「放送事故」がわからない

ネット配信専門という「番組」ができた.
地上波とはちがうターゲット層で,かなり絞り込んでいるのが特徴だ.
だから,マニアのための番組になる.

いまや世界最大のショッピングサイトになった「アマゾン」では,年会費を支払うと本の配送料が無料になるサービスがどんどん足し算されて,おなじ会費で音楽も映画やテレビ番組もネット配信で視聴できるようになった.
これに,アマゾンオリジナル制作の作品も加わったから,地上波でもレンタルでも視聴することができないものまで用意されている.

娯楽だけでなく,ニュースだってBBCやCNNが選べるから,とくだん地上波の放送をみなければならないという積極的な理由がうすまっている.

昨年末のNHK受信料にかんする最高裁判決について,このブログでもコメントしたが,こんどは大手ビジネスホテルチェーンの受信料訴訟で,支払命令の判決がでた.
「稼働率」ではなく,「部屋数」に応じてのはなしだから,宿泊業界には激震が走ったのではないか?

いよいよテレビがないホテルが普及するかもしれない.
ネット動画が観られるモニター端末があれば,想定顧客によってはかえって重宝がられるのではないかとおもう.

政治家もNHKを「敵にしたくない」から,国会でNHK問題は議論されないというが,それは本当か?
だとしたら,国民にとって放送局が「脅威」となる事態であって,社会の木鐸でもなんでもなく,たんなる恣意的な政治勢力であることになってしまう.

これも情報リテラシーに欠ける高齢者が,地上波,なかでもNHKを信じていることがおおきな原因なのだろうか?
もちろん,テレビだけでなくラジオという存在も無視できないものの,民放の信頼性が低いなら,本来NHKに対抗するはずの民放の姿勢も間接的ではあるが,NHKの応援をしていることになる.

わたしはテレビを観ないので,旅先の宿でもテレビリモコンのスイッチを入れることはない.
残念だが,ご当地番組で,役に立ったという経験もないから,とくに気にしない.
この何年間,ニュースも天気予報も観たことがないけれど,ぜんぜん困らない.
しかし,テレビがついていないと安心できないというひともいる.
観ているわけではないが,ついている状態が「ふつう」だというから不思議だ.

そういうわけで,たまに食堂などで観るニュースや天気予報は,なにか珍しさすら感じるが,その内容のなさにやっぱり観なくても大丈夫という,安心感さえ得ることができる.

天気予報(気象情報ともいう)では,なぜか天気図をしめさなくなった.
小学校の理科で習うものをみせないで,晴れや雨の図柄や衛星画像だけで解説するのは,天気図をみせて視聴者の頭でかんがえることをさせないという意味だから,これは愚民化である.
だから,新聞やネットの天気予報で天気図をみるほうが,自分の判断と解説記事とを比較できるので納得できる.

あるとき驚いたのは,季節の変わり目ではあるが,女性お天気キャスターが「明日おすすめの服装」といって,こんな服がいいですねと具体的に紹介して,後を受けた女性アンカーが,「いいこと聞きました,明日はわたしもそれを着ます」とまじめにいったのを目撃したことだ.
これは、放送事故ではないか?とドキドキしたが,この国ではだれもそうは思わないらしい.

どんな服を着るのかはまったくの「個人の自由」だ.
これに対して,テレビ放送でやんわりとではあるが具体的な指示をするというのは,「自由の侵害」である.この場合の自由とは,「選択の自由」のことである.
その具体性から,受け手からしたら「命令」にだってとることができる.それを,アンカーがダメ押ししたのだから,欧米なら抗議の電話が殺到しそうな放送であった.

「個人の自由」をつよくもっている国ならば,天候の変化がはげしい日になると予報するなら,その情報をしっかり伝えて,「おしゃれの工夫がいろいろできる日になりそうです」といえばよい.
これもあれも,それからこんなのも,と具体的に言うだけでなく画像で見せたら,完全なるすり込みである.
ようは,おおきなお世話なのだが,「放送」だから,「あちら」ではおそらくこの程度では済まないだろう.思考停止を意図的にさせる悪意すらかんじるからである.

直接の衣服のはなしではないが,カーライルの「衣装哲学」は,欧米人の思想のふところの深さと広さが,難解ながらもわかる一冊である.

軍隊と警察とスポーツチームや医療チームなどの職務上の要請,それにそもそも自由がない囚人以外,おなじ服は着ない,という欧米自由主義精神の深淵に「宇宙」まで思考して近づけるだろうから,寝不足の秋の夜長にピッタリだ.
よく眠れる可能性が高い,と同時に,日本人の発想とのちがいをあじわいたい.

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