「X」での議論が盛んなのは、ウクライナとロシアの双方における人的損害数がわからないことによる、どっちが優勢なのか?論のことである。
24日、Wedge ONLINEの原田泰氏の記事『なぜ、ロシアは戦争を続けられるのか?経済統計データを読み解き見える実情』も、なかなかに興味深いのである。
原田氏といえば、かつて経済企画庁で『経済白書』を執筆していた官庁エコノミストの中でも「文豪」と異名を得たほどの出版物が多数の人物で、その役人らしからぬ筆致には定評があったことをずいぶん前に書いた。
しかし、残念なことに2015年から日銀の政策委員会審議委員になって、従来から日銀批判をしていた岩田規久男副総裁とコンビを組み、黒田総裁を支える役を担ったあたりから説が曲がる。
これはこれで、伏魔殿としての日銀という、恐ろしい組織で何があったのか?興味深いが、ここでは深追いしない。
上の、24日の記事も、公式発表の数字からの論説だから、本文でご本人も「データ正しければ」とするのは、その通りなのである。
しかし、ここでいうデータでの、ウクライナとの比較における前提が不可思議で、現状で負けているはずのウクライナよりもロシア側の損害が多いのはいかにも不自然である。
「公式発表」をもってすれば、「X」における論争も似たことになっていて、やっぱり基礎数字への疑問があるために不毛な論争になってしまうのである。
ようは、ウクライナが過小評価であると考えられるのは、ネット映像にある強制徴兵の実態が、ほとんど拉致・逮捕のように見えるからである。
つまり、そこまでしてでも兵員の補充をしないではいられない状況なのだ。
ところが、ろくに訓練もしないで一般人を前戦に送り込むのだから、勝ち負け以前にただの消耗戦になる。
なんだか日露戦争の「203高地」での肉弾戦のようなことを現代でやっているのだ。
そこで、トランプ大統領いう、「60万人の損害(戦死者)」という数字に説得力がある。
なお、通常、この4倍程度が負傷者数だと言われるから、ウクライナ側はすでに300万人もの人的損害を抱えていると考えられるのである。
第二次大戦での日本の損害に匹敵するから、人口比でいえば膨大な数になる。
しかし、これを認めたくない人が多数いるために激しい論争になっているのだ。
そこには、ウクライナ人の最後の一人まで戦え、というあのボリス・ジョンソンの声が聞こえてくる。
勇ましく鼓舞した、というよりも、英国人の利益のためにウクライナ人が地上から絶えても構わないという本気とも発狂したともとれる発想なのである。
この原点に、スラブ=slaveという見下しがあるのだろう。
もちろん私が見ている「X」は、日本語空間なのである。
だから、ウクライナの損害よりもロシアの方が多いという主張も、日本人が語っているものだ。
ここに正義はウクライナにあるから、という勧善懲悪の気分が見て取れるのはなにもわたしだけではあるまい。
ずいぶん前に「罪な水戸黄門」と題して書いたが、あの今や伝説の時代劇ドラマが、いまや反日むき出しの「TBS」の制作だったと思えば、いまさらに日本人への洗脳具合の完全さもしれるのである。
ときに、ロシアがそんなに損害もなく、ウクラウナの負けが込んだらとっくにキエフまで占領されているはずだ、という論には笑いも凍る。
戦線拡大がNATOの介入=第三次世界大戦を招きかねないから、ロシアが東部4州の境川にあたるドニエプル川までとしていることの戦略的意味すらわからず、当初に首都を包囲して解除した理由も、その撤退時にブチャの悲劇という偽旗事件まであったのもわからずに投稿することの無知を嗤えないからである。
こうしたことが書けるのは、情報の欠如ばかりでなく、マスコミの洗脳から来るもので、そのまま自問も抵抗もなく発想をする人物たちが、最も危険な言動をすることになんら躊躇しない姿だからである。
玉石混交ではあるが、こうした自由言論空間あってこそのことではある。