3日のアメリカ軍による「ベネズエラのマドゥーロ夫婦拘束&アメリカへの移送」について、4日、わが国の外務省は報道官談話を発表した。
本稿では、この談話についての考察をしたい。
4項目の談話のはじめは、「関係国と緊密に連携して情報収集を含めた対応に努めています」とあるから、日本政府に事前通告がなかったことがわかるし、その後も連絡がとれないことを示唆している。
そこで、2項目には、邦人保護、を強調しているけれども、アメリカ軍は拘束作戦後に、全部隊が退去しているとの報道がある。
つまり、米軍が「侵攻した」のではないから、邦人保護の要請について現地の日本企業がどこまで求めているのかも不明な談話なのである。
南米の主だった報道では、「(国家の癌摘出の)外科手術が成功した」とある。
3項目目は、「日本政府としてはこれまでも、一刻も早くベネズエラにおける民主主義が回復されることの重要性を訴えてきています」だけで終わっているので、今回のアメリカの措置についての論評はない状態である。
おそらく、外務大臣も「なんのこっちゃ?」レベルなのだろうし、首相もノーマークだったのではないか?と推測する。
おどろくほどの、世界情勢音痴ぶりである。
そんな状況だから、お花畑の論を最後の4項目でぶちまけているのは、わが国外務官僚の限界を示す前例となった。
つまり、国益ではなく省益優先がこれほどまでにあからさまになったことの、恥ずべき例、としてである。
なんと、「国際法の原則の尊重を重視してきた」と、暗にアメリカを批難するギリギリの表現を駆使して、官庁文学の真髄を発揮しているばかりか、あろうことか「G7」やら「地域諸国」を含む関係国と緊密に連携し、といった世迷い言をかまして、さらに、「ベネズエラにおける民主主義の回復及び情勢の安定化に向けた外交努力を進めてまいります」と、意味不明な文章で終わっている。
わが国が、ベネズエラにおける民主主義の回復及び情勢の安定化にどのような貢献ができるか?といえば、なにもない、からである。
それにはやく「G7(アメリカと日本を除けば、G5)」なる、悪いトモダチ関係を断たねばならない。
むしろ、アメリカ側の予告は、これまでにもたくさんあって、これらについても日・米の連携なんてなんにもないし、そもそも、アメリカはバイデン政権からしても、ベネズエラのマドゥーロ政権を承認していない外交的事実がある。
よって、国家元首は不可侵であるといった「国際法」を、アメリカは破っていないという法理すなわち外交的にも国際法的にも筋を通しているのである。
ために、アメリカ民主党が、今回の措置を国内的にも批難するなら、バイデン時代へのブーメランとなる論理矛盾になるのである。
さらに、アメリカはマドゥーロ夫婦を、とっくに麻薬カルテルの首謀者として指名手配していて、今回の作戦にはFBI捜査官も参加し、そのまま「逮捕執行者」となっている。
そうやって、アメリカの裁判にかける、ということの前例(パナマのノエリガ将軍)も、かつて最高裁判所も認めているのである。
むろん、「国家主権」を引き合いに出せば、アメリカの傍若無人ぶりは問題だが、そもそもアメリカという国は傍若無人だし、そんなアメリカの属国のわが国が、「国家主権」をいいだすのは、国際的な「お笑い種」であることすら、外務官僚が理解していないことのほうが深刻なのである。
しかも、アメリカはマドゥーロ政権の転覆ではなく、「現職副大統領の昇格」を暗に認めている。
ノーベル平和賞をトランプ氏に献げた、野党のマチャド女史にまだお呼びはかかっていない。
民主党が得意の「政権転覆」をすぐさまやらないところが、トランプ政権2.0なのである。
そんなわけで、わが国の高市政権は、いきなり「踏み絵」を試されている。
けれども、これがキツいのは、議院内閣制の限界をも示唆する事態だからである。
外交オンチだろうが、経済オンチだろうが、国会議員をながくやれば大臣になれる体制の限界ともいえる。
それでこれまでは、官僚から議員になって、古巣の大臣になるという「出世」街道があったけれども、先輩やらの事務次官とかが組織全体を牛耳る中では、「そこそこ」で通じたのである。
しかし、外部専門家をいかに使うのか?という「適材適所」が実現できない議院内閣制には限界があるとしれたのである。
この点で、トランプ政権2.0は、国務省の官僚(組織)を信用していないことが明らかで、重要な交渉に職業外交官を起用していない。
これはこれで、ちなみに、わが国では平成12年(2000年)をもって「外交官試験」は廃止され、「国家総合職試験」に統合されて人材が平準化している。
これはこれで、悪名高い「科挙」なのだ。
麻薬カルテルの撲滅という視点でみたら、コロンビア、メキシコ、カナダが次の相手である。
これに、ベネズエラの石油利権がからむけれども、マドゥーロが選挙にあの「ドミニオン」を使っていることも、トランプ政権2.0が一掃したいことであろう。
なんにせよ、日本は同盟国としての踏み絵テストをクリアできていないのが現状なのである。

