北陸新幹線が延伸して、新大阪までとなるのは、時間の問題になりつつある。
これまでずっと、「整備新幹線」の計画がなされてこなかったのは、建設費に見合う収入が見込めない、という、経済的損得勘定があってのことだったけど、地元の「悲願」という、宗教感情がまさって、全国でどしどし「延伸」がされることになった。
むかしなら、「モラル・ハザード」だといって非難する世論があったけど、とうとうなにがあっても「無関心」が世論になったので、何が何だかわからなくなっている。
こうしたことの象徴が、もうひとつの新幹線、「中央リニア」にもなっている。
こちらは、あっちこっちで建設工事が進んでいるから、静岡県知事の「嫌がらせ」が、かえって非難の的になっている。
「知の巨人」として、文化勲章ももらった、梅棹忠夫氏の代表作、『文明の生態史観』は、古書だと1円で販売されているけれど、日本人なら人生のうちで一回は読んでおいた方がいい、名著にちがいない。
これにあやかって、『文明の海洋史観』を書いたのが、いまの静岡県知事が経済学者だったときのものである。
これを、日本人なら人生のうちで読んでおいた方がいいとはいえないのが、なかなかにこの著者を評価しにくい難しさがある。
とはいえ、静岡県のひとを嗤えないのは、わたしが神奈川県人だからで、恥ずかしい知事を選んでいることに、恥ずかしさを感じているが、わたしの一票を投じたわけではない理不尽を感じる方が強いから、困ったものなのである。
ただ、「中央リニア」がこの知事の判断で止まっていることは、なんだか嬉しいのである。
どうして、最初に開通するという、東京ー名古屋が、いまの新幹線と運賃にして700円しかちがわないのか?をかんがえると、もう我慢できなくなるほどに腹が立つ。
そのうち、飛行機よりも高くする魂胆にちがいないが、東京ー名古屋はとっくに新幹線に敗北して、航空便はない。
それに、どうしたことか、ふだんから「SDGS」とか「脱炭素」とかいっている、意識高い系のひとたちが中央リニアに反対しないのかがわからない。
車体を電磁石の力で浮かせて、なお、時速500㎞とかの速度で動かすのに、専用の大型原発2基を要する、エネルギーの「カオナシ」なのに。
つまり、東京ー大阪まで完成したら、200万キロワットをこの電車だけで消費するのである。
あまりに運用コストがかかるので、地球上でこの電車を走行させるに足る電力と、それに見合う広大な土地がないから、どこにも輸出できない。
とっくに開業した台湾新幹線は別としても、インドの新幹線もテキサス新幹線も、従来型新幹線が対象で、リニアには目もくれない実情がある。
可能性が残るのは、ロシアのシベリア鉄道だけではないのか?
だから、リニアの赤字負担は、あらゆる手段で国民から回収することになる当然があるのに、この推進を喜んで、川勝知事を悪者あつかいするのは、この一点だけだが、きわめて悪質なプロパガンダである。
要するに、火力発電とかではリニアは動かないので、SDGSとかをいうひとには喜ばしいのだろうか?むろん、太陽光発電なんてなんの役にも立たないから、原発推進という電気事業連合会の思惑通りが、リニアなのである。
元日の能登半島地震で、志賀原子力発電所(石川県志賀町)が怪しいことになっているけど、まったくニュースにもならない不思議は、報道しなければ「なかったこと」になるという、もう完全に、『進撃の巨人』における一般人のようなことにされている。
地元だけでなく、西風・北風のいまの時期、関東地方だって、放射線からの避難対象にならないのか?
