哀しき「ラスト・リゾート・ニッポン」

日本は世界に残った、唯一にして最後ゆえの「ラストリゾート」だ。
これを一見してすぐに「自慢」する輩がいるので、はやとちりは禁物である。

誰にとっての「ラストリゾート」なのか?がこの話の結論を決める。

「食」に関していえば、「種メーカー」にとっての、ということに尽きる。
植物である、「農産物」は、ぜんぶ「種:タネ」から育てるので、「種を制するものは、世界を制する」ともいえるのだ。

ではどうやって、「種を制するのか?」といえば、「権利」に変換してできる。
つまり、「特許権」によって、「制する」のである。

農業が工業化したということの本質は、ここにある。

そしてまた、かつてハイエクが特許権を認めない論を張った意義もここにある。
特許制度は弊害ばかりで人びとに利益がない、と。

「植物工場」が流行りだしたことをもって、「工業化」というのはまだ甘い。

工業から発生した、発明についての特許(権)は、いまや分子生物学や遺伝学の成果としての「種」に、権利が集約されている。

しかも、成長を促進するために最適化された、化学肥料の併用が、収量を最大化するとか、成長を阻害する害虫対策や病気対策のために、最適化された免疫力やら耐性やらで、やはり収量を確保するための組み合わせ技術にまで「種」は進化しているのである。

かつて、世界の石油掘削と販売を牛耳ったのは、7社だったのでこれを「セブンシスターズ」とかとも呼んでいたけど、もっと一般的には、「石油・メジャー」といっていた。

いまは、「種」を牛耳るメーカーを、「種苗:バイオ・メジャー」といっている。
具体的には、モンサント社(現バイエル)、デュポン、シンジェンタの3社で、世界市場の8割となっている。

残念ながら、我われが食べている食品も、これらの会社の「種」からできているので、一網打尽、の状態にある。

まさか?と思うのは理解できる。

けれども、一般人には他人事だった、「種子法」が廃止(2018年4月1日)されて、見た目は、各都道府県の「農業試験場」がやっていた、米、麦、大豆、の品種改良で得た「いい種」を安く農家に提供することに変わりがないようなのは、「農業試験場」はあるからだけど、別の「農業競争力強化支援法」で、その種を農家ではなくて民間企業に提供することになったのだった。

これは何を意味するかといえば、農家は「市場価格」で種を買わないといけなくなったから、自動的にコスト増になったし、種屋は試験場から安く仕入れて高く売れるようになったともいえる。

これにまた別の法律「種苗法」を書き換えて、収穫したときに一部を翌年の「種」に回す、自家採種を禁止したのである。

だから、農家は、永久に「バイオ・メジャー」から毎年、「種を購入」しないといけなくなった。
さらにバイオ・メジャーは、最新の「種」については、「F1(第一世代)」だけに収穫をもたらす「品種改良」をして、自家採種しても翌年には収穫できない操作をしている。

こうやって、「種を知財に変換」して、世界の農業を支配するようになったのである。

しかしながら、世界がバイオ・メジャーに屈したわけではない。
アメリカの裏庭、中南米やインドでは、大反発が起きて、裁判所も日本のような「法改正」や、バイオ・メジャーの特許を認めていない。

それで、わが国が、「ラストリゾート」と呼ばれるようになったのである。

これらの、屈辱的・売国的な法改正は、ぜんぶ安倍内閣の仕事であった。
安倍氏の暗殺には怒りを禁じ得ないが、安倍氏の政策に同意しているものではない。
むしろ、このブログでは、「アベノミクス」の、たちの悪い社会主義性を批判してきた。

なぜか、わが国の「保守派」は、安倍氏を保守だと位置付けたままでいるけれど、安倍氏はそんな思想信条の政治家ではなかったし、自民党がそんな政党ではないのは、岸田総裁の仕事を見れば判ろうというものだ。

少なくとも、現在においても、岸田降ろしは起きていないばかりか、「LGBT法案」では、しっかり党議拘束をかけて、反対意見を封印した。
衆参併せて、381名もいる、自民党国会議員で、反対を貫いたのはたったの5人だった。

つまり、この5人こそが、「反対分子」であると、全体主義の組織は見なしているはずだ。

しかして不思議なのは、自分たちが口にするモノに関しての法律を、よくも改悪できることだ。
自分世代だけでなく、子や孫の世代がどうなるのか?についての想像力が働かない。

それはまた、国民もなにもかんがえていないことと表裏一体をなす。

この「思考停止状態の国」の実態が、「ラスト・リゾート」の本質なのである。

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