日本をリセットできるのか?

「日本史」をみれば、この国の一貫性が、世界のどこにもない「特殊」だということに気がつく。

世界は、たいがい戦争での興亡があって、滅亡したり征服したり征服されたりを繰り返しているからだ。

いったん征服されると、その後は長い年月と世代を奴隷の身におかれるもので、たとえば、古代エジプトの最後の女王、クレオパトラ7世の時代にローマの属国になってから、ざっと2000年間、エジプトは一度も独立したことはなかった。

王国として独立を回復したのは、1922年に英国から独立してからのことで、ここ100年の出来事なのである。

しかし、わが国の戦後史を振り返ってみれば、占領期を除いて独立を果たしている、というウソがまかり通っていて、ほんとうは1945年以来、わが国は連合国の植民地のままにある。

これは大変なことで、いわば「古代から続いていた日本」は、とっくに滅亡したのである。

つまり、ざっと80年も「独立ごっこ」をしているのである。
もちろん、「占領時代」という時期があったことさえも、学校で教えないから、なんの話かもわからない日本人が多数になっている。

それで、一度も外国の侵略を受けたことはない、なぞという「神話」を真顔で口にしても、だれもおかしいといわなくなった。

これは、国家総合職の官僚もおなじで、官僚養成学校はもっと酷い教育をして、エリートを育てていることにしている。
だから、国家総合職試験の問題は、たいへん難しい問題ばかりが出るのだけれど、そこに「国家観」が欠落していても、誰も不思議とも思わないで、エリート官僚が採用されている。

これが毎年の採用で、年輪にようになって、国家の組織がつくられているので、全体が腐るのは道理なのである。

どう腐るのか?

総合職ではない、いわゆる「ノンキャリ」が実務を仕切ることになっていて、「総合職:キャリア」が、ノンキャリの仕事を監督することになっている。
これが、「上」というものだ。

『刑事コロンボ』が畏れた、「うちのかみさん」ともうひとりが、「うえ」とか「おえらいさん」だったことを思い出せば、官僚とはそういうものだとわかる。

けれども、日本の官僚は、悪い意味での日本人だから、「まじめ」さを強みにしている。
だれもが「まじめ」にノンキャリの仕事を監督している風情で、かつ、政治家も「まじめ」に相手にしないといけないし、政府調達にかかわる民間企業にも、「まじめ」に相手するはめになるのは、相手が訪問してくるからである。

このとき、政治家の口利きがあれば、なおさらノンキャリの仕事ではなくて、キャリアの仕事になるのは、ノンキャリの分際だとなにをしでかすかわからないからである。
じっさいに起きたへんな接待で籠絡されたのは、たいがい「国家・係長」というノンキャリであった。

民間企業だと、企業内のさまざまな仕組みの「改善」は、現場からなにから、基本的には自己提案させることになっていて、これを仕切るのが、よくある「社長室」とか「企画部」という部署の社内官僚達だ。

しかし、国家なり地方なりの公務員の世界は、これができない。
たいがい、「規則」が明文化されていて、これに則った業務をしないと「いけない」からである。
国家なら、そもそも「省庁設置法」からはじまり「大臣令」とかと続く体系になっている。

なので、たとえ大臣に就任しても、おいそれとこの体系を変更することは、大臣にもできない相談になっている。
ならばどうするのか?

なにもしない、のである。

これこそが、「お役所仕事」の究極的本質なのである。
国民に対しては、あれこれと「法令」なり「通達」やらをもって、いろんな事を押しつけてくるけれど、役所内部に関してはなにもしない。

「綱紀粛正」で粛正されるのは、ノンキャリで、キャリアは責任をもって粛正をする側になるという無責任が、当然の世界なのである。

だから、国民も、いろんな押しつけでもって不便さを強要されればされるほどに、役所がなにかをやっていて、それが「進歩」であると勘違いしているけど、じつはなにもしていなくて、ただキャリア役人の楽なことをしたら、国民への押しつけになる、という構造になっているだけなのである。

もちろん、国家観が最初からないので、ただ目先の問題を、受験感覚で処理しているのである。

世界が安定しているなら、これはこれでも機能した。
しかし、世界が不安定化しはじめたから、これはこれで機能し続けるのは、国家存亡の危機となる。

国民にとって、レジ袋を強制的に買わされる不便とは、次元のちがう、「命」にかかわる事態なのである。
この改善を、在日アメリカ軍がやってくれるはずもないから、日本人が自分たちでやらないといけないけれど、それがこれまでのエリートたちにも不可能な役目なのである。

つまり、日本にエリートが絶えて、だれかいるはずと思っていたら存在していなかった。

結局、自助努力でなんとかできない、奴隷のエリート国家だったのである。
しかし、いまあきらめたら、永遠なる奴隷にされる。

日本人は日本をリセットできるのか?
向こう1000年を決める危機が、いま、目の前に迫っている。

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