サプライズ人事で沸くトランプ政権2.0だが、何れも「連邦上院での承認」を要するものだ。
SES(Senior Executive Service:終身官僚)と、猟官制による政府職員の入れ替え対象は、ざっと9000人で、このうち上院の承認を要するポストは、なんと1200もある。
なので、上院がフル回転しても、全員の審議をおえるのに1年を要する大仕事なのである。
アメリカの民主主義制度は、日本の選挙とは関係のない「官僚制」とちがって、基本的に「議会主義」なので、上・下両院それぞれ別に議会が抱える「事務局」が、議員のために機能するように設計されているし、ひとりの議員には「国費」で多数の秘書(日本でいう「専門性の高い政策秘書」)が就いて議員活動を支えるようになっている。
わが国も「似て非なる」国会職員(特別職国家公務員)による議会事務局はあるが、その機能性は、比較にならないほどちがう。
権能が議会優位にあるからで、繰り返しになるが、上院は政府高官人事と外交、下院は連邦予算の担当となっている。
とくに分かりやすいのが、連邦予算で、なんと大統領(=行政府たとえば財務省)に、予算編成権限すらない。
「予算案」自体も、下院予算局が編成することになっている。
だから、いくら大統領が「ウクライナに何億ドルの支援をする」と発言しても、日本の首相発言の実現可能性の確実性とはちがって、下院の承認がなければただの「口だけ」なのである。
この意味で、わが国の首相権限は、アメリカ大統領より、かなり独裁的なのである。
もちろん、明治憲法の首相よりも、いまの憲法における首相の権能のことである。
アメリカ大統領が、巨大な権限をもっているというのは、アメリカに巨大な経済力と軍事力があるからで、なかでもアメリカ軍の最高司令官であることに勘違いの原因がある。
一国のトップにおける権力という点で、日本の首相は上述のようにかなり独裁的なのだ。
またアメリカでは、すべての「法案」も、議員立法なので、わが国のように「内閣立法(官僚が法案を書く)」ですらない。
大統領は、「法案」すら書けない立場で、できるのは「承認・発効」と、「拒否」だけなのであるが、おなじ法律に二度の拒否はできないほど議会に権力がある。
報道が不親切なのは、こうした手続き上の説明や解説をしないことで、あたかもそれが「大統領権限」による人事権執行の範囲であると誤解させる恐れがあることである。
もちろん、日本での「党議拘束」のふつうをベースにすれば、多数を確保した共和党上院の承認は、あたかも自動的なようにもおもえる。
しかし、アメリカの議員には、共和・民主両党共に、「個人」としての判断が与えられるので、そもそも全体主義的な「党議拘束」という、党組織が議員を強制によってしばるシステムがない。
なので、共和党案に民主党議員が賛成することも、また、その逆もよくあることなのである。
この意味で、わが国の「特別職国家公務員」に該当する「国会議員」には、憲法が直接適用されるので、「党議拘束」とは、憲法違反ではないのか?とおもわれるのである。
しかし、一般的に、「党議拘束」は、各政党の「内規」だから、法律ではないとして憲法違反の議論を否定している。
だが、条件があとからできた、政党助成金を得る「公党」になった、ことをふまえれば、たとえ内規といえども法律とみなすべきなのではないか?
これで、政治資金の公党でのあつかいも「公金」にしないとおかしいのだ。
さて、大統領が「指名」しても、上院議会で過半数の「承認」を得られなければ、いかに大統領といえども、高官人事ができない仕組みになっているのがアメリカなのだ。
しかし抜け道として、大統領には「休会特権」があって、10日以上の「上院の休会中」に、人事権を発したら、上院の承認がなくとも最長で2年間まで就任させることができると、「憲法」にある。
ただし、これも多数党の「議員リーダー:日本語ではなぜか院内総務という」との話がついたうえでのことである。
たとえば。「トランプ1.0」では、RINOの代表であるミッチ・マコーネル上院院内総務の意思で、上院を10日以上休会させない妨害を受けていた。
彼の後任が、またRINOだから、どうなることやら?になっている。
しかしながら、ホワイトハウス報道官の職は、上院の承認を要しないので、発表のまま就任することが決まった人事である。
いっとき、タッカー・カールソンというサプライズな名前が挙がる話もあったが、ことによってはそれ以上のサプライズが、「弱冠27歳の史上最年少者」が正式発表されたことである。
わが国の、官僚によって支配された「記者クラブ制度」がない、アメリカでは、一応、体面上では「ガチな取材」が許されている。
ゆえに、役人が書いた配付資料の補足説明会をもって、「取材」になるわが国とちがい、アメリカの報道官は、ベテランからなにからの老獪な記者を相手に、丁々発止をやらないといけない。
