性風俗店の逆襲は成功するか?

一昨日の23日、関西の性風俗店が、「持続化給付金」と「家賃支援給付金」の対象から性風俗事業者を一律に除外するのは「憲法違反」だとして、国などに対して「東京地裁」に提訴した。

報道だけではどうして、「大阪地裁」でないのかの理由はわからないけど、わたしの実務経験でも、じつは目に見えない「法の運用」における「全国統一」がないのも理由なのではないかと疑う。
逆にいえば、あんがいわが国の「法治」は、地方の事情に寛容なのである。

「関西の」ということだから、府県でいうとどこなのかも伏せて報道されている。
もっとも怪しいのは「大阪府」だけど、記事からは断定できない。
でも、国などに対して提訴したのだから、この「など」をいわないのは、やっぱりおかしい。府県のどこかも訴えられて「被告」になったはずだからである。

原告は、「憲法違反」を理由にしているので、一審では決まらず最高裁までを覚悟しているだろう。
すると、わざわざ東京地裁に提訴したのは、大阪地裁と大阪高裁に信頼が置けぬ、といっているようにとれる。

これは、けっこう重大な話である。

「三権分立」という建前が、ほんとうはかなり怪しい状態にあるのがわが国だ。
立法府と行政府の立場の逆転については、しつこく書いてきた。
また、司法府が深い眠りについていることも書いた。

「法治」の守護神は、「司法府=最高裁判所」にあるはずだけど、とにかく「何もしない」という伝統だけは戦後一貫して保守している。
この点で、わが国泰明期の「高等法院」や「大審院」は政府の介入を嫌ったので立派だった。

本来、地方裁判所は、管轄する地域の行政や議会が制定した条例についての「憲法審査」をしないといけない。
高等裁判所は、地方裁判所のチェックをおこなうためにあって、最高裁判所は、これの再チェックだけでなく、国会で制定された「法律」と国家行政当局の「憲法審査」をすることが業務でないといけない。

ところが、決まったことを司法から横やりを刺されるのが嫌だから、決める前に「審議」するのが、内閣法制局の役割になった。
これは、「検閲」で、修正を指摘されたり「発禁」とか「伏せ字」になることをおそれて、「自主検閲」というより厳しい検閲をおこなうのと似ている。

そんなわけで、最高裁は、内閣法制局に任せることで、居眠りができるのである。
しかし、立法府の役割がなくなる、という意味では内閣法制局の存在は憲法違反にならないのか?

衆参両院にちゃんと用意されている、「法制局」の開店休業がこの証拠だ。
「政府提出法案」が正常で、「議員立法」が珍しい、のは、近代民主主義国家として、「異常」なことである。
国会議員しか法律を制定することができない、のに、ただの「審議機関」になり果てた。

この責任は、最高裁判所にある。

裁判所も人間の組織であるから、その最上位組織が腐れば、下部組織も当然に腐る。
裁判官の人事と評価は、最高裁判所がやっているから当然だ。
地方裁判所が、管轄する地域のチェックをやめたのも、自治省=総務省の役人が地方行政を牛耳っているので、安心して居眠りができるのである。

こうして、行政当局の中にいる、高級官僚が国家も地方も支配する構造が完成した。
わが国の司法は、行政府に「完全依存」を決め込んだのだ。
なので、国民から訴えがない限り何もしない。

およそ近代民主主義国家の憲法とは、国民から国家・政府への命令書、なのだけど、近代憲法を自分たちで作った感覚が国民に「ない」ものだから、なんだか勝手に運用されても国民が気づかない。
それで、とうとう憲法を守るための組織が腐敗臭をあげているのだ。

性風俗店があるのは、経済でいえば「需要がある」からである。
すでに、男性向けのみならず女性向けのお店もある。
これは、法律でいえば「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」が適用される。

開業申請の窓口は、店舗を設置予定の所轄警察署生活安全課で、許可は都道府県の公安委員会である。
今回の原告は、「無店舗型性風俗特殊営業」の「1号営業」にあたるデリバリーヘルス運営会社である。

弁護団は、「運営会社は法令を遵守し、納税し、反社会的勢力とも関係していない」、「不平等で職業差別にあたる」としていて、会社の代表は、「国が性風俗業で働く人の尊厳を無視している」、「職業差別の意識が変われば嬉しい」とコメントした。

キーワードは、「職業差別」である。
上述の「1号営業」には、以下の「定義」がある。

人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの。

今回の原告は、「会社」なので、後段部分があたる。
「客に接触する役務を提供」するひと本人ではなく、「客の依頼を受けて派遣することにより営む」方であって、無店舗なのに「家賃」とは、事務所のことをいうのだろう。

また、「役務(えきむ)」とは、「サービス」のことである。

国や地方自治体が誘致に熱心な、「カジノ(統合型リゾート)」にも、性風俗サービスが内包されている。
もし、カジノが開業していたら、どうするのだろうか?も突きつけている。

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