「チップ」(心付け)には「チップ税」

日本の場合は、「心付け」といういい方が示すように、「お礼の気持ちをこめて」という意味が先行する。
しかし、アメリカなどの外国では、「別料金」という意味合いが先にあるので、「気持ち」は後になっている逆順がある。

日本ではあまり話題にならないのが、「チップ」そのものだ。

戦後、東京の有名ホテルが「サービス料」を制度化して、お客に要求したために、戦前・戦中の国際感覚が残っていた戦後の70年代まで(これらの人たちが生きていた)旅館やらタクシーやらでのチップはふつうにあった。

つまり、サービス料も取られているのに、チップを払うとは二重に渡しているようなものであったけれど、サービス料は料金体系にあったので、直接お世話してくれた係への「心づけ」は別だという感覚があったのだろう。

さて、まったく立場を替えて、「税吏」発想はどうかといえば、サービス料はいったん会社の売り上げになって、これをまた会社が人件費として当人らに還元するという建前になっている。

だから、むかしなら法人税が関係するし、いまなら加えて消費税が関係する。
「消費税は消費者が負担する」とは、どこにも表記がない「消費税法」を読めばわかるとおり、消費税とは法人税の二重課税制度なのである。

そんなわけで、社員の消費税を負担する会社にとって、できれば外部委託がいいようなイメージになる。

ならば、むかしながらの「心づけ」だとどうなるのか?
今度は、個人所得としての「雑所得」になって、申告課税となるのである。
だから、申告しないと「脱税」になる。

では、外国ではどうなのか?

暗殺未遂から時間が経って、さらにニューヨークの裁判官から「緘口令」を食らっていたトランプ氏だが、裁判官の裁判運営判断が高裁で裁判になるなどのグチャグチャで裁判自体の行方が不明になったことも受けて、アリゾナ州ラスベガスでの政治集会が開催された。

そこで、カジノやホテル従業員が多数の聴衆を前に、「チップ勢の撤廃」という公約を打ち出して、大声援を受けたのである。
ところがその後、カマラ・ハリス副大統領(次期大統領有力候補)が、おなじラスベガスで同じ公約を発言し、なぜかまた大受けしたのである。

あたかもトランプ氏をパクったように見えるけど、騙されてはいけない。

彼女は、現職の副大統領なのである。
しかも、選挙からの撤退を表明しただけのはずのバイデンが、以来、国民の前に姿を表さない異変となっている。

要は、現政権の残り時間のなかで「実行」すればいい話なのに、「わたしがもしも大統領になったら、チップ税を無くします」では、まったく現職としての発言として迫力に欠ける。

ここで、一つだけ日・米(欧も)の職場の考え方のちがいがあることに注意がいる。

あちらのチップ支払いが客にとって「義務化」されていることの意味は、固定給ではなくてチップ収入(あたかも歩合給)に依存して生活する人が多数いることの事実なのである。

つまり、企業側・雇用主側の立場は、職場を提供している、という意味なので、従業員の生身は「個人事業」であるというものだ。
そこに、わざわざ会社・雇用主は、制服やらを支給してやっている、という感覚がある。

この4年間で、共和党はトランプ派が席巻し、ほぼ制圧が完了した。

過去の、金持ちのための政党、から、労働者・一般国民のための政党、に変身してしまったのである。
それゆえに、トランプ選挙キャンペーンには、小口でも大量の寄付が集まっている。

本来、労働者・労働組合を票田としてきたのは民主党の方だから、その場を繕うことだけの思想しかないカマラ・ハリスのこの発言は、おそらく選挙参謀やら民主党幹部の焦りが言わせたものだと推測できる。

日本の労組が、どの政党を支持するのか?も、いよいよ議論になるほどの転換が起きているのである。

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