言葉の定義が重要なのは、定義が曖昧なままの議論では、複雑になればなるほど、細部に至れば至るほど、何の話をしているかがわからなくなるからである。
本稿でいう「左翼」とは、社会主義・共産主義・全体主義を標榜するひとたちを一括りにしたもので、反対語にあたる「右翼」とは、自由主義者のことである。
これはハイエクの定義だ。
なぜなら、自由主義者で全体主義を求めることは、論理矛盾であるからである。
なので、面倒なのが「保守」という括りになるのである。
たとえば、左翼にあって保守するとは、「極左」のことを指すし、右翼にあって保守するといえばそれは何のことか?かなり曖昧になるのである。
それで、伝統的とか歴史的な「もの」や「こと」を保守するのが、保守主義ということになっている。
この曖昧さゆえに、前述のハイエクは、自らを「保守主義」者ではないことを表明して、あんがいと当時は物議を醸したものだが、やがて忘れられた感があるのは、世の中が「左傾化」したからだ。
仕方なくこうした三つの括りをもって、わが国の現状政治を眺めると、「日本保守党」なる諸派が、江東区の衆議院議員補欠選挙に出ていることで話題になっている。
この政党の名前をもって、そのまま「保守」という括りに入るのか?というと、わたしには決めつけることができない。
何を保守するのかを明確に定義していないからで、ただの「第二自民党」に見えるから、おそらく「左翼」に分類していいのではないか?といった匂いがするのである。
党首は、作家の百田尚樹氏と、名古屋市長の河村たかし氏のふたりで代表になっているけど、百田氏というベストセラー作家が言葉を定義しないことに、単純に違和感を覚えるのである。
政権与党の自民党と公明党、それにどうしたことか共産党も候補者を立てておらず、都知事の会派「都民ファースト」もどんな括りなのか不明なままで、どういうわけかこの副代表が「無所属」で出馬している。
ちなみに、野党の国民民主がこの無所属候補を推薦しているのだが、国民民主党という政党の立ち位置も、わたしには不明なままなのである。
そんなわけで、明らかに左翼の立憲民主党と、グローバル全体主義に明確に反対している「参政党」が唯一の右翼=自由主義を標榜していて、この二項対立だけがわかりやすいのである。
わが国には、国政政党としてこのほか、「れいわ新選組」という新左翼(共産党以外の左翼)のいわゆる中核派と、日本維新の会、N国党なる、括りの定義が困難な政党が存在している。
日本維新の会の本拠地、大阪における実態を見ると、やっぱり「左翼」に位置づけられるのであるし、N国党はワンイシューとはいえ、議員活動と党の存在がとっくに分裂していて、その分かりにくさは表現のしようがない。
こうしてみると、参政党以外はぜんぶ同類となるので、多党化しているようで案外と選択肢が少ないのである。
アメリカでは、民主党が分裂して、バイデン支持の本部と、ケネディ支持の傍流とに分かれたが、さらに極左の学生たちが、「反ユダヤ・親ハマス」を掲げて、まるでわが国の70年代を彷彿とさせる学内ピケ行動をして、なかでもコロンビア大学はとうとうロックアウトによるリモート授業になってしまった。
まさかのあり得ない「反ユダヤ」の主張に、驚いたのは民主党鉄板支持層で、ゆっくりとだが確実に、トランプ氏支持への転換が始まっているのである。
なお、こうした学生への支援団体(金銭と物資の両面)も、マトリョーシカ人形構造をとっていて、最上位団体の富豪オーナーが「反ユダヤのユダヤ人」だとわかっている。
あたかも、「反日の日本人」とおなじ構造があるのである。
そんな中、自民党の副総裁(No.2)たる、麻生太郎元首相がトランプ・タワーを訪問した。
さも、次期総理は自分だという下心満載で、「返り咲く」という共通語の意気投合をしたかのようだが、麻生内閣の次が「みぞうゆう」の政権交代で、あの民主党・鳩山由紀夫内閣となったことを、国民は忘れていない。
自民党の総裁(「首相」になれなかった総裁もいる)がこないだ国賓で訪米し、トランプ氏には目もくれなかったことの失敬に、こんどは麻生氏がバイデン氏に会わないことで当てつけたのは、岸田総裁流のバランス外交にちがいない。
あくまでも、「党」総裁は岸田氏で、麻生氏は副総裁なのだから、世界の目は、麻生氏の単独行動だとはかんがえないけど、逆神のマスコミは国民を騙すために、麻生氏の勝手な行動だと報じて、あろうことか内閣という党からしたら下部組織のしかもトンチンカンでしられる外務大臣にコメントを求めて、政府として関与しない、といわせたのである。
これをやるなら、岸田総裁に直接きくべきだし、政府を代表するなら官房長官インタビューが最適なのに、これをわざとしないで、外務大臣ごときに政府の代表意見を求めるという茶番をやたっし、シラッと応じた外務大臣は官房長官からの叱責も受けないのは、党も内閣も、組織としてメチャクチャだということをわざわざ世界にしらしめたのである。
それで、なるほどGDPでインドに抜かれたのか!と合点がいく一般人が、世界の常識となるのである。
こんな日本の対応に、お下劣なバイデン政権は、「下品だ」と評しているから、それなりの嫌がらせ効果になったのだろうが、日本総督のエマニュエル駐日大使がどんなお仕置きを自民党や麻生氏にするのかも、今後の注目なのである。
なんにせよ、自分だけが理論的に正しい、と決め込む神経だけは共有している左翼のひとたちは、懲りずに今日も分裂を繰り返すのである。
すると、組織マネジメントに取り返しのない失敗をした参政党・神谷氏の独り左翼行動で失った人材と信頼が、まことに残念至極のことになったのである。
吉野敏明氏、武田邦彦氏、赤尾由美女史の方々には、松田氏と共に神谷一派の組織マネジメントからの一掃ができなかった「小さなこと」こそ、将来のわが国の痛恨となってしまった。
いいひとたちは、ここ一番で「鬼神」になれなかったのである。
それでも、幸福実現党を離党(「幸福の科学」の信仰はやめていない)した、及川幸久氏や、元TBS記者の山口敬之氏が、参政党を一択で支持表明するのは、酸いも甘いも噛み分けて、「自由主義」を護ることを最優先させているのだと信じたい。