まことに、不安を煽っているのに、「デマ防止」をいって、「言論統制」しようというのは、政府がSNS企業とおなじ行動をしているのに、憲法違反を指摘する者もいなくなった。
非常時だから、は通じない。
非常時だから、ちゃんとした正確・詳細情報を報道せよ、というのが本来の姿である。
世界最大の隆起をしている、南アルプス(4㎜/年、ヒマラヤは2㎜/年)を貫通させるトンネル内を自動走行することの不安もあるが、さまざまな「水脈」を切りまくっているトンネル工事の被害は、山から動物たちの水場(棲息エリア)を奪って、静岡県知事が関知しない、山梨県側に被害がでているが、財務省主計局がお里のいまの知事は、しらないことにしているようである。
そのリニアが、京都にはこないで、北陸新幹線が京都に寄る。
それで、「京都の地下を掘らないで!」という政治運動になっている。
京都は、鴨川の東側は掘っていいけど、西側の市中は発掘調査をするはめ(義務)になる。
なので、京阪電車は、鴨川の東側を走るのである。
京都市営地下鉄と阪急電車が、市中ド真ん中の地下を走ることができたのは、どんな事情だったのか?
おとなの事情だったにちがいなく、きっと出てきただろう遺跡はどうしたのだろう?と、関東の田舎ものは勘ぐるのである。
市内に高層ビルが建たないのは、アテネもおなじだ。
ぜったいに、古代遺跡が出てくるからで、出たらすぐさま工事は中止となって、発掘調査が行われ、そのまま公園にさせられる。
その割に、大型ホテルが市中にあるのは、やっぱりおとなの事情か?
そのギリシア経済は、いまは絶好調で、国家破綻のおかげでスリムになった国家機構が、効率よく動いている。
そうなると、モラル・ハザードでつくる整備新幹線とか、リニアは、あえて国家破綻させて、日本をギリシアのように立ち直らせようとする、壮大な計画なのか?
なんでも、ギリシア経済の復活は、「観光産業」に依存しているからである。
それなら、ふだんから「愛国」をいうひとたちが、静岡県知事をディするのも理解できるというものだ。
それでもって、わが国を「観光立国」させるのだという、途方もなくバカげたことを妄想しているにちがいない。
しかし、それでは、EU本部があるベルギーのブリュッセル中央駅のとなり、ブリュッセル北駅のエスカレーターが壊れたまま動かないのと同じで、「遺跡化」してしまう心配がある。
いまや歩道橋にもある、エレベーターも、そのうち遺跡化するのだろう。
部品はきっと高く売れるだろうから、だれかが外してどこかで売りさばくという商売ができるかもしれない。
個人的には、北陸新幹線は、やっぱりちゃんと、米原まで行って、そこで東海道新幹線と接続すれば、見事な循環鉄道になるのだが、ネックは東京駅となる。
鉄道事業は、人口密度に比例するので、人口密度が薄い北海道とか四国とか九州に、どうして国鉄を分割して新会社としたのか?がわからないが、最新の国勢調査の結果を受けて作った分析を、日本商工会議所の前会頭の三村明夫氏や、日本郵政社長の増田寛也氏ら有識者のグループが、岸田総理大臣に「提言」として手渡したとニュースになった。
しらないうちに、増田寛也氏が日本郵政の社長になっていたのは横にして、2100年にはおよそ6300万人と、いまの数から半減するという推計は、厚労省の発表だ。
対してこの「提言」で、目標を8000万人としたのは、「新しい日本人」を大量に外国から呼び込むからにちがいない。
4分の1が「移民一世」の国になることを目指すと言っている。
被災地よりも多額の支援をウクライナにする、わが国政府よりも、もっと過激なのが「民間」なのである。
日本人を増やすのを前提にしないなら、せめて、北陸新幹線と東海道新幹線を循環鉄道にするくらい、どうにでもなるのではないか。
もう手遅れだが、絶対黒字の「新幹線会社」をつくって、絶対赤字の鉄道路線の維持を図ればちゃんとした損得勘定ができてよかったかもしれないが、人口密度が鉄道経営の基盤なので、人口が減ることは、鉄道会社を維持できなくなることを意味する。
リニアの赤字は、従来の東海道新幹線の黒字からあてる(しかない)という、JR東海の魂胆は、木を見て森を見ずの通り、まことに浅はかなのであるけれど、すさまじく浅はかなひとたちが、「財界トップ」という、もう、ほとんどホラー映画の感がする。
そうなると、土光臨調での国鉄分割民営化の欺瞞が、いまさらながらに恨めしいのである。