腸内細菌が脳に命令する

さいきん常識になってきた、「腸は第2の脳」だとは聞くけど、何がどうなっているのかはわからないものだ。

わからない、という表明ができなくて、わかったつもりになることの方が多くなったのは、おとなになった証拠でもある。
けれども、そんなおとなは、すぐに子供に見抜かれて心の中で馬鹿にされてしまうものだ。

この意味で、子供はあんがい「悪魔的」なのである。

腸内細菌というのは、ひとそれぞれ固有の組み合わせをもって理想とするらしいので、おなじ構成比を作ろうとしてもできないし、体調を壊してしまうこともある。
世の中には、たくさんの「整腸剤」があるけれど、ものによってかえって便秘がひどくなることもあるらしい。

長大な小腸に対して、短い大腸にたくさんの細菌が棲まっている。
小腸にも何種類かあるらしいが、ふつう「腸内フローラ」というと、大腸のことをいう。
ガスによる膨満感は、小腸の方がはるかに敏感で、あってはならない細菌が繁殖するとたちまち異常をきたすのが小腸だという。

種類にすると数百種類、菌数にすると100兆個ぐらいを、わたしたちは腸に棲まわせて「共存」している。

細胞の中にある、ミトコンドリアでは、「クエン酸回路」でもって、エネルギー創成をしているけれど、このミトコンドリアも、はじめは別の生物を取り込んだというから、我われの「個体」は、全部が「人間」とはいえない生物の集合体で、この全部をひっくるめて「人間」と認識している。

その割合は、ざっと「半々」なのだ。

さらに、大腸の話からすれば、毎日「大便」を排泄するのが正常な生理現象としているけれど、前日に食べたもののカスはその半分程度で、多くが体内の細胞の死骸と細菌の死骸からできているのである。

これは驚くべきことのように思えるが、私たちの体の全部が、細胞レベルでは3ヶ月から半年程度で入れ替わっている。
それで、細胞のコピーを繰り返すうちに、紙のコピーも印刷が劣化するごとく、各部位で劣化する。
これをふつう、「老化」というのである。

その劣化の原因が、「錆(サビ)=酸化」で、活性酸素(ヒドロキシカルラジカル)が体内の細胞を錆びさせるのだった。

さいきん水素吸入が話題になっているのも、血中の活性酸素に水素を結合させて、「H2O:水」にすることで酸化を回避しようという作戦である。
これに、「抗酸化」で有名なビタミンCを併せた療法を、法政大の宮川路子医博が提唱している。

さてそれで、腸の話である。

むかしからある、「整腸剤」のほとんどが、いまでは、「医薬部外品」になっている。
てっきり「薬」だと思っていたら、しらぬ間に「食品」になっていた。
カタカナにすれば、「サプリ」である。

多数の商品が出ているけれど、大雑把に分類すれば、ざっと4種類になる。
・乳酸菌
・ビフィズス菌
・酪酸菌
・酵母菌

この中で、消化器の専門医は、ビフィズス菌と酪酸菌に注目するという。
これらは、ビフィズス菌が酢酸を産生し、酪酸菌はその名の通り酪酸を産生するからだと理由を挙げている。
どちらもいわゆる「悪玉菌」に作用して、「善玉菌」の繁殖を助け「細菌叢」を形成するのだという。

「酢酸」は、「酢」のことなので、酢を飲む健康法ならむかしからある、といいたいところだが、残念ながら口から飲む酢は、全部が小腸で吸収されてしまい、大腸には届かないのである。
それで、ビフィズス菌を主たる成分とする整腸剤を飲む価値が出てくる。
製品名を書けば、むかしから定番の、「新ビオフェルミンS」をいう。

酪酸菌の方は、マイナーで、製品名だと、「強ミヤリサン錠」という。
これは、1933年に宮入近治博士が発見し、1940年に製造許可が出た歴史を持つ。
いまでは、口コミ人気で、ドラッグストアでの入手は困難になっていて、もっぱらネット通販頼みになっている。

この二種を「純りんご酢」大匙2杯を炭酸水で希釈して飲むのが、健康フェチの定番らしい。

なぜに「純りんご酢」なのかといえば、これら菌が萌芽して繁殖するためのエサになるからだという。
水で飲んでイマイチの効き目なのは、エサ不足で死滅するためという。

 

なんにせよ、効き目が出るのは個人差があって、最短で2週間とか1ヶ月というから、やっぱり「薬」ではない。

なお、むかしから厚生(労働)省には、成分を「mg」表記で届け出たため、「菌数」の表記がされていないのは何故か?という疑問がある。
100兆個に対する数になるから、「億単位」でも、そんなもんという印象になるからだろうか?

これを変える気は、役所にも製造会社にもないのは、「消費者主権」ではないからだ。
「表示」問題の奥には、「産業優先」がある。

それでもブームなのは、整腸剤で食欲コントロールができるからだという。

悪玉菌が多いと、悪玉菌の餌になる「糖分」に対する食欲が増し、善玉菌が多数になると、「水溶性食物繊維」に対する食欲が増すことがわかってきた。

つまり、我われ人間の食欲は、腸内細菌によってコントロール(命令)されているのである。

ケーキとかが無性に食べたい、というとき、「どうやら悪玉菌が増えているな」といったんかんがえれば、食べないですむ。

うそではなくて、ほんとうなのだ。

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