「トランプ関税」のシナリオは、2024年11月に発表された、スティーブン・ミラン(トランプ政権1.0で財務省上級顧問、トランプ政権2.0では、大統領経済諮問委員会委員長)の『A User`s Guide to Restructuring the Global Trading System(グローバル通商体制再構築の手引き)』という論文にある。
この論文の骨子そのものが、「関税」とアメリカの工業を再び偉大にするための輸出に有利な「ドル安誘導」なのである。
この意味で、トランプ政権2.0は、発足後半年もせずに、つまり、猛烈なスピードで第一段階の「関税」を発動させることを実施した。
だから、次、は、「ドル安誘導」にほかならない。
レーガノミクスの延長で、「プラザ合意」がされたのは、1985年の9月であった。
このときの内閣は、中曽根康弘首相、竹下登大蔵大臣、そして日銀は澄田智総裁という対米隷属の面々だった。
時代はまだ「ソ連崩壊」の前だったし、アメリカ(戦争屋)に粛正された親分の田中角栄を側近としてみていた竹下に、対米隷属をやめることなどかんがえることができるわけがなかった。
円・ドル相場は240円/ドル程度から200円/ドルへと進み、その後は120円/ドルという、「円高不況時代」となってそれがまた「バブル経済」へと移行したのである。
つまり、わが国やドイツの国内産業が海外(主に中国)移転し、国内での産業空洞化を促進したかわりに、余ったマネーが暴走して投資から投機のバブルとなったのである。
あれから40年を経て、わが国の産業空洞化は常態となり、工業ばかりか一次産業までも衰退が著しい。
それがそのまま「中間層の没落」、という状況になって現れている。
これがまた、いまの参議院選挙における与党大敗の燃料とエンジンなのであって、国民の恨みが深いことを示しているのである。
上のミラン論文に対するわが国の批判論文は各種あるが、だからといって「どこ吹く風」のトランプ政権がこのシナリオを放棄するようなことはない。
残念ながら、「遠吠え」にもなっていないのである。
現在、円・ドル相場は、150円弱であるから、プラザ合意からの率でいえば、75円程度がアメリカがかんがえる将来目標に設定されていないか?とうたがうのである。
すると、日本人の個人どころか国家がもっているドル資産は、またもや半減する危機にある。
8月1日まであと数えるほどであるが、選挙で大敗しても自・公政権は、トランプ政権が要求するように消費税をイジる気は微塵もみせていない。
あとは困った経団連が、どうするのか?になっている。
なかんずく、EUに対する「関税」は、まだ公表されていない。
だが、15%から20%程度だとほのめかしているので、わが国の産業界は、アメリカに工場を作るのかEU域内に工場を作るのかの「損得勘定」をしないといけなくなっている。
つまり、消費税を交渉材料に用いない限り、わが国の産業空洞化は産業壊滅になりかねないともいえるのである。
それが工場ならまだしも、「本社移転」ともなれば深刻度はさらに高まる。
そんな状態の国の通貨が、ほんとうに対ドルでそこまで高くなるのか?という問題のほうが、よほど現実的なのである。
これを、各国の「協調」という無理やりでやる、ということになるのだろうか?