タッカー・カールソン氏がプーチン氏にインタビューしたときに、冒頭から延々とプーチン氏が「ロシアの歴史」を語り、さしものタッカー氏をして、無駄な時間稼ぎではないのか?と疑わせたことは、インタビュー終了後にタッカー・カールソン氏自身が告白している。
しかし、そんな告白をしなければならなかったのは、プーチン教授の歴史の授業が、その後の核心である、ウクライナとの戦いの経緯についての説明に重要な意味(伏線)を持っていることがわかったからであった。
とはいえ、日本史でいう飛鳥時代から現代までを30分ほどで言い尽くすのは困難であるし、島国のわが国と違って陸続きの国家群の複雑さは、簡単に、しかも一方からの目線だけで語り尽くせるものではない。
シュペングラーが100年前に書いた大著(ざっと2000ページある)であり名著の、『西洋の没落』では、そもそも「ヨーロッパ」という概念がまちがっているので、「ヨーロッパ対ロシア=ヨーロッパのロシア恐怖症」という重い病の原因になるのだと、当のヨーロッパ人たるシュペングラーが書いている。
あくまでも、「ユーラシア大陸」である、と。
だが、この東西に及ぶ巨大大陸の、ヨーロッパから見て東の果ての離れ島にいる日本人の目線では、西の果ての離れ島にある英国まで、あまりにも遠いので、互いにその詳しい歴史をしることは困難なのである。
それでもかつて、英国の大歴史家、トインビーは、「日本文明」という区分をもって、日本人の歴史を把握していた。
しかし、われわれの方は、いまだに「ヨーロッパ文明」だとして、この狭くややこしい「大陸」をひとくくりにしてしまっていて、中身について無頓着なままなのである。
プーチン氏の「歴史」は、リトアニアにポーランドやドイツ、オーストリア=ハンガリー(帝国)、あるいはルーマニアにも及んだが、「モルドバ」には言及しなかった。
あたかも、西のアルザス=ロレーヌ(エルザス=ロートリンゲン)のように、「領地」として支配者が行ったり来たりしているのが、モルドバなのである。
残念ながら、この小国についての知識はわたしにはない。
ずいぶん前に、YouTubeで観たなにかのテレビ番組で、外国人が里帰りするにあたって、日本の「土産」で家族を驚かせる、という企画が何本かあって、モルドバ出身のモデル嬢が「シャワートイレ」を持ち帰ったのが、わたしにとってモルドバの知識のすべてである。
なお、叔父さん用には、「斧」を持ち帰り、その切れ味に驚愕した叔父さんは、「日本人は柴を効率的に集められるのでうらやましい」と言ったのが、印象的だった。
このひとの人生に、ガスや電気あるいは灯油で、調理や暖をとるという概念がなかったからである。
そんなモルドバにいつかは行ってみたいともおもったが、日本からかんたんに行ける場所ではない。
残念なことに、そのモルドバにも複雑な歴史があって、モスクワ在住20年の『ニキータ伝』さんが、ウクライナの戦線拡大(EUを取り込む大戦争)になりかねない状況を説明してくれている。
フランスのマクロン氏が、フランス軍のウクライナへの直接派遣に言及して騒ぎになったのと、もしや連動しているかもしれない。
N A T Oは「集団的安全保障」を旨としているので、フランス軍の派遣とは、フランス一国の参戦を意味するだけでなく、全N A T O加盟国の参戦をも意味するので、「おいおい」となったのである。
しかし、こんな重大なことを若いマクロンだって知らないはずがない。
知っていてぶち上げたのは、「観測気球」を上げたのであろう。
「西側」は、ウクライナのために自国の若者たちの血を流す気はまったくないことがかえってわかったのである。
しかし、今や女性が戦争仕切るヨーロッパにあって、モルドバの女性大統領が、強権的な発言で、ウクライナへの派兵を画策して、EU加盟へのご機嫌取りをやりたがっているのである。
一方で、このあたりの地図をみれば一目均衡表のごとく、もしもモルドバが隣国のウクライナに派兵でもしたら、ロシアにとって、これに対抗するにはオデッサを攻めてそこからモルドバに仕掛けるしかないという、戦線拡大の「呼び水」の役割にもなりかねない。
さては、アメリカでヌーランド氏が辞任して、後任が「後始末の専門家」、ジョン・バス氏になることがわかった。
この件についても、「ニキータ伝」さんが、ロシア側の目線とともに伝えてくれている。
なんであれ、今世紀は、女性の政治家や官僚が、火薬の匂いが大好きな「火遊び」をやっていて、外国人と不倫の火遊びをする程度の国会議員がいるユーラシア大陸のはすっこの日本は、世界情勢からかけ離れている。
その陰で、日本版のヌーランドがいまの女性外務大臣なので、このひとの「火遊び」こそが、危険極まりなく、こんな人物を持ち上げる岸田政権の「やる気と実行力」だけは、過去最強なのである。