コンゴ大統領のヘルプ要請

19日、コンゴ民主共和国のフェリックス・アントワーヌ・チセケディ・チロンボ大統領が正式にトランプ大統領に対して自国内の兆円単位になる資源開発を見返りに大規模支援を要請したことが話題になっている。

西アフリカのこの国に馴染みのある日本人は少ないだろう。
なにせ、「コンゴ」と名乗る国が複数あるのもしらない。

そのために、マイケル・クライトンの小説『失われた黄金都市』(1980年)を原作としたアドベンチャー映画『コンゴ』(1995年)を観たひとの方が多いだろう。

わたしもこの映画を観たひとりだが、現地の未開度が『ターザン』よりも酷かった印象だけが残った。
似たような話に、『ジャングル・ブック』とか、『狼少年ケン』があった。

とにかく、ジャングルとサバンナが混じった場所がアフリカなのだ、という印象が擦り込まれたものである。

架空ではあるがターザンは、一応英国貴族の血を引くひとだという前提で、おそらく舞台はタンザニアあたりかとおもわれる。

とにかく、広大なアフリカ大陸は「アフリカ分割会議(「ベルリン会議」ともいう)」で、ヨーロッパ列強の餌食になって今に至る。
だから、上に挙げた作品は、どれも「分割前後」の時代設定であるから、どうしてもヨーロッパ目線になっている。

フランスがいまも「文化大国フランス」でいられるのは、アフリカ利権のおかげであるし、北に隣接するヨーロッパ=EUの首都ブリュッセルがあるベルギーもおなじだ。
だいたい、チョコレートで有名な国は、ココアの収奪をしてきた苦い歴史がある。

しかし、フランスやEUで昨今の衰退が著しいのは、そのアフリカ利権が揺らいでいることにおおきな原因がある。
大航海時代以降のヨーロッパの豊かさとは、アフリカからの収奪によってであるためで、アフリカの貧困はヨーロッパに奪われたためだともいえる。

英国の衰退がこれらよりももっと酷いのは、もっと酷いことを七つの海でやってきたことのブーメランなのである。
この英国を支配する暗黒の者たちの正体を、短期内閣で潰えたトラス女史が、イングランド銀行総裁だった現カナダ首相の悪事を引き合いにして語っている。

「暗黒大陸」とは、じつは英国も含めたヨーロッパのことなのである。

これを破るべく立ち上がった典型が、ブルキナファソの若き大統領が推進している「脱フランス支配」政策で、分かりやすい排除の対象が「CFA(セーファー)フラン」なのである。

また、すでにロシアはアフリカで40カ国以上と軍事協定を結んでおり、マリなどには「ワグネル部隊」が駐留している。
これが、フランスやヨーロッパの利権を脅かすので、マクロンやらフォン・デア・ライエンが反ロシアであるばかりでなく、対抗するル・ペンも対ロシアでは微妙な立場なのである。

本音でのアフリカ利権確保というむき出しの欲望を隠すのが、彼らのつくった美談としてのウクライナ支援なのであって、お人好しを通り越した日本が支援させられているのは、まったく「日露戦争」のような構図なのである。

こうした中、当然ながらコンゴも旧ベルギー領であり、「ベルギーフラン」と同価値とされた「コンゴフラン」をいまでも使っている。

今回の申し入れは、ウクライナの資源開発と、ガザの不動産開発とをみた世界の反応のひとつとして注目すべきできごとである。
ビジネスの世界での成功の鉄則とは、「信義を守ること」であるが、それこそがトランプ氏の実行力の源泉だと、広く認知されていることの証拠となるからだ。

コンゴにある資源開発とは、なにも掘りだすことだけでなく、運搬手段や労働者の住宅開発も、港湾や空港の整備といったインフラ整備を要する大プロジェクトである。
このパターンの一連の成功事例は、「ドバイ」にあるし、それを意識したのがトランプ氏の「ガザ提案」であった。

なんと、なかなかまとまらないことで有名な「アラブ連盟(21カ国+1機構)」が、すでにトランプ案の修正案たる「エジプト案」を可決したし、アラブ連盟よりも加盟国がおおい「イスラム協力機構(57カ国)」もこの「エジプト案」の支持を表明している。

ようは、トランプ案の、ガザ住民はガザに帰れない、を「帰れる」に修正した案の有効性が強調されてはいるが、強引さだけが目立った「原案」をぶち上げたトランプ大統領からしたら、修正を前提としていただろうから、「我が意を得たり」に相違ないのである。

かつてのアラブの盟主たるエジプトをイスラム世界で漢にして手柄をもたせるためだけでなく、バブ・アル・マンデブ海峡を封鎖してスエズ運河収入が途絶え苦しむエジプトの救済に、イエメンのフーシ派を空爆させたことの一石三鳥も四鳥もあるトランプ政権2.0の効率的な「ディール」のスケジュール管理が光るのである。

これで、イスラエルばかりかサウジにもイランにも、はたまたロシアや中共も唸る、「アブラハム合意2.0=中東和平」の素地をつくったのは、まさに神業のようにみえるからである。

コンゴの要請は、こうした「実績」をみてのものなのである。

これを実務(ビジネス)目線で解説しているのが、石田和靖氏だ。
ドバイの開発は、エマールプロパティーズ(Emmaar Properties)という中東最大のデベロッパーによるものである。

ただの砂漠を、都市開発ゲーム『シムシティ』のごとくに、いまのような大都市に変えた。

また実は、エジプト政府は一極集中の限界を超えた首都カイロの郊外移転を始めており、その顧問にこのエマールプロパティーズと契約している。
したがって、ガザに関するエジプト案にエマールプロパティーズの影響があるとかんがえられる。

ここに、トランプ氏の不動産会社(トランプ・オーガナイゼーション:The Trump Organization)も関係する可能性があるし、同業者としてのトランプ大統領がこの企業をしらないはずはないのだ。

おそらく、「ウクライナ復興プロジェクト」が動きだせば、トランプ氏は大統領令を出した「アメリカ政府ソブリンファンド」の第一号案件とする可能性があるし、儲かる、となれば、アメリカ国民にも小口投資参加を促すであろう。

みんなで豊かになろう!という公約の実行なのである。
これには、ウォール街も巻き込んで、世界で「販売」する投資ファンドになるかもしれない。
するとまたまた、日本は、よくて下請けか孫請けということになって、将棋でいえば「雪隠詰め」に追い込まれているのである。

このように、コンゴの要請は、単なる希望の表明ではなくて、かなり実務を見込んでいる。

もちろん、ヨーロッパからの距離を置くアメリカの政治的立ち位置も確保されることを見込んでいるだろう。
これもまた、実行、となればトランプ政権2.0によるおなじパターンでの「参加」という、おこぼれをもらうのが日本なのであろう。

それでも、ないよりはまし、ということか?

こんどは、砂漠ではなくて緑の地獄たるジャングル開発なのであるけれど、そこにはしたたかで高度な戦略がコンゴにも、アメリカにもあるのだった。

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