計画的陳腐化の不誠実

「計画的陳腐化」とは、別のいい方をすれば、効率的粗悪品の製造といえる。

このときの、主語は、企業にとっては、となるのだけれども、消費者にとっても、「安く買える」という意味にもなるから、厄介なのである。

その代わり、企業が設定した年数が経つと、買い換えることになる。

これを、「買い替え需要」とかといって、あたかも消費者側に需要があるような表現をするけど、じっさいは、「強制買い換え」になっている。

ただし、数年後には、「新製品」を買わないといけないことになって、消費者はつねに「最新」を使える効用がある、という見方もできる。

しかし、「最新」がほんとうに消費者にとっての「効用」なのか?といえば、とくに日本製家電の場合は、「多機能化の罠」にはまり込んだままで、必要かどうかもわからない、余計な機能まで一緒に買わされることになっている。

その「日本製」が、いまでは、どこまで「日本製」なのかも不明で、たんなる最終組立をしたのが日本国内だから「日本製なのだ」という理屈が通っている。

これは、一種の「原産地偽装」ではないのか?

それで、あたかも中国製の家電が、単機能で安価に見えるように、商品ラインナップが構成されているともいえる。
なにせ、その中国メーカーが作っている部品を、日本で組み立てて、同時に余計な機能をつければ、「日本製」になるからである。

この意味で、たとえば、洗濯機なら、壊れない信頼性や洗浄能力で一歩リードしていた、「三洋電機」が懐かしく、ブランドだった「AQUA」はハイアールに買収された。
おそらくいまでも、「AQUA」のファンは、どのメーカーかに関係なく、愛用しているひとも多いだろう。

コインランドリーにも、「AQUA」があるのは、ハイアールのお陰というより、三洋電機のお陰なのである。

世界を席巻した、日本の家電企業がダメになった理由に、「家電リサイクル法」(「特定家庭用機器再商品化法」、2001年4月施行)を挙げるひともいる。
いわゆる「ゴミ利権」と結託した、自虐法で、ドイツのエネルギー転換と似ている。

そこで、この法律の「目的」(第一条)には何が書いてあるのか?

「この法律は、特定家庭用機器の小売業者及び製造業者等による特定家庭用機器廃棄物の収集及び運搬並びに再商品化等に関し、これを適正かつ円滑に実施するための措置を講ずることにより、廃棄物の減量及び再生資源の十分な利用等を通じて、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図り、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」とある。

重要なのは、最後にある、「生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」だ。

よくもヌケヌケとこういう文章が書けるものだと感心する。

当初の管轄は、悪名高き、経済産業省であり、その後にできた、国民経済にとってのムダの権化、環境省に経産省から大量移籍したひとたちを見殺しにしない役人内輪の「律儀さ」を発揮して、いまでは両省の共同管轄になっている。

あたかも、大量消費にともなう過剰な「使い捨て」を、愚かな国民にさせないためを装うけれど、家電メーカーは、これで、計画的陳腐化の「お墨付き」を得たのである。

テレビには、「10年経ったら火が出るかも」なんて脅しをして、無理やり買い換えさせるけど、どうやって液晶やらプラズマパネルのリサイクルをしているのか?
太陽光パネルの廃棄が、将来の大問題になるのを無視して、補助金漬けにしているバカバカしさとソックリなのは、経産省と環境省が組んだときのパターンなのである。

それでもって、かつてのドル箱、「テレビ事業部」が、どのメーカーも大赤字たれ流しになったけど、人事制度はとまらずに、テレビ事業部長が出世する仕組みは温存されていて、日本家電企業の経営が傾いている。

かつて、携帯電話端末でも、「iモード」の発明で、日本企業の世界シェアはたいしたもんだった。
それが、「OS:オペレーティングシステム」を、アメリカに完全支配されて、スマホの時代になったら、ノキア同様、世界市場から消された。

いまでは、OSの進化にハードウェアの設計が追いつかないので、はなから2年しかOS更新保証のない機種を、激安に見せかけて販売している。

末長く大切に使いたい、という消費者の伝統的価値観(「もったいない」というらしい)が、根本から破壊されて、「使い捨て」を設計段階から予定しているのに、これを、「持続可能」だといい張るから、根性が曲がっている。

この伝統的価値観という意味で「合致」するのは、伝統的工芸品になるはずなのに、そこにも、経産省の魔の手が伸びて、ぜんぜん生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした活動をさせないのである。

そのためにつくった、国家資格が、「伝統工芸士:伝統的工芸品産業の振興に関する法律、1974年)だ。
この法の「目的」には、「伝統的工芸品の産業の振興を図り、もって国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資することを目的とする」とある。

どこかで見た欺瞞とおなじパターンがここにもある。

1974年からほぼ半世紀、この法律の「目的」が、ぜんぜん達成されているようになっていない、ことが、暗黙に証明しているのである。

国を挙げての不誠実に、国民はいつ気がつくのか?

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