2025年最後の話題は「戦艦」である。
22日、トランプ大統領は、自らの名を冠した2艦の戦艦建造を発表した。
とりあえず2艦を建造するも、将来は20艦以上の保有を目するという。
このとき、マルコ・ルビオ国務長官とピート・ヘグセス戦争長官が同席していた。
ふつう、大統領の名をつけるのは「航空母艦」としているのがアメリカ海軍のきまりだが、トランプ大統領は異例にも「戦艦」の「級」とした。
現在の空母の排水量はだいたい10万トンであるけれど、トランプ級戦艦は6〜7万トンを想定しているようである。
ちなみに、「戦艦大和」は、基準6万2千トン、満載時7万3千トン弱であったので、ほぼ「大和級」に匹敵するといえる。
なお、わが国の最新護衛艦「もがみ型」の最終12番艦「よしい」が22日に進水して、来年度中に配属される予定になっている。
この艦の基準排水量は3千900トンという小ぶりさ、だし、乗員も90名といった少数運用が設計の基礎にある。
わが国の思想は、小ぶりな艦を多数保有することでの「分散型」なのである。
これは、覇権国ではない、あくまでも自主防衛という視点からの武装としたら正解であろう。
一方、アメリカ合衆国なるバリバリの覇権国にとっての目的は、対抗する覇権国家へ格上げチャレンジャーの存立を許さない、という思想がある。
戦略的に、こうしたチャレンジャーの「封じ込め」を画策するのがその典型的な外交態度となるし、その外交力を担保するための武装計画が連動する当然がある。
しかして、アメリカ合衆国が封じ込めを画策する相手とは、中共、だしそのための連携相手としてロシアとインドへ秋波を送っているのである。
それで、ウクライナ和平に熱心なのだし、ロシアから石油をコッソリ買っていたインドへのおとがめがないのである。
では、わが国はどうなのか?
むろん、「同盟国」としての位置づけから、アメリカの「戦艦構想」は心強い、といえるのだが、なぜにいまさら戦艦なのか?を問うと、あんがいとそこに潜む意図は、シビアだという現実も見え隠れする。
第一に、いまから建造しようという「戦艦」に、大砲は装備しない。
最大限の長距離ミサイル発射装置をもつ、巨大ミサイルフリゲート艦ともいえるが、これに加えて、最新のレーザー砲や電子粒子砲をも配置して、ドローンによる飽和攻撃にも対抗するのが設計思想にある。
こうした兵器群を運用するに、海中、海上、空中、宇宙といった3次元情報管理能力が要求されるのは、いまどき、ならではなのである。
しかして、その要は、大陸に配置されている「(戦術)核」の「足」よりも長い射程のミサイルを海上から制御することにある。
つまり、すっかり大陸側の射程内にある、わが国は、とうに「不沈空母」ではない。
だから、既存の巨大空母を旗艦とする最強といわれた「第七艦隊」でさえも、台湾やらの「第一列島線」より西に侵入できない現実から、それよりもずっと「外からの」攻撃力を要する戦艦が必要だというわけである。
これは、第四次中東戦争における、エジプト空軍の発想とおなじだ。
このときの空軍司令官が、ホスニ・ムバラク空軍大将だった。
ソ連製の短距離ミサイルの傘から抜けてはならぬ、とした基本戦略を、なんとエジプト陸軍は愚かにも、イスラエルの作戦に誘導されて、あたかも「勝ち馬」のごとく砂漠を驀進して、一瞬の勝利を味わった後、傘がないことでのイスラエル機からの空爆で全滅した。
それで、陸軍国のエジプトから、空軍出身の大統領が誕生したのである。
つまり、トランプ級戦艦とは、ミサイルの傘を洋上から構築するものではあるが、わが国の安全は、この「時代遅れ」と嗤われる戦艦の威力に依存することとなっている。
むろん、アメリカには原子力潜水艦があるので、水中と洋上の先制攻撃強化なのである。
しかして、わが国の技術が最新兵器群の最先端なので、アメリカ海軍はわが国の技術に依存しているのが実情なのである。
つまり、アメリカにとっての日本防衛とは、自国軍事力の基盤を守ることとイコールになっている。
そこへもっての「戦艦」とは、心理戦のスタートでもある。
弱い日本、というイメージが剥がれだすとはこのことで、来年以降、よりハッキリしてくることだろう。
よい新年を。

