『チ。』は欧州を逆転させるか?

サブカル世界のなかで、日本の地位は圧倒的だと評価されている。

サブカル=サブカルチャーの対義語は、メインカルチャーである。
それで、おおいに影響された外国人が、メインカルチャーの扉を開けて、日本文化の深層に迫ろうと、まずは日本語を学ぶことになっているし、日本食のお手軽入門としてラーメンとカレーが世界各地でヒットしているのも、「マンガ」にこれらを食べるシーンがあるからだ。

当然だが、いまはインバウンドの旅行客がこうしたカルチャーを実体験し、それをSNSにアップしてどれもおなじではあるが、「絶賛」しているのである。

衝撃的なのは、「I教」の国からやってきた人物が、トンカツ定食やカツ丼、あるいは豚肉入りのカレーを頬張って、「(豚肉が)こんなにうまいとはしらなかった!」と破戒の動画まで出している。
帰国して無事でいられるのか?観ている方が心配になるのである。

これもひとつのグローバル化で、日本文化が世界文化に混じりだしている。

言語とは、思考に必須の基礎条件なので、日本語を学ぶこととは、そのまま日本思想を学ぶことにも通じる。
こうして、日本人の宗教観が一般的に「無宗教」といわれていたことの安易さのベールが剥がれて、あらゆるところに神が宿る宗教思想の深さも外国人にバレだしているのである。

薄れたとはいえ、キリスト教のいう「絶対神」との究極的対岸にある日本の八百万神を識れば知るほどに、はまり込むようにできている。
なぜなら、「十戒」をわざわざ書き出さなくとも、日本思想における当然が「不文律」で通じることの方が、「J教・C教・I教」徒にとっての驚きとなるからである。

この意味で、「不思議の国ニッポン」は、うそではない。
逆に、日本人が欧米の価値観を識れば知るほどに、泥沼の文化に嫌悪するようになるのも驚きではない。

「鬼畜米英」には、真理がある。

それだから、欧米に生まれて自国文化に違和感を覚えさせる日本発のサブカルが、最強といわれるゆえんがある。
つまり、目醒めさせてしまう、のである。

その最強中の最強が、「マンガ=コミック」の膨大な作品群である。

たとえば、『ベルサイユのばら』は、とっくにひと世代を超えてフランス人のフランス革命の教科書になっている。
超複雑な革命に至るまでの経緯と、その後の超複雑を、かくも視覚化した成功例はないからで、池田理代子氏がレジオン・ドヌール勲章(シュバリエ)を受賞した理由がここにある。

良くも悪くも、「ベルばら」は、フランスの「旧農奴」階級たちの役に立っている。
この圧倒的多数の支持に、エリート層が屈服したそれ自体が「革命的作品」なのである。

すると、中世ポーランドを舞台とした『チ。地球の運動について』の影響はいかに?が気になるのである。

ポーランドは、基本的にカソリックの国だし、なんといっても史上最年少にして史上初のポーランド人教皇「ヨハネパウロ二世」を産んだ国である。
そのヨハネパウロ二世(本名:カロル・ヴォイティワ神学博士)は、旧都クラクフ(17世紀までポーランド王国の首都だった)近郊の出身で、クラクフの司教から大司教、そして枢機卿となって教皇となった人物である。

なので、クラクフの教会には、日曜日にいつもそこから説教していたという窓に等身大の写真を置いて、あたかも見あげる大衆をいまも照らしているのである。
しかも、この旧都は、ポーランド国内では「珍しく」、第二次大戦における破壊から免れた街で、完全破壊されたワルシャワなどの都市とはまったくちがう。

しかして、ポーランド人は、執念でワルシャワの旧市街を「復元」した
あらゆる資料(写真や絵画だけでなく文書)と住人の証言から、石材の欠けや鉄門扉のサビまで細部にわたっての復元は、この街観光の目玉なのである。

ところで、そのクラクフにある、「クラクフ大学」に、あのコペルニクスが学んでいる。

よって、『チ。』のポーランド語版は、確実に衝撃的な内容として広がるだろうけれども、一方で、教会が厳しい態度をとるやもしれない。
ならば、フランス語版、ドイツ語版、英語版はどうか?

邪悪なEU委員会が、かつての教会にかわって「言論弾圧」をしているいま、この作品をどのように扱うのか?は、興味深い。

そのEU委員会を支えているのが、英・仏・独の現政権なのであるが、この3国とも歴史的な不支持がひろがっている。

一方で、バチカンを抱えるイタリアはどうか?

微妙なのである。

試金石とはこのことなのである。

異端として火あぶりにされたヤン・フスや、ガリレオ・ガリレイの「地動説裁判」における名誉回復などを公式に発表したのがヨハネパウロ二世だったのである。

それは1992年のことで、教会が地動説を認めてまだ33年しか経っていない世の中にわれわれは生きているのである。

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