「冷たい飲み物」を飲む習慣

梅雨が遅くはじまって、まだ「盛夏」とはいえないけれど、「立秋」は、8月7日なので「秋」まであと一ヶ月を切っている。
だから、連日の猛暑は、もう「盛夏」といっていい。

わが家の周辺では、9日に「初あぶらセミ」のこえがした。

それに40度の日もあって、冷たい飲み物が欲しくなるのは当然だし、キンキンに冷えたビールを飲みたくなるのも、コマーシャルのせいだけでなくふつうに夏の風物詩となっている。

ただし、横浜を代表する飲み屋街の野毛でさえ、あんまりの暑さで帰宅するひとが増えて、お店はガラガラになっている。

冷たい飲み物を飲む習慣は、あんがいと日本人の文化で、水が悪い世界標準からすると、かなり特殊である。
山ばかりのわが国では、川に浸けておけば冷えるし、都会では井戸でもおなじ効果があった。

しかし、漢方でも、体を冷やすことは推奨されないので、夏の麦茶も「麦湯」と呼んで、ぬるま湯状態で呑むことを良しとした。
この意味で、現代の冷たいペットボトル飲料は、ナノ・プラスチックもそうだが体にはいいわけないのである。

保守的なヨーロッパでは、アイス・コーヒーやアイス・ティーはめったにお目にかかれず、そもそもコップに氷をいれた飲料は、水の安全性から忌避される。
「生水」は危険だと日本人でもあったのは、近代水道がない時代の常識で、旅先で「水があわない」ために腹痛を起こすのもよくあるはなしだった。

なので、白湯か茶を好んだのは、いったん沸かして消毒するからである。

醸造酒で製法上、煮沸を伴うのは「ビール」である。
麦芽を煮出すための工程だが、これが「ペスト」の感染を抑えるとなって、ワインではなくビールが人気になった経緯もある。

もちろん、ビールの大産地にして大消費地のドイツにあっては、葡萄の栽培が麦より困難だという高緯度の事情もあるが、いちおう、ドイツワインだってある。
そのドイツでは、「ビール」と表記できるのは、原材料に麦芽とホップだけしか認められない。

EUでの規格統一で、すったもんだしたのは、キャンデー(砂糖)をいれるベルギービールとの大論争になったからだが、ドイツビールは「ピルスナー」、ベルギービールは「エール」という、別々の発酵方法のちがいでの妥協がはかられたのである。

この基準からしたら、日本の一般的ビールにはコーンスターチが入っているから、ドイツ基準では「ビール風飲料」にあたる。
それで、高級なビールは、ドイツ式の麦とホップだけを原材料とする、日本的な妥協がされた。

しかし、問題なのは、原材料だけでなく、提供されるときの「温度」がまた問題になるのである。
ドイツ式は、日本のようにキンキンには冷やさないからである。

味が分からなくなる。

ここがまた日本的で、味がない「スーパードライ」なるビールの席巻で、日本人は「のどごしだけ」でビールを飲むひとが多数いることが判明したのである。
だから、キンキンに冷やして味がなくっても、最初から味がないのでそれでいい、のである。

ベルギービールの最高峰にして、スーパードライと評価されている、オルバル修道院謹製の『オルバル』は、香から味から、見事に芳醇であるので、スーパードライが味がないといいたいのではない。

さてそれで、酒税法に対応するため、という極めて不純な理由から、ビール風やらカクテル風やら、いろんな味付けのアルコール飲料が出てきている。

これらは、ぜんぶ「化学製品」なので、わたしは「軽化学食品・飲料工業」と呼んでいる。

冷たくしようがなかろうが、体に悪いにちがいないからである。
なお、家内は、これらのとある新製品を呑んだら、口唇が腫れてマンガのようになって、とうとう数回目で「自己規制製品」として、一切口にしていない。

おそろしくなったわたしも、合成された飲料は飲まないようにした。

むかしは、日本酒でも「本醸造」ではない、「合成酒」という安酒があって、いまでは飲用としてはめったにみなくなったようでも、「料理酒」として販売されているし、「プリン体」が「本醸造清酒」より少ない、という別の意味の特徴がある。

日本酒で合成酒を好んで飲むものはいないだろうが、その他の炭酸系アルコール飲料では好まれるのは、あえて「合成酒」と書いていないだけなのだろう。

やっぱり夏はヤカンで煮出した麦茶(麦湯)が、体には優しいのである。

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