トランプ政権2.0の金本位制復活?

1971年8月15日(日曜日:日本時間では16日月曜日)に、アメリカのリチャード・ニクソン大統領が突如、金とドルの交換を「当面の間」停止する、と発表した。

これが、「ニクソンショック」といわれている世界経済史上の大事件となったことはあまりにも有名なはなしだ。

しかし当時のわが国経済界は、この通貨史上における歴史的大転換(ドルの信用裏付けが紙だけの価値しかなくなった)ことよりも、同時に発表だれた目先の「10%の輸入課徴金」に目がいっていたのである。

しかも、時系列を振り返れば、じつはこの3ヶ月ほど前から「兆候」はあったのだが、特に日本側の対応は完全に「寝耳に水」という状態であった。

日本大使館も、優秀なエリートのはずの日本企業の駐在員たちも、「兆候」に気づいていなかったのが、いまさらながらに「驚く」のである。
なんだか、「宣戦布告文書」の提出に遅れた理由が、館内パーティーだったことと似たヘマをしでかしている。

日本の財界が、アメリカとちがって「長期的な利益」を優先させている、といわれて自慢していたのはなんらかのプロパガンダだったのではないかと疑いたくなるほどの「歴史認識の希薄さ」がいまに続くのは、もはや「伝統」なのだろう。

果たして、本当は「わざと」だったともいえるのは、どうやら大蔵省トップの一部と日銀が市中銀行へ「対応の時間的余裕」という名のドル売りチャンスを認めたきらいがあるためだ。

とはいえ、霞ヶ関の混乱については、塩田潮の『霞ヶ関が震えた日』に詳しい。
つまり、これら少数の者たちがとった行動から推測するに、大規模な揺動作戦だったのか?ともいえるのである。

じっさいに、大統領の発表は月曜日なので、シンガポール市場から西はどこも「臨時休業」としたのに、なぜか東京は「通常通り」の取引をやって、世界からのドル売り注文に対処したのである。

東京市場を「開ける」と決めたのが、上の大蔵相と日銀のわずかな幹部たちであった。

人類は、通貨を発明・利用してからついに「金保有」を根拠にした「紙幣」を扱ってきたが、ニクソンショックによって、「ただの紙」でも、渋々ながら「ドル信任」をするしかなかった。

二回の世界大戦等を経て、ドルこそが世界に普及した決済機能がある「基軸通貨」になっていたからだ。

しかし、ここに至るには大英帝国の末路という、先行事例があった。

「世界の工場」は、必ず生産から消費大国へシフトする。

中間層の所得向上が、必然的に消費生活を謳歌するようになり、かつ、「要素価格均等化定理」が作用して安い労働力の新興国に生産で太刀打ちができなくなる。

よって、必ず「貿易赤字国」に転落する。

大英帝国 ⇒ アメリカ ⇒ 日本・(西)ドイツ ⇒ 中国 という順番になっている。

しかして、いま、ホットにアメリカと中国がなぜに対抗しているのか?を問えば、中国の日本(失敗の)研究が、あたかもアメリカが大英帝国の失敗を参考にしたように、人民元とドルの交換レートを当局が管理する方式を貫いているからだし、そもそも中国は「資本移動の(海外)自由化」を許していない「賢さ」がある。

すなわち、資本移動の自由を許したときの金本位制のもとでは、消費国の金が外国(生産国)へ流出し、おのずと自国通貨も下落する。
これを、大英帝国はすでに金融大国になっていたために容認できず、金の流出が止まらないのにポンドの下落を阻止したため、結果的に国内産業が壊滅して肝心要の中間層が没落して現在に至っているのである。

この轍を、金本位制ではないいま、日本がしっかり踏んでいて衰退がとまらない。
これにまた、「消費税」がからむから、反トランプ政権2.0の「自・公・立憲」政権では生活苦が改善される見込みはないのである。

さてそれで、アメリカ・ニクソン政権は、ドルを基軸通貨にしたままで、しかも、金とドルの分離を果たし、ドル安を容認するという「ウルトラC」をやったのである。
しかも、その後の85年には、「プラザ合意」によって、日本とドイツの通貨価値を上げてドル安を決定づけながら、「世界の工場」を中国へ移転させたのだった。

経済成長すれば、中国国内の自由化が進む、というのが、当時の「信仰」だった。

なお、このとき日本は大量の「為替介入」(ドル買い介入)やって、つまり米国債を大量購入し、当時史上空前だったレーガン減税の原資(日本的にいえば「減税の財源」)まで手当していたのである。

しかし、世界はマトリョーシカ人形のような「入れ子」状態なので、アメリカが日本やドイツから吸い取る方法を、日本は東南アジアの各国への「円借款」という方式で吸い取っている。
円安と円高の差をもって、日本はしっかり儲けているからである。

この意味で、アメリカと日本は「同じ穴のムジナ」である。

さてそれで、トランプ政権2.0は、アメリカ製造業の復興とシェール掘削解禁による原油輸出国になることを目指しているのは周知の通りである。
つまり、これは、ニクソンが「当面の間」といったことが当面の終了となって、「金本位制」の復活と「暗号通貨大国」実現への金による裏付けも意図しているのではないのか?と妄想するのである。

すると、日本が大量に保有するという「アメリカ国債」との関係はどうなるのか?になるのだが、一方的なドル安(日本の「マネー敗戦」)とはならず、むしろ、国民を蔑ろにする日本政府は、かつてルーズヴェルトがやった「国民の金保有禁止(1933年大統領令6102号)」のような強権発動をするかもしれない。

なにせ、4月1日から「食糧供給困難事態対策法」が施行されて、政府の一存で「配給制」が復活する含みがあるのである。

トランプ政権2.0が、どこまで日本政府を「敵認定」するか?が、まもなく明らかになるだろうが、その前の下準備(すでに上院で閣僚級人事承認のための公聴会がはじまっている)が忙しいのである。

就任式(日本時間な明日未明:時差14時間遅れ)まであとわずか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください