半年分の梅干しを予約した

わが国を代表する食品のひとつに、「梅干し」がある。

材料は、梅の実と塩、それに赤じそがあってもなくてもいい。
わたしは、どちらかというと、白梅の方が好きだが、しそで赤く染まった梅干しが嫌いというわけでもない。

中学だかのころ、母親が仲間と小旅行で行った箱根の帰りに、ふもとの小田原で買ってきた、「味な梅」が大好きになって、これだけを買いに小田原まで行ったことがある。

柔らかい小梅が、かつお節と一緒に漬けてあるものだ。

概して、「小田原に美味いものなし」というひとがいて、たしかにこれといって何か?と自問して、すぐさま浮かぶものがないのだけれど、やっぱり「梅干し」ではないか?

市内には、有名な「曽我の梅林」があって、まさに梅の産地なのである。

梅といえば、いまや、紀州の南高梅があまりにも有名だけれども、これは、和歌山県立南部高校の先生が品種選定にかかわったことからも、本来の品種名「高田」と「南校」との語呂あわせで、「南高梅」になった経緯がある。

ただしい読み方は、「なんこううめ」だ。

しかし、神奈川県には、「十郎梅」がある。
日本3大仇討ちでしられる、『曽我物語』(曾我兄弟)にゆかりの、「曽我」なのだ。

ちなみに、のこりの2大仇討ちは、赤穂浪士の討入り,伊賀上野の敵討(荒木又右衛門)のことだ。

その曾我兄弟の兄の名が、「十郎祐成(一万)」で、弟の名が、「五郎時致(箱(筥)王)」である。
その兄の名にちなんで、命名されたのが、「十郎梅」ということになっているけど、ときの小田原市長も「十郎」だったので、あれれ?ではある。

小田原(藩)が生んだ、偉人というより聖人といえば、二宮(金次郎)尊徳に相違なく、「報徳思想」の提唱者で、JR小田原駅東口に銅像がちんまりと設置されている。
鴨宮駅にある、「報徳タクシー」の看板を、電車の車内からみると、いよいよ「聖地」にやって来た感じがするのである。

おそらく、いまどきの地元で、そんなに熱心な報徳教育はされていないだろうことは、いったん無視する。

なので、小田原市は、「仇討ち」なる野蛮行為で有名ということの「非道徳」をたてにして、曾我兄弟の物語を熱心に教えるということもしていないだろうと思うのだが、これも無視する。

なぜならば、小田原市から一歩引いた、すなわち一つ上の行政団体となれば、当然に神奈川「県」ということになるけれど、神奈川県立高校を卒業したわたしの記憶に、県として地元の歴史上の人物として、曾我兄弟も二宮尊徳も、とくだん授業で教わった記憶がないからだ。

つまりは、地元の教育委員会が、「地元」を教えないようにしているのである。

まさに、グローバル全体主義の御先棒をかついでいるのだが、その時期は、ずっとむかしに遡ることができるのである。

これは、子供のアイデンティティーの生成上、まずいことになる。

まだ、まともさが残っていた昭和30年代、高校生までが学園紛争で暴れていたし、これが終わると、いわゆる、「学園もの」が流行って、その最後が中学校を舞台にした、『金八先生』だったのは、アイデンティティー形成に地域や伝統を抜こうとした反発もあったのではないかと疑う。

つまり、旧い日本とあたらしいがGHQが命じてつくりだした、民族性を抜くことを目的とした教育の現場での、軋轢だったのではないか?と。
すると、いまの状態は?ととえば、無機質な日本人になったがゆえの、A.I.との競争になっているのが疑われるのである。

そこで、原点回帰して、家庭教育を、とおもうが、そうはいかないのが、肝心の家庭も無機質化したからである。

すると、残っているのは、地元の特産品を丁寧につくっている現場ということになる。

さてそれで、梅干しの話だ。
炊飯器が壊れてから、ご飯用の土鍋とお櫃の生活となったのだが、朝がゆが気に入ってしまったのである。

梅干しと一緒に炊くと、たいそう味わい深いし、ステンレス製の「茶がゆ器」に煎茶をいれて炊けば、茶がゆができる。

それで、御殿場方面からの帰りに東名高速ではなく、国道246号を、大井松田から国府津に向かって右に方向転換すれば、そのまま曽我の梅林を通過する。
このとき、数軒の梅干し製造の専門店があるのだ。

基本的に「十郎梅」の梅干しだけど、塩だけで漬けているのはいまどきなら、探さないと売っていないから、ここまでやってくるのである。

いまや、梅干しも添加物まみれになっている。

南高梅は皮も厚いので破れにくいが、十郎梅は皮が薄いから破れやすい。
だから、きれいな梅干しは贈答用としても、見事な見栄えがする。
しかし、梅がゆをつくりたいから、潰れているほうが都合がいい。
もちろん、財布にも都合がいい。

そんな事情を話したら、樽から出すのにかならず潰れ梅がでてしまうので、数日待ってほしいといわれて、予約注文だけしたのである。

こんどは、梅干しを引き取りに向かうのが楽しみになった。

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