2023年11月に自由主義経済学者から初当選した、ミレイ氏の政権は、過去の社会主義を一掃する大胆さで政府のスリム化を図った。
公約通り省庁の数を半減させたばかりか、国家公務員も万人単位で解雇したのである。
それで旧政府系の批判は、消費と雇用の悪化が国家経済を窮地に追い込むといういつも通りの「予想」であった。
ところが、長年の社会主義政府の市場介入による余計なお世話的な規制を大胆に撤廃(「緩和」ではない)して、急速に自由化をし、さらにトランプ関税(「ベース関税10%」と「追加関税」の二本立てからなる)では、なんと世界唯一の「ゼロ関税(「ベース関税」もゼロ)」を勝ち取ったのである。
もちろん、トランプ政権による自由主義への支援である。
統計的にいまアルゼンチンでは、失業率が過去よりも悪化しているようにみえる。
しかし、これは日本ではピンとこないが、雇用の歴史的な拡大に伴う、就業希望者の急速な増大に対する「数字」なのである。
なんと、生活保護が手厚かったアルゼンチンでは、そもそも就業意欲すら国民になかったのだった。
これを、就任してたったの1年ほどで逆転させ、国民が仕事を求める国に変貌したのである。
つまり、生活保護で寝て暮らすよりも働いた方が確実に豊で安定した生活ができるという「当然の価値観」が回復したのである。
これがどんなに「画期的」なことか!
約100年前の20世紀初頭、アルゼンチンはGDPで世界10位内に入る先進国だった。
それが、豊かさゆえの余裕から、社会主義(福祉国家)を目指すようになって凋落したのである。
IMFから、とっくに「途上国」と認定され、いまのアルゼンチンがIMFから最大の資金提供を受ける恥ずべき状態にまでになって、ようやくにしてその厳しい取り立てがアルゼンチン国民を覚醒させたともいえる。
これは、1997年の通貨危機で、韓国がIMF管理になったことを彷彿とさせる。
まさに、英国を嚆矢として、日本もいまその福祉国家政策によって自滅しようとしている。
その英国は、極左の労働党政権になったが、たった就任1年ほどでいまの支持率は最低となり、大規模な「総選挙要求デモ」が繰り広げられている。
民放からスポンサーが消えたわが国では、頻繁に流れる公共広告機構の「食べるもののない子供の貧困」を訴える内容は心が痛むしかないけれど、目先の支援よりもはるかに重要な、国民経済の立て直しにあたっての「政府の無策」こそが原因なのであると気づく。
その無策とは、補助金の拡大という福祉政策ではなくて、政府の介入をやめるという「策」の無さをいう。
つまり、かつての常識だった「国民経済のための政策」から、「国民」が消えたのである。
50%超えをしているトランプ関税の国が、中共と極左政権のブラジルだと気づけば、同盟国なのに高い日本への関税の政治的な意図も自動的に明らかである。
すると、もしわが国に自由主義政権が誕生したら、そのボーナスとしての大幅な関税引き下げ(ゼロ関税)が実施され、日本国民に安堵を与える効果も覿面となるようにはじめからセットされているとかんがえるべきだろう。
逆に、トランプ政権2.0は、「自・公・立憲」政権を敵対する民主党と同じで、社会主義だと認定しているのである。
これは、日本人への社会主義に対する憎悪と自由主義に対する正解をすり込むための経済を用いた教育なのである。
無論、トランプ政権が主導するこの教育は、かつての民主党が支配したGHQによるものと真反対の価値観である。
ところが、愚かにも戦後の日本人は、アルゼンチン国民よりも劣化が激しく、ミレイ氏のような指導者を選択できないでいる。
その原因に、旧来の御用経済学者による社会主義礼賛があるのである。