武力行使(戦争)とは、外交交渉の延長にある自国の主張を通すための手段だというクラウゼヴィッツの『戦争論』における定義である。
なので、戦争には必ず、「目的」があり、その目的達成のための「目標」もある。
今回の場合も、トランプ大統領は、ふたつの「(戦争)目的」を明言している。
・イランの核開発を中止させる
・イランの(政治)体制転換
一方で、イスラエルは、
・イランの核開発を中止させる、ために、アメリカを巻きこむ
であった。
これに、いつでもなにがあってもアメリカに追従してきた英国(スターマー首相)は、
・わが国は関与しない
と明言し、トランプ政権2.0を暗に批判したうえで、英領にある基地の使用許可もダラダラと決めず(攻撃直前に許可し事実上米軍にとって使用不可同然だった)に粘り、これをみたスペインは、一歩進んでアメリカを裏切ったのだが、国家主権がない、NATO加盟国のバラバラな意思表明として事実上NATO体制が壊れていることを世界に示したのである。
これは、ウクライナ支援に関するNATO分裂(ヨーロッパとアメリカの対立)の意趣返しでもあろう。
そんなわけで、ホルムズ海峡が封鎖されたとか解除したとかの大揺れで、まずは、天然ガス価格が急上昇し、それからおもむろに原油価格上昇となっている。
ホルムズ海峡をイランに封鎖させない、ために、空母打撃群を複数送り込んでいたはずが、なんだかなぁ、になっている。
しかして、まったくこれら天然資源の価格上昇は、ロシアにとっては「慈雨」であり、やってはいけない「福祉国家建設」で財政が厳しいサウジアラビア王国にも一石二鳥の嬉しい事態になっている。
それで、あろうことかイランが湾岸諸国に無差別攻撃をするという、まったくあり得ない「戦略的なミス=わざと?」をして、とうとうサウジアラビア王国他にも、イスラエル支援の口実を与えて、「大アブラハム合意」ともなれば、驚くほどの「地ならし」効果による、あり得ないスピード感で「中東和平」が実現するやもしれぬ期待が生まれている。
すると、中東の平和を破壊した歴史的張本人たる英国の「本音」からすれば、トランプ政権2.0が進める「大アブラハム合意」とは、利権大国英国の中東利権を根本から失う「暴挙」なので、これに反対するのはスターマーが極左だからという理由ではないことがわかり、そこがまたスペインとのちがいなのである。
それにしても、アメリカに弾薬の在庫は十分にあるのか?という疑問がたつ。
なにせ、火薬の材料たる「硝石」がないわが国(自衛隊の在庫)からも火薬を取り上げたのは、これをウクライナに回したバイデン政権であった。
いみじくもトランプ政権2.0が認めるように、アメリカの工業力の衰退は、『ヒルビリー・エレジー』からぜんぜん復活していない。
なので、トランプ政権2.0のアメリカは、ウクライナへの武器供給をバイデン時代の「無償支援」から、「NATOへの販売」に転換したが、対イラン戦争による「在庫欠乏」を理由に販売中止も確実であろうから、ゼレンスキー政権の命運が尽きたも同然なのである。
そこに、カネが切れたとうそぶくEUに代わって、わが国が「盗人に追い銭」するとサッサと決めた自民党・高市政権のマヌケが目立つ。
とはいえ、カネがあってもモノがない、という現実は、どうにもこうにも対処できない。
アメリカ製の武器がロシア製とイラン製のドローンにかなわないことが証明されたのが、ウクライナにおける現実であるが、大人数(工学系留学生数でのトップ)のイラン人学生をエンジニアに育てたのが、アメリカの「アイビーリーグ」だったというのも、まったく冗談にならない馬鹿話なのだ。
おそらく、経済成長によって民主化させる、という、「理論」の何度やっても破たんする、敵に塩を送るどころではない人材育成を積極的にして、自分の側の若者(前線の兵士)を傷つけるのは自傷行為に他ならないが、自分が前線の兵士にならないと決め込んだ、文系エリートの浅はかさが笑えない冗談のような歴史をつくりだした。
いまやアメリカの現場エンジニアは枯渇して、人口が3分の1でしかないロシアが育てるエンジニア育成(供給)数にも遠く及ばないし、そのロシアも総数で中共にかなわない。
いわんやわが国をや、なのである。
戦争が「総力戦」になった人類初は、じつは「日露戦争」だったが、決定づけたのは、「第一次世界大戦」だ。
以来、100年。
その総力戦に、産業(人的)資本の枯渇著しいアメリカは、ついに、ロシアの仲介支援によってイランと停戦やらの妥結をするシナリオになっていないか?
イスラエルには、とっくに200万人以上のロシアからの移住者がいて、この国の公用語も、ヘブライ語とロシア語が共存する時代が目前なのである。
ちなみに、イスラエルの総人口は1千万人いない。
つまり、すでにロシア系で2割以上の人口構成になっている。
むろん、ウクライナの終結とセットで話が付いているのであろうが、中間選挙の11月以前に「目的」達成しないと、トランプ政権2.0がレームダックに陥る正念場でもある。
その驚きの真の目的こそが、「大アブラハム合意」だとおもわれる。

