ドイツと兄弟国の日本だから

昨年10月末、ドイツで中共のスパイが逮捕され、今年9月末に禁錮4年9ヶ月の実刑判決を受けていたことが分かった。

逮捕された人物は、留学生としてドイツの大学に入り、その後、ドイツで翻訳業などを起業し、ドイツに帰化、ついにあのAfD議員(元EU議会議員)の秘書になって、AfD党内事情を本国へ渡していたのである。

しかし、以上は直接の逮捕理由ではなかった。

この人物にはドイツ人女性の愛人がいて、彼女はライプツィヒ空港のカスタマーサービスマネジャーで、旅客情報だけでなく軍用貨物の内容までを彼に提供していたのである。

このことは、ウクライナに関する西側軍事物資の支援情報を含め、ロシア側に渡っていた疑いをもって、NATO内でも大騒ぎになったという。
ただし、アメリカはドイツを完全なる監視下に置いているので、どこまでアメリカが把握していたのか?は不明である。

本件は、ドイツには「スパイに関する法律」があることをもって、日本にないことがクローズアップされているけれど、元同盟国の日本とドイツの戦後史を辿れば、両国とも似たもの同士の双生児なのだとわかるのである。

スパイに関しては、いつも兄貴分のドイツの方が先行してバレている。

「西ドイツ」を戦慄させたのは、戦後アデナウアー首相から引き継いだブラント首相の秘書がソ連のスパイだったことが発覚したときだった。
なお、この後、アデナウアーは、国内情報機関を使って政敵へのスパイ活動をしていたことも発覚している。

なんにせよ、ブラント首相の秘書官が東ドイツ=ソ連のスパイで、西側情報が筒抜けだったことは、わが国でもずいぶんと大きく報道されたものだったが、それが日本にはないのか?という派生した問題にはならなかった。

わたしがこのことをしったのは、高校生のときに購読契約していた『リーダーズダイジェスト』の記事にあったことだと記憶している。
アメリカの雑誌の日本語版にあっても、日本の一般メディアでは扱わない。
これを、高校生のときにしったのである。

なぜ敗戦国の日・独両国が、世界経済の牽引車(世界の工場)になれたのか?

この一見して、両国人の素養・素質と努力に理由を求める議論は一般的だから、余計に疑いたくなる。
日・独経済の同時的衰退を説明できないからである。

一方で、英・米というかつての世界覇権国の衰退は、もっと悲惨だ。
国内産業を追い出して、「安い国や地域への移転」を極端に進めた結果、自国の空洞化を通り越して、なにも作れなくなって、売るものがなくなってしまったのである。

アメリカは広大な農地があるから、農産物の輸入を頼りにしているが、英国はなにもなくなった。
とうとう、金融帝国の中心だった、ロンドンの「シティ」まで衰退をはじめている。

アメリカが誇る最新鋭空母のカタパルトだけをとっても、なんと戦後に完成させた「蒸気カタパルト」をもはや製造できない。
最新の「電磁カタパルト」への転換を決めて、「蒸気カタパルト」のためにあったメーカーも職人もいなくなったからである。

しかして、その電磁カタパルトが設計どおりに稼働せず、なんと要求値の15%でしか動かずに、洋上で故障の修理に精を出している始末で、しかもメーカーの専門家を呼んでくるまでに、海軍は自力での修理もできないでいる。

兆ドル単位の予算をかけたのに、艦載機の射出が思うに任せない巨大艦は、なんのために存在するのか?

横須賀に停泊の空母に、高市氏と意気揚々とやってきたトランプ大統領は、水兵の前で「電磁カタパルトを禁止して蒸気カタパルトに戻す大統領令に署名する」と宣言し、現場を盛り上げたものの、いまだ署名した形跡がないのは、それが「不可能」だからであろう。

そんなわけで、全体で沈んでいるので、沈み方の様子がわからないようにもなっているのである。

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