スパイ防止法という踏み絵

むかしから議論はあっても、法案が通ったことがないのがいわゆる「スパイ防止法」である。

それが盛り上がってきたのは、参議院選挙でトップ得票をした北村晴男弁護士の積極姿勢が世論喚起しているためであろう。
参政党の梅村みずほ議員とタッグを組むことが、すでに双方から発信されている。

日本はスパイ天国である、というのは、定番の議論で、オピニオン誌たとえば2009年に休刊になった文藝春秋社が発行していた『諸君!』やらでは、70年代から「対ソ連」を意識してよく記事になっていたのを記憶している。

それには、1982年にアメリカ連邦下院情報特別委員会の秘密公聴会からバレた、「レフチェンコ事件」の衝撃があった。

「ほらね!みたことか!」となったわけである。

レフチェンコというのは、ソ連の悪名高き秘密警察「KGB」の少佐だった人物で、東京に駐在し、その後アメリカに亡命して上述の公聴会の証人になったのである。

当時のわが国の「仮想敵国」は、当然ながら共産ソ連で、中共の脅威は無視されていたのだった。

しかし、各国が警戒する諜報員=スパイとは、あらゆる国の人物であり、公務員でも民間人でもスパイはいくらでもいる。
そもそも公務員のスパイは、その身分を民間人にして活動するのが常套手段である。

もちろん、同盟国のアメリカだって、GHQの支配以来、日本国内で諜報活動をしているのは当然である。

こないだ公開されたケネディ暗殺の機密資料に、CIAから自民党に資金が提供されていたことがあったのがわかりやすい事実となっている。

もちろん、政治情報だけでなく経済情報も探るのが情報機関の仕事で、NASAのスペースシャトルの先端部分を東京・蒲田の町工場の職人が手作りしていたのも、そういった技術・技能を持つ職人が蒲田にいる、というCIA東京支部の経済情報からの発注だったことがわかっている。

おそらく、わが国にどんな技能の職人がどこにいるか?を、経産省のなにもしないでふんぞり返っているだけの役人よりも、CIA東京支部の方が詳しくしっているのだろう。
かれらは、取材と称してしっかり「足」でかせぐからである。

ために、法案におけるさまざまな定義が発表されていない現状で、「スパイ防止法」という題名だけで賛否の議論を呼んでいるのは、なかなかにスパイ側からのセンシティブな反応とみなされているのである。

つまり、反対者をスパイとみなす世論が法案よりも先に形成されているのは、トランプ政権2.0の影響下にあるからか?

なにしろこれすら、過去にはなかった現象だからである。

むかしは、憲法9条のごとく、法案の研究すら反対論(たとえば「言論の自由」を盾にする)で押しつぶされていた。

逆にいまは、政府がSNSに対して言論統制を仕掛ける時代になったから、かえって政府が国民をスパイすることの心配が起きている。

「ビルダーバーグ会議」の創設者、オランダのベルンハルト王配殿下(相手はユリアナ女王)の孫にあたる現ウィレム=アレクサンダー国王のマクシマ王妃が、世界経済フォーラムで「政府が管理するデジタル身分証がなければ生活できなくなる」と監視社会の到来を歓迎するように笑顔で発言をしたと話題になっている。

この元アルゼンチン女性は、南米におけるデジタル監視社会の実態から発言したと観られているが、果たしてそうなのか?
自国は、真っ向逆のオーストリア学派を代表したハイエク的自由主義ミレイ政権になっている。

ヤバイ伝統のオランダといえば、いまNATO事務総長のルッテ氏が「保守」政党を率いて首相でもあったことをおもいだす。
彼はDSの手先でしかないので、「農民一揆」で倒されたも同然の末路だったのが、首相退陣後にNATO事務総長に「昇格」するという不思議な人事が実行されたのだった。

人間を相手にするスパイだけがスパイなのか?という議論も含めて、しっかり中身を練り上げて通してもらいたいものである。

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