例によって、トランプ氏の発言が「切り取られ」て、そこだけを「暴論」として報じるばかりなので、世の中のことがわからなくなるように仕向けられている。
似たことは、「盟友」のプーチン氏にも適用されて、シリアのアサド政権を支援してきたロシアの「敗北」を、そのままウクライナでの「敗北」と重ねて、生放送中にアメリカ人の記者が質問したら、至極冷静な返答に大恥をかくことになったから視聴していたロシア人やらウクライナ人、あるいはモルドバ人にも却って「誰が敵かの真実」を伝えることとなった。
それもこれも、こうした「(左翼)偏向記者」をモスクワで自由になんの妨害もせず取材活動させて、あえて「飼っている」ことの余裕を他国の読者や視聴者に発信させるのは、あたかも「仏の掌」のうえでうごめくのと同じ次元のちがいがある。
これを「屁理屈」と解釈するのは勝手であるが、プーチン氏がなぜにシリアを支援したのか?の最も優先されるべき目的が、及川幸久氏の「正教会の聖地」という指摘があったからである。
キリスト教が、「宗教」として完成するのは、啓典としての『新訳聖書』が重要な役割を果たしていることは当然だろう。
もしも、『(旧約)聖書』だけがあって、教会での説教をもってキリスト教を拡大し、世界宗教となることはできなかったにちがいない。
しかも、キリスト教最大の弱点は、「イエス・キリストの実在が不明」という点にある。
ただし、「使徒」筆頭のパウロについては、実在が確認されている。
彼は、役人としてキリスト教を禁止するためにダマスカスへ向かう途中、「光に当たって盲目となり、そこで復活したイエスの奇跡によって治癒する」ことで、信者になるのである。
この話から、ダマスカスは、「聖地」なのだ。
地政学による戦略としての話を超えた、宗教的な理由を掲げたことは、キリスト教が薄まったヨーロッパ人やアメリカ人には意外だったにちがいないし、いまや「無宗教=共産化」の日本人には、価値体系にはない話を信じることもないだろう。
一方で、まだ大統領に就任していないトランプ氏の「唐突な」、デンマーク領グリーンランドとパナマ運河を取得するという発言に、「エゴむき出し」という宣伝がおこなわれて、その真意を伝えないいつもの努力がされている。
これも、及川幸久氏とハラノタイムズさんが冷静に解説してくれている。
何度も書くが、メルカトル図法の刷りこみに注意しないといけない。
これをPC上で自動的に縮尺修正してくれるサイトがある。
基準としたい地名をテキストボックスに入れて、認識されたあとはその部分をドラッグするだけでよい。
これで、「Greenland」を入力・選択して、たとえばアメリカ合衆国と重ね合わせたら、3分の1ほどの面積だとわかる。
加えて、地球儀をみればわかるとおり、北米大陸は、北極海を隔ててロシアと「隣国」の関係にある。
その北極海の入口に、グリーンランドがあるし、マスコミはグリーンランドに米軍基地があることをいわないし、この島への中国の関与が高まっていることも一切いわない。
なぜに、この世界最大の島に米軍基地があるかといえば、デンマーク本国がナチス・ドイツに占領されたとき(1940年)に、一時、アメリカの「保護領」になった経緯があるからだ。
それゆえもあって戦後、グリーンランドは、デンマーク領とはいえ、「自治領」という本国と対等な政府をもつ位置づけになっている。
そして、いま、このグリーンランド自治政府は、EUらしく左派が仕切っているのである。
これに、プーチン氏が掲げている「北極航路開発」がからむ。
地球温暖化を歓迎しているロシアは、氷なき北極海の航路を開発することで、大西洋・太平洋航路からの物流を大胆に変えようと企図しているし、場合によっては、「巨大潜水コンテナ貨物船」の建造も念頭にあることはとっくに発表済みなのだ。
軍事用の潜水艦とちがって、また、海表面が凍結するだけの北極航路用潜水貨物船は、大陸氷河を元にする巨大氷山がある南極海とは別に、数十メートルだけの潜水能力でよいから実現性が高いのだ。
これは、日本にもおなじことがいえて、過去には北極海経由でフィンランドに陸揚げし、新幹線規格の貨物線によってバルト海まで輸送するプランもあったし、シベリア鉄道の高速化も兆円単位のプロジェクトとして発表されたことだってあったのである。
さらに、ロシア産の原油と天然ガスを積み出して日本へ輸送するのも、北極海航路は利便性が高いし、9割の中東原油依存からの脱却もできるメリットはおおきい。
つまり、トランプ氏とプーチン氏は、地球儀で北極からの地図をみて発想しているのだ。
パナマ運河は、かつてアメリカが建設(開通は1914年)して、運用もしていたが、カーター政権時代にパナマへ移管が決まり1999年の大晦日をもって完全にパナマ領にされた経緯がある。
ただし、この返還条約には米国らしくしたたかに「条件」があって、それが「米国の利益の確保義務」だし、それができなければ「再返還の当然」がついている。
トランプ氏の発言は、「通行料の高額」を理由としているが、この条約をいっている。
また、ロイターは、「中国はパナマ運河に直接的な影響を及ぼすことはないが、香港系企業CKハチソン・ホールディングスがパナマ運河地域に投資している」と報じていることに注意がいる。
あたかも、パナマのスリランカ化(南部の「ハンバントタ港」の99年間リース)を指摘したとみられるからだ。
この運河を通行する船舶の数を想像すればわかるとおり、「待機」のための港湾が周辺にあって、5カ所の内2カ所あるいは3カ所がもう実質中国管理の港湾になっている。
これを、「アメリカファースト」を基本とするトランプ政権2.0が、「国家安全保障上の脅威」というのは、けっして大袈裟ではない。
ましてや、アメリカの東・西海岸を結ぶ物流の要が、パナマ運河であることはだれにだってわかることだから、大日本帝国海軍もパナマ運河爆撃作戦を練っていた。
いまも、むかしも、将来も、物流の中心に「海運」がある。
トランプ氏の一方的な発言は、「ディール」にするための主導権を得るためだとおもわれる。
たとえ「米帝的」と批判されようが、どんな決着を意図しているのか?
戦争嫌いでしられるトランプ氏だから、目が覚めた相手方は、しきりに情報収集することだけは確実なのである。
つまるところ、グリーンランドも、パナマ運河も、地理的には隔絶があるものの、そこに「中国の影響」というキーワードをはめ込むと、みごとに共通の問題がみえてくる。
そして、上院で承認されれば、日本大使には現職と180度ことなる、「反中の権化」が就任するというトランプ政権2.0の「一貫性」があるのに、日本政府はムダな抵抗をしているのだ。
来年は、プーチン・トランプの「同盟」で、世界的に革命的な変化が到来する。
そのたったひとつの政権就任前の事例ですら、「これ」なのである。