16日あたりから、トランプ大統領と彼の熱烈支持者にして連邦下院議員のマージョリー・テイラー・グリーン(MTG)女史が、突如、「X」上での大ゲンカを開始した。
どうやら、事の発端は「エプスタイン文書」の公開にまつわる、要求と拒否のようである。
トランプ政権2.0は、発足前からこの文書の公開を公約にしていたが、政権発足の早い段階で、突如パム・ボンディ司法長官による「第一次公開」が行われて、理由もなく呼び出された記者たちが狂喜したものの、その内容の薄さから「第二弾」に期待が集まっていた。
しかし、その後、動きが止まり、司法長官とFBI長官の共同会見で、「これ以上の公開はない」と宣言し、トランプ大統領もこれを支持して、封印されてしまったのであった。
なお、この背景には、裁判所にある資料の公開も拒否されたためで、政権として頓挫したようにもなっていた。
それが、ここにきて、爆発した。
トランプ大統領の方は、打ち出した経済政策の効果が期待ほどあがっていないことを理由に、そんな些末なことよりも、経済の立て直し策を最優先させる必要があると判断したという。
これには、1年後に迫った、政権としてぜったいに負けられない「中間選挙」があるからだ、ともいう。
しかし、だから「エプスタイン文書公開」によるインパクトが欲しいのではないのか?
それもこれも、これまで書いてきたとおり、トランプ政権2.0のスケジュール管理の凄まじさがあるからで、えらく複雑な経緯を辿るようなイベントが計画・実行されている。
これを仕切っているのが、大統領副主席補佐官のスティーブン・ミラー氏だとも書いてきた。
さてここにきて本件で、連邦下院議会が重大な決議をしようとしている。
それは、議会運営に関する「議長権限」を超えるための、過半数の議決をもって、一気に公開を法的な位置に高めようとする運動が、民主党議員を加えた「超党派」で形成されつつあることにある。
これは、わが国の国会にはないルールだ。
アメリカの連邦下院議長にはたいへんな強権が用意されている。
それは、一種の独裁権で、どんな議案をいつ扱うのか?も議長権限にあるからで、わが国だと、政党間の「議院運営委員会」で決まり、議長の出る幕がふだんはない、のとはまったくちがう。
トランプ派の現議長は、本件の取り扱いをしない、という立場だから、これを議決でひっくりかえすことをMTG一派が仕組んでいると、大ゲンカになったのである。
さらに、エプスタインの兄弟が、「トランプは怪しい、と生前本人が語っていた」ともいいだして、火に油を注いでいる。
ときに、いったん下野したトランプ大統領は、バイデン政権に「エプスタイン文書公開」を何度も要求していたが、民主党は一切無視してきた。
その内容のヤバさが、民主党を不利にする、との憶測があったのは当然で、主に民主党の大物たちが関与していると見なされているからである。
しかし、今回、共和党MAGA派の内紛という状況から、民主党側からも公開の賛成にまわる議員が複数になっていて、来週、議決に持ち込まれ、可決寸前のタイミングになっているのである。
民主党議員は、内紛を煽っているつもりでも、これはトランプ政権2.0=MAGA派がしかけた罠ではないのか?
そうやって、シブシブ全面公開となったとき、被害者のプライバシー保護が問題になるのだが、この半年でその「保護策」を司法省がやっていたのではないか?
いわば、トランプ大統領とMTG議員による、一大狂言である。
すると、いきなり、トランプ大統領が、やけくそ気味に「全部公開だ!」とはじまった。
やっぱり。
なお、そのための別件目くらまし爆弾として、トランプ大統領は17日、連邦通信委員会に対し、「ABC」と「NBC」の放送免許取消を求めた。
「民主党のためのディープステート宣伝機関」だと非難して、いよいよMAGA内紛に乗じるよう仕向けている。
BBCへの高額訴訟は別件として、これも、陽動作戦であろう。

