ウクライナが壊した相互依存主義

ソ連が崩壊して、冷戦に勝利した美酒にへべれけに酔ったアメリカが、自ら「一極超大国」を自覚したときにできたのが、無邪気な幻想としての、もっといえばリアリズムから乖離した狂気ともいえる「理論」に自分からはまり込んだことである。
しかし、30年以上やってみて気づいたのは以下の点だった。

・経済相互依存が高まると、戦争は起きない、ことはなかった。

・経済相互依存が高まると、全体主義は緩み自由化がすすむ、ことはなかった。

・そして、市場経済よりも地政学が復活した。

アメリカは、再度、強い日本を望むばかりか、この半世紀で自らの産業生産力を減衰させて、強い日本にアメリカが依存するようになってしまったのである。

その一つの例が半導体だし、産業生産力を縮小させたのは「金融帝国」の構築に邁進して、机上で儲けることばかりに熱心になったら、若者が手を油まみれにして働くことをバカにする常識になってしまったからである。

自由主義で起きた、「産業の空洞化」がいよいよ末期の悲惨な状況になったのである。

それで気がついたら、「経済安全保障」という概念が生まれて、とうとう政府が半導体生産にも介入する時代となって、同盟国相手でもあからさまな政府間調整が行われている。

つまり、自由経済ではなく国際間での統制経済化しているのである。

それが、わが国でも2022年の「経済安全保障推進法(正式には「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」)となったのである。
具体的には、次の4点が対象である。

・重要物資の安定供給
・基幹インフラの安全確保
・先端技術の開発支援
・特許出願の非公開

かんたんにいえば、経済活動への国家の介入を「法制化」したことにある。
これは、自由経済を金科玉条としてきたことの大転換なのである。

むろん、日本が自らすすんで発想した、のではなくて、弱ったアメリカからの要請であろう。

だが、経産官僚などは、これをおおいに歓迎したはずで、大好きな介入が自由に出来ると大喜びしたにちがいない。
これに乞食化した産業界(経団連)は、補助金争奪戦になるとして、いかに国庫からカネを引き出すか?が経営のおおきなテーマになったはずである。

いまや経団連は、乞食組合と化した。
ちなみに、エジプトに「乞食組合」は実存する組織で、組合員だけが現場配置を許されるために、各所にいる乞食の得た「喜拾」をピンハネして、組合長はベンツに乗っているのである。
これを大衆演劇で新喜劇のごとく「お笑い」にしているのが、エジプト人である。

経団連のお偉方が高級社用車にふんぞり返る姿こそ、乞食組合の幹部らしいのではあるが、昭和なら「お笑い」にしただろうに、もうその気力もないために、いまの日本社会を「管理社会」というのだろう。

それもこれも、わが国に「グランドストラテジー」がないからだ。

アメリカ合衆国が「腐っても鯛」なのは、建国当初からある「憲法」と、時代の都度に書き換えられる「グランドストラテジー」を両輪として動かすことが「癖」となっているのに対して、わが国はずっと「対処療法」でなんとかする、癖、がある。

明治の泰明期、西周と福沢諭吉が、国家存亡の緊急事態として説いた「脱亜入欧」の主張は、当時の正解ではあろうけれど、それが永遠であることもない。
これを、儒学者たる中江兆民が批判したのはいまさらに評価する価値がある。

マスコミが世論誘導しないのも、価値がある、ことの証拠なのである。

プーチン氏は、19日、4時間半の生放送で、「トランプ和平案に合意した」と明言したことも、西側マスコミは報じない。

ようは、米・露はもう、ウクライナの出口を決めていて、すでに「次のステージ」にはいっているのだ。

EU=NATOと日本は、置いてきぼりを喰らっている。

次は、東アジアの覇権をかけた闘争となることは必定で、それはなにも台湾だけの問題ではない。
アメリカのトランプ政権2.0と「タイアップ:Tie-up」できる日本の政権を生むべく、来年は確実に動きだすことも必定なのである。

むろん、アメリカが望むのは、自民党単独政権ではない、であろう。

13日に来日した、国際政治の世界的権威、シカゴ大学のミアシャイマー教授にとっての真の目的は、「講演会」ではなくて、日本における政治状況の調査にあったとみる。
当然ながら、ホワイトハウスに報告されていることだろう。

ようは、アメリカ国務省においてGHQ以来伝統的に引き継がれていた「ジャパンハンドラー」を排するのがマルコ・ルビオ国務長官の仕事であって、トランプ大統領がいう「国防費増額要求」の真意が、教授の「攻撃的現実主義」の具現化なのである。

このために、自由主義から地政学優先の時代になったのである。

それは、日本を味方につけたい国同士の引っ張り合い、であって、日本は「痛いよー!」と子供のように泣いて済むはなしでもない。

アメリカにとって幸いなことに、大陸の国が日本人に嫌われるばかりの「圧力」をかけてくれているので、来年は早々に動きだすはずなのである。

日本国民には朗報であろう。

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