もちろん、咄嗟のやり取りであっても、論理破綻は許されないから、驚くべき集中力と広範囲な知識がないととても務まるものではない。
なのでわが国なら、ベテランの国会議員から選任される、官房長官が内閣の「スポークスマン」にあたるのである。
こういっては何だが、「トランプ1.0」の後期(2020年7月)から任期一杯までやった、マケナニー氏の「キレ味」が印象深かったので、バイデン政権の初代から現在の報道官の「生半可さ:ポンコツぶり」は、政権の「質」を表現したものともいえるだろう。
これにはちゃんとした理由がある。
それは、グローバル全体主義には、共産主義者たちの「思考の作法」という「型」にはまるからで、あたかも「孫悟空の頭の輪っか」のように、みなおなじ思考にされるために、「型」からはずれた事物に対応できなくなるからだ。
たとえば、ただいま大炎上中のウーピー・ゴールドバーグが個人経営のケーキ屋さんに予約拒否されたことについて「差別された」とSNSに発信した妄想も、「人種差別」をするのが当然という「差別主義」という「型」から発想するしかないことが原因だからで、店主の説明を聞く耳をはなからもたない。
このような「型」とは無縁の、常識ある一般人には、店主の説明がよほど「腑に落ちる」から、アメリカでは超老舗になる100年以上続くこの店の応援団まで結成された。
超古いオーブンの調子が悪く、ウーピーが指定した日の申込みに、その時点では「確約」できなかった、というだけの話なのだ。
おそらく、「悪役」に認定された、ウーピーには、これがなぜ炎上したのか?すら自己認識できないのではないか?
さてそれで場面は一転し、わたしが注目したいのは、アリゾナ州で二度「惜敗」(州知事選と今回の連邦上院選)した、女トランプことカリー・レイク氏の今後である。
テレビキャスターだった彼女こそが、ホワイトハウス報道官になるかもしれない、という期待がついえ、度重なる選挙と民主党側からの嫌がらせ裁判で破産の危機にあるのだ。
共和党候補の選挙資金は、上院院内総務のRINO、ミッチ・マコーネルが管理していて、こやつは、トランプへの当てつけで、彼女に1ドルの選挙資金も供出しなかった。
二度とも怪しい選挙で、今回は州の選管責任者にあたる人物が、なんと選挙中に、「彼女の人生を地獄にしてやる」と発言してはばからず、逆に彼女を名誉毀損で多額の賠償金を請求する裁判も起こしていて、これがまた民主党系の裁判官により不利な状態になっている。
さては、トランプ氏も知らないはずがないこの状況をどうするのか?が気になるのである。
彼女を見棄てることは、DSとディールしたという嫌疑のまたひとつの証拠になりそうだからである。
一方で今度の、キャロライン・レビット氏は、2022年に地元ニューハンプシャー州での最年少女性連邦下院議員を目指したが惜敗し、それからトランプ選挙キャンペーンに加わったという。
今年6月のCNNに選挙関連で出演したとき、司会者から発言をさえ切られそのまま映像から消え去るというハプニングが、どうやら陣営内で英雄扱いになったようだ。
なお、「トランプ1.0」では、現役の大学生であった彼女は、すでに学内新聞でも「トランプ支持」を表明していたという。
そんなわけで、どうかんがえても、わが国では「あり得ない人事」が実行される。
若いから、実績がないから、あれだからこれだから、という「ダメな理由」ばかりをみつけるのが、「いいおとな」のやることになってしまった。
もちろん、国家を背負ったしかもアメリカの「大統領府」を代表するスポークスマンになることの重みは、本人が一番よく承知していることだろう。
こうした若者に平然とチャンスを与える78歳のリーダーが、わが国にいなくなったのである。
今年の上半期(1月から6月)に産まれた子供は、約33万人と発表されている。
単純に倍にしても1年で、70万人に及ばないだろう。
すると今年に生まれる、女の子の総数もその半分の33万人ほどだろうから、20年~30年先ぐらいにこの子たちが出産するのは、特殊出生率を「1.0」とすれば、ざっと33万人となる。
こうして、わが国は「半減期」のスパイラルに陥ったが、与党が兆円単位でつかっている「少子化対策」の効果はなく、むしろ、「少子化対策」をすればするほど少子化が加速するのはなぜか?
社会主義の共産主義化が、原因だ。
この子供たちにどんなジャパニーズ・ドリームを与えることができるのか?さえもなく、あの池上彰氏がとうとう地上波で「共産社会は理想」だといったのが炎上している始末である。
もはや「ソ連」という存在も、40代以下には「伝説」にすぎない。
問われているのは、いまの現役世代の責任なのだが、これもまた、だれも背負ってはいないのがいまの実態だとすれば、もう終わった、ということなのである。