10日、「2025年ノーベル平和賞」の受賞者が発表された。
ベネズエラの野党指導者で、ニコラス・マドゥロ大統領の独裁に対抗する人物、マリア・コリナ・マチャド女史である。
この決定に、マドゥロ大統領は、「悪魔の魔女」だとの声明を発した。
一方で、受賞を狙っていた、トランプ大統領には、パキスタン、カンボジア、マルタといった国々からの推薦があったものの「落選」となったのである。
ここに、日本がないことは、国民として覚えておいた方がいい。
「落選会見」で、トランプ大統領は、マチャド女史からのメッセージがあったことを伝えたし、マチャド女史本人のコメント動画もネット配信されている。
そこで彼女が語ったのは、「トランプ大統領にこそふさわしい。わたしが大統領にこの賞を献げます」だった。
世界の主要メディアは、トランプ氏の落選をバカにする記事を書いているが、独裁政権と対峙するマチャド女史からのメッセージを伝えない。
フランスのマリーヌ・ル・ペン党首と同様に、マチャド女史も政権側からの選挙妨害が露骨なのである。
実際に、トランプ政権2.0は、マドゥロ大統領への圧力を軍事的にも強化しており、マチャド女史からしたら、唯一の頼みの綱がトランプ大統領なのである。
それで、政権から命を狙われているために、マチャド女史はすでにアメリカ大使館の保護下にあるとの報道もある。
すると、ノーベル委員会(「平和賞」はノルウェー政府が担当する)の決定の意味はなんなのか?という、毎度の政治的なフィルターの疑念が吹き出してくるのである。
「経済学賞」とはちがって、アルフレッド・ノーベル自身が指定したのが「平和賞」ではあるが、政治的な中立を維持することの不可能は、そのまま賞自体が「政治」になっていることの問題である。
むろん、なにも平和に貢献したとはおもえない、オバマ、が受賞して、なぜにトランプではないのか?という疑問は、あんがいと中立的な意見となる。
佐藤栄作の受賞も、日本へ独立を促し、核武装を容認した共和党ニクソン政権(キッシンジャー)への皮肉の意味がある。
だがノルウェー政府の立場は、民主党バイデン政権と共同で実行した、「ノルドストリーム2」の爆破工作実行犯としての、トランプ政権2.0に対する不都合な真実があるのではないのか?
これを、エマニュエル・トッド著『西洋の敗北』での北欧三国の軍事化の動機と共に味わうと、説得力がでてくるのである。
この意味でも、トランプ政権2.0がノーベル委員会(=ノルウェー政府)に対して、批難声明を出したことはわかりやすい。
逆に、ノルウェー政府は、トランプ政権2.0に「日和らない=グローバル全体主義の自認」という態度を貫いたのだが、まさか肩透かしとした受賞者本人が、「トランプ大統領に献げる」といいだすとは予期しなかったのだろう。
ここに、ノルウェー政府=ノーベル委員会の敗北をみるのである。