学校対抗の意味

ずいぶん前に、「愛校精神がない国」として、ポーランドの事情を書いた。

社会主義が徹底されて、大学はぜんぶが国立となって、私立を認めなかった。
入学には、わが国の、「大検」のような、全国一律の試験があって、その合格者なら、どこの大学にも進学できた。

それだけでなく、教授陣の配置も、「まんべんなく」したので、高校生はどの大学の何教授に教わりたい、ということが、自宅に近いことと二分する学校選択のポイントになったのである。

ただし、入学後に気がつけば、すきに学校を変えることもできるのは、取得単位が全国共通であるからだ。

また、ポーランド国立大学の特徴に、学費が無料、ということもある。

しかし、ただほど高いものはない、の諺通り、学生は勉学が本業なので、履修届を出した講座を一つでも落第すると、たちまち「退学=放校」処分となるのである。
だから、「留年」という概念もない。

その試練は、入学してすぐの期末試験からはじまって、教授連は「学生の将来のために」という親心から、なるべく早く「落第」の結論を出して、専門職への転向を促すという。

人生における若い時期の貴重な時間を、ムダな勉強に費やすのは本人のためにはならないから、という共通認識のようである。

そんなわけで、ポーランドでは、大学卒業は「国家資格」であって、どの学校を卒業したのか?ということはぜんぜん意識されない。
ために、学内のスポーツクラブにおける、大学対抗試合も、あまり盛り上がらないという。

これは、社会主義体制から自由主義に転換されても、国立大学卒=国家資格の制度に変更がなかったからだ。
ために、いまだにポーランドには、私立大学は存在しない。

首都にあるワルシャワ大学を、「ポーランドの東大」と紹介して、変な権威づけをするのがわが国のマスコミの悪いところで、まったく現地事情を無視している紹介の仕方である。

あえて「東大」を引き合いに出すなら、ポーランドの大学は全部が「東大」なのである。

地名があるのは、「校舎名」として、「駒場東大」とかとおなじだ。
だが、留年はできない。

こうしてかんがえてみると、高校の無償化とか大学の無償化が叫ばれるのは、日本もポーランド化するのか?という問題提起に見えるのである。

もちろん、かつてポーランド人たちは、共産主義教育を強制されたから、『共産党宣言』に教育の無償化があるのを知っているはずなのに、自由主義になってもこれを継続している不思議がある。

とはいえ、大卒の若者が、国内ではなく外国へ渡ってしまうか、よしんば国内に留まっても外国企業に就職する実態ばかりとなったので、ポーランド人も大学の無償状態にようやく「おかしい」と思いはじめたようではある。

一方で、日本人の大半は、まともに『共産党宣言』を読んでもいないし、興味もないから、「ただになる」ことを単に歓ぶ乞食と、ただほど高いものはないと警戒するひととに別れて、なお、子供がいないひとには、どうしてそんなことに自分が払った税金が使われるのだ?というひとが混じるのである。

私学助成金を最後まで受け取らなかった慶應義塾が陥落して久しくなったら、事実上、わが国の大学はぜんぶ国営化されたも同然なのだ。
しかし、これを誤魔化すのに、「国立大学」を、「国立大学法人法」なるへんてこりんで、運営予算を大幅カットする挙に出たのが、文部科学省という腐った組織である。

つまり、国立だろうが私学だろうが、困窮化経営にさせて、とにかく全部の大学を、カネで牛耳ろうという利権構造を完成させた。

ここには、若者の人生をどうするのか?の親心は微塵もなく、中高年の役人天国を構築したから、見事に公金チューチューする、吸血鬼たちなのである。

そんなわけで、学校対抗の主にスポーツは、オリンピック選手とおなじで、吸血鬼たちの娯楽に貢献する、哀れな奴隷が頑張る姿なのである。
ローマのコロッセオで、腹を空かしたライオンと素手の奴隷を闘わせたごとくの野蛮が、テレビ中継されている。

そんな日本は、ポーランドに一周遅れで、外国か外国企業しか就職先がなくなるのに、無償化というのは、やっぱり誰のためかを忘れたためなので、哀れも何もない、ただただ外国企業が歓ぶ愚策なのである。

さては、「学校対抗」は、全部が「私学」になっての「華」だといえる。

もちろん、私学助成金は必要ないので廃止して、ついでに文部科学省なるムダも排除する。

すると、学費をどうするのか?が問題になるけれど、学校におカネを入れるのではなくて、家庭におカネ(教育クーポン券)を渡して学費負担を軽減させればいいのである。
単価×数量が、すべての売上の計算式だから、学校経営は数量(生徒や学生数)をどうするのか?に集中させると、特徴ある教育方針・教育内容・教育品質がなければ集まらない。

これが、秘訣なのである。

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