、話がかみあっていない。
社会主義・共産主義=全体主義が仕切るフランス暴動とは様相がちがう。
これもまた、EUなる大樹からの補助金に依存すればなんとかなる、という、広義の「掠奪」を志向していることが興味深い。
そのEUが、もう、ウクライナ支援のためにカネがない状況に陥って、もはやユーロを新規発行するしかない=ケインズ的にインフレになる道しかないと発想しているのである。
とうとう、ヨーロッパは最貧国にまで秩序崩壊が及びだしたのである。

