一口に「政権交代」といっても、お国によって意味がちがう。
アメリカ連邦政府の場合、約9000人の人事異動(大量解雇含む)がある。
ようは、9000もの役職ポストが、新旧交代するということである。
そのリストが、『 The United States Policy and Supporting Positions』だ。
表紙の色から「プラムブック」とよばれている。
あと一週間になったアメリカ大統領選挙は、すでに「トランプ2.0」が確実視されているので、興味は「政権交代の実務」になってきた。
就任式までの数ヶ月で、大規模な人事配置を成功させなければならないからである。
この意味で、「トランプ1.0」で世界に衝撃を与えた、「わがままな大統領(暴君)」ということの実体が、「政権交代人事の失敗」に由来したことがわかってきた。
あのころの彼は、当選を意識していなかったために、「政権移行チーム」を、当選後に発足させるという、痛恨のミスをおかしていたからである。
しかも、実業家だった彼には、「ワシントンの沼」の実体を知る由もなかった。
だが、「トランプ2.0」では、しっかり学習して、昨年から政権移行チームを発足させているし、そもそも大統領退任直後からフロリダの別荘にて、人事研究をはじめていた。
「人事は万事」なのは、企業経営の鉄則だが、国家運営でも同様なのである。
おおきく分けて、アメリカの官僚ポストには、3種類ある。
・連邦上院の承認が必要なポスト(日本でいう「閣僚級」と「特別職国家公務員」級)
・終身官僚(SES)の資格者がつくポスト(日本でいう「国家総合職」級)
・「猟官制」によってつくポスト
第7代大統領だった、アンドリュー・ジャクソンが定着させた「猟官制」は、そもそも法の執行機関たる行政官僚に政策立案力などは余計で不要であるという理由があった。
このために、アメリカでは「バカが公務員になる」という常識があった。
優秀な学生は、超優良企業に就職するか、あるいはもっと優秀な学生は起業するのが常識で、公務員試験を受けるのは行き先のない成績劣等のおバカだといわれていたのである。
しかし、敗戦国の日本の官僚制が、日本経済をけん引しているという驚くべき勘違い(わざとか?)を理由に、猟官制でやってくる無能な管理職を制御するための屋上屋たるSESを民主党政権(カーター時代)が創設したのである。
これを悪用急増させたのが、オバマで、彼の8年間で数千人を新規採用している。
これを、「オバマ・チルドレン」というように、左派に偏向したエリートを大量採用した。
こうして、ハーバードやら何やらの世界的有名校が、SES供給源として、みじめな「東大化」をしたのである。
それもこれも、グローバル全体主義をアメリカで実現するための準備なのである。
なので、ディープステート(陰の政府)とは、このSESを中核組織としてアメリカ政府を牛耳っているといって過言ではなく、彼らの排除を「トランプ1.0」から発言しているのは、それが現実の存在だからである。
すると、上記9000人の中の半数近くが、SESだとかんがえられる。
くわしくは、「プラムブック」を確認する必要がある。
ところが、SESの採用条件が、「終身」なので、解雇しようにも面倒なことになる。
日本の官僚制よりもより強力な官僚制にするのがこの制度をはじめる目的だったから、日本にない「終身制」にした経緯があるし、超有名校の生徒を引きつけるために、新任からの年収も大企業の部長・役員級としたのだった。
それでも、「トランプ2.0」では、しっかり「SESも解雇する」と明言しているので、激しい攻防(身分確認のための集団訴訟?)となることがいまからでも想像できるのである。
それで、偏向エリートの供給源である、有名大学に補助金を出す「連邦教育省の廃止」も、公約になっているのは筋が通っている。
逆に、バイデン政権が学生ローンの援助をやろうとしたのは、SESと供給源の大学に対する手厚い保護のことだった。
しかして、第二次大戦の原因にも、アメリカ投資銀行の陰があって、彼らが大量資金投入した軍需産業の利益向上のためだったことが、ウクライナ支援による利益享受の構造とかわらない古典的なやり方だとわかってきたのである。
それも、いまよりずっと大胆で、アメリカばかりかドイツと日本の軍需産業にも大規模投資していたので、これら三国の若い兵士は、自国で生産された武器の餌食となった悲惨がある。
これを背後で操ったのが、ウインストン・チャーチルである。
こうしたパターンが繰り返されるなか、小泉純一郎がいったように、「古い自民党をぶっ壊す」という名目での、たとえ見せかけにしても国益優先の古い発想をかなぐり捨てて、外資のいいなりこそが支配層だけを儲けさせるとして、大胆な売国政党に衣替えした。
こうして急速に国民が貧乏になったわが国で、『共産党宣言』にある、「教育無償化」が礼賛されるようになったのである。
そんなわが国のことは横におき、アメリカでは大統領の政府内人事をフォローするのが連邦上院なので、この議席数をいかに確保するかだけでなく、RINO(名ばかり共和党員)の代表で、上院院内総務をもって君臨していた、ミッチ・マコーネルの後任人事も重大な意味をもっている。
つまり、政権交代とは、政党や構成員の政治家が入れ替わるだけなんてものではなくて、政府そのものが入れ替わるものだと、トランプ氏は見せつけてくれるだろう。