日本の経済特区

70年代に、なんども失脚しては復活した奇跡の男、鄧小平が最後に実権を握ってから、「改革開放政策」がスタートしたのは、もう「歴史」になった。

ときに、日本でも、「MADE in CHINA」ブームになったのである。

わたしは、このとき小学生から中学生にかけてのことだった。
横浜には、いたるところに、「中国物産」がワゴンで売られていて、とにかく安かった。
日本的でない、きつい黄色の箱にはいった「鉛筆」は、1ダース12本入りで、100円もしなかった記憶がある。

もちろん、消費税なるものは存在もしなかった。

あれだけ商品が並んでいても、だれも見向きもしなかったのは、ちゃんと、「安かろう悪かろう」の法則が成立していからだけど、その品質の劣悪さを楽しんだわたしは、かなりのひねくれ者である。

この鉛筆の一番の思い出は、芯の中に砂粒が混入していて、書いていると突然書けなくなって、下手をすると紙が破れたのであった。
しかしながら、たまにある1本ではなくて、ほとんど全部のことだったので、これはこれで、一定品質だったのである。

このような鉛筆が大量生産されていることが珍しかったから、わたしは、その他の実用品でも、「MADE in CHINA」とあれば、ずいぶんとお小遣いを投じたものだ。
そして、「これならつかえる」を探したのだったが、とうとう当時はみつけることができなかった。

「100円ショップ」がでてきたのは、とっくにおとなになってからのことである。

それで、共産党がやっていた、計画経済体制のままでは、改革開放政策がうまくいかない、ということになって、「経済特区の制度」が発明された。
その地区内だけ、「規制を撤廃する」という、全体は計画経済体制だけど、ほんの一部を「自由化する」という、安直といえば安直な発想である。

香港返還にあたって、英国のサッチャー首相が、香港の自由が心配だという声に、中国が香港になる、と発言したのは、いまではおおきな間違いだったけど、当時のかんがえ方はサッチャー女史の方が的を射ていて、改革開放政策で中国は民主化も自由化もするという、根拠なき期待があったのだった。

しかし、共産党はそんなヤワなことをかんがえたり実行するはずもないという根拠をもって、ヒトラーができなかった「千年帝国」の野望を、しっかりと確実に実施しているのは、感心するしかない。

だから、「特区」はあくまでも「特区」であって、全土に拡大することもない、のである。

こうした「特区」のやり方は、中国の影響力がある、計画経済体制の国々がこぞって採用している。
台湾・ベトナム・フィリピン・マレーシア・ミャンマー・カンボジア・ラオス・タイがあるけれど、ちゃんと、日本もはいっている。

ただ、これらの国々は、タイ以外、かつてわが国が占領した欧米列強の植民地で、戦後になって独立した共通がある。
わが国が独立におおいに貢献したのは事実としても、それが、計画経済体制ばかりになったのは、わが国が戦後もずっと計画経済体制だからである。

安倍政権がやろうとした、「加計学園」の岡山理科大学に獣医学部を設立する問題とは、じつは、「国家戦略特区」としての位置づけであったものだ。

どうして、獣医学部をひとつ創設することが、「国家戦略特別区域」でやらないといけないのか?とか、そもそも、「経済構造改革」の一環にあることだとするのが、「特区」だから、獣医学部をひとつ創設することが、どうして「経済構造改革」なのか?ということの「根の深さ」こそが、わが国全体の問題なのであった。

それでかしらないが、いまは「特区」とはなるべくいわずに、「地方創生」という用語を編み出して、「内閣府地方創生事務局」が管轄している。
なお、シャッポには、内閣府特命担当大臣(地方創生担当)がいる。

念のため、わが国には特区は二種類ある。
・国家戦略総合特区(7カ所)
・地域活性化総合特区(41カ所)

ほぼ全国にあるこれらの対象区域が、中国のように大発展しないのはなぜか?

答はかんたんで、「アリバイ特区」だからである。
つまり、ぜんぜん「特別」なんてないのだ。
全国にわたる、「岩盤規制」を守るための方便にすぎない。

その方便の代表が、「加計学園の獣医学部」だった。

マスコミと野党は、安倍首相と学園経営者との個人的関係を攻めたてたけど、何のことはない、「岩盤規制」を維持することに執念を燃やしたのである。

なぜなら、そこにある「利権」が崩れたら、戦後構築してきた利権のネットワークが、ほんとうに壊れてしまうことをおそれたからである。
いわば、「蟻の一穴」にみえたのだろう。

つまるところ、利権の吸い上げ方が、中国共産党の芸術的仕組みのレベルにぜんぜん到達できない、後進国レベルにあるのが、わが国の実態で、これをやめるなんてことは、利権で暮らすひとたちには許せないことなのである。

これを、野党(口火を切ったのは福島瑞穂議員だった)にやらせたので、わが国利権構造の根の深さと広がりを示すのである。

わが国の経済が世界的に珍しく、30年も衰退しているのは、「特区」がないのではなくて、全国が規制だらけで、自由な経済活動ができないからである。

それを、前に、山梨県の事例で書いた。

いまや、山梨県が全国になった、のである。

日本は、ソ連型の共産主義・全体主義国家だ。
この前提となる重要認識すらもてないで、国の経済戦略に依存するのは、学習能力がなさ過ぎる。

いま、小学校で「発達障害」をいわれて、「薬物治療」を命じられる子供が増加しているのは、「国」全体が発達障害に陥ったからなのである。

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