14日、トランプ大統領は、ホワイトハウスでのルッテNATO事務総長との会談で、かねてから予告していたウクライナとの停戦について、50日以内に合意がないばあい、ロシアとその貿易相手国に二次制裁を課すと発言した、と報じられた。
ここでいう貿易とは、おもに石油・地下資源のことで、相手国とは、インドと中国のことだとわかる。
つまり、その制裁方法は、「関税」だろうから、前に打った手が効いているのである。
一方ロシアでは、これは、50日間猶予したという解釈となって、モスクワの証券市場では株価が4%も上昇する事態となった。
面前の阿呆なルッテがどう解釈したのかしらないが、演技にせよわざとにせよトランプ大統領にまんまとしてやられた、というマヌケなことになったのである。
なにせ、10日から11日に、ローマでヨーロッパ首脳があつまる「ウクライナ復興会議」をやり、また同日10日には、並行して「有志連合」の会議もやってのワシントン入りだったのだ。
つまり、ルッテはこうした準備を経てホワイトハウスに乗り込んだ、のに返り討ちにされたのだ。
ワシントンに、直接メローニ首相からの情報提供があったかどうかも不明だが、事前に相手の打つ手を検討し、最大効果の研究にホワイトハウスがあたったことは確かだろうし、例によってニュースにならなくなった米・露電話会談とかで、詳細に「せりふ回し」の検討がされていることも確かだろう。
じっさいに、ウクライナの戦況は、東部4州のロシア軍による完全占領=奪還が間近な状況で、50日という設定はおそらく完全占領完了の作戦スケジュールにあわせているのではないか?
ここで、ロシアが当初から掲げている戦争目的を確認すると、
1.ウクライナによるロシア系住民の殺戮阻止と東部独立
2.ウクライナ国内10箇所以上の「生物化学兵器研究所」の破壊あるいは、危険物質の安全な廃棄
3.ウクライナの「ナチス政権打倒」
1.については、上に書いた通りである。
2.については、ロシア軍の化学担当将官だった人物が、モスクワの自宅前でウクライナによるテロで爆死してしまったが、情報は残っている、として後任へ引き継がれた。
すると、最大の事項は3.なのである。
つまり、50日間の意味とは、ゼレンスキー政権を50日以内になんとかするよう、ロシアと協議が整った、としかかんがえようがない。
それでモスクワの株価が上がった、というのは納得できる。
さらにトランプ大統領は、ウクライナへの提供武器に条件をつけた。
ひとつは、いまや役に立たないことがわかった迎撃ミサイルシステムの「パトリオット」の提供による武器供与のアリバイづくりだ。
第二に、ロシア領深部に到達する長距離ミサイルの提供を凍結したことにある。
なお、ミサイル本体の新規提供のことなのか?というと微妙で、過去に提供して在庫があるものも、発射から目的地到達制御オペレーションを「(米軍が)やらない」となったら、ウクライナ軍人には扱えないことにも注意がいる。
そして、アメリカが提供する武器は、NATO経由で供給される、としたことにある。
つまり、「請求書」はNATOに向けて発行する、というのだ。
あれだけウクライナ支援に燃えたNATO=EUなので、これを拒否することはできない足元をみた、すごいビジネスである。
なにせ、NATO加盟国に、自前の武器製造の能力がないことが世界にしれているのである。
さらにあろうことか、ローマでの「ウクライナ支援会議」には、ネオコン=戦争屋の代表格たるアメリカ連邦上院議員が、ふたり(民主党&共和党)も参加する異例があったが、彼らは単なる武器商人のエージェントにすぎないから、トランプ大統領のもと、どんな形式であれ「売れればよい」のである。
つまり、トランプ大統領は、まるで近江商人のごとく「三方よし」を達成した。
ウクライナよし、NATO=EUよし、ネオコン=戦争屋よし。
だが、これにはロシアよし、もあるし、なにより戦傷者をなくすという意味で、ウクライナの若者やロシアの若者にも、よし、なのである。
まずい、のは、ゼレンスキー政権だけになった。
表面の発言しか理解しない、オールドメディアをあざむくために、いつまでプーチン批判が通じるかしらないが、壮大なプロレスでもあることをトランプ大統領は世界に示したのである。