11月の選挙で当選が決まるのに時間がかかるのが広大なアメリカだ。
それでも、2024年の選挙はスムーズであった。
前回のトランプ政権1.0が終了して、フロリダの邸宅を第二ホワイトハウスに見立てたトランプ氏は、その財力も動員して自費でスタッフを雇用し、第二次政権の準備に勤しんできた。
かつて、「政権移行チーム」が、「当選後」に発足してきたのは、その費用が「国費」となるからでもあるが、トランプ氏は「国費に依存しない」初の富豪政治家なのである。
なんだか、筒井康隆の『富豪刑事』のようだ。
なにも人造国家のアメリカがすべて良いとはおもっていないが、だからといって日本の国家運営の仕組みが上出来だともいえない。
戦後の体制を構築したひとり、東大法学部教授の宮沢俊義がいまや司法試験でも定説扱いとなっている『八月革命説』を唱え、ソ連化推進の理論的支えになっているからである。
この意味で、トランプのいう『コモンセンス革命』に対応するには、日本において『反・八月革命説』を採用しないといけないのだが、そんな気概のある学者も政治家も絶えた。
アンチ宮沢俊義は、学閥・学会を通じて完全に排除する政治活動が実施されてきたからである。
宮沢がやった「軸の歪み」を生身で証言・証明したのが、片山さつき氏の「X」投稿だった。
トランプ政権1.0は、いまでは「人事で失敗した」というのが定説である。
経済人であったトランプ氏は、ワシントンの沼に棲息する人々のネットワークについて無知だったがゆえに、政権内にタップリとネオコン(=DS)を引き込んでしまっていたからだ。
その筆頭が、退任後に自分から告白して正体が判明した、マイク・ポンペオ国務長官だったから、世界が驚いたのである。
にもかかわらず、日本製鉄がUSスチールの買収にあたって、そのポンペオ氏を顧問として採用したのは、政治音痴も甚だしいが、これぞ「霞ヶ関の沼」をしらぬ役員陣のレベルがしれる重大事なのに椿事であったゆえんである。
さて、経営者として、いったん破産の憂き目も経験したトランプ氏だから、二度と同じ轍は踏まない。
それが、私邸における「用意周到」の準備であった。
就任初日、「大統領令」としては、42本、指示・命令に関しては200以上が発令されたという。
当然に、優先順位トップ順になっているが、事前準備がいかに大変かは、すこしでも実務にかかわった社会人なら容易に想像できよう。
もちろん、連日発表されるだろうから、これで終わりではない。
また、大統領令が発令されたからといって、全部が通るものではない。
反対の者には、「提訴」という手段がある。
実際に、何件かがすでに提訴されたというから、こちらも事前予告に対しての準備をしていたのだろう。
国内向け、国際的と分類すれば、当然に国内向けが優先順位で上になる。
バイデンが末期でやった「恩赦」にからめて、1月6日事件で収監された人々約1500人の恩赦(即時釈放)もある。
だがしかし、この釈放命令に対して無視を決めた刑務所には、22日、連邦保安官が突撃する予定だというから、「逆・バスティーユ」状態になっているのである。
こんな状況も、日本ではかんがえにくいが、あんがいと「あり」だろう。
人間は、感情がある動物だからである。
その感情を棄てて、完全に組織の歯車に徹する「凡人」こそが、命令に忠実なロボットと化す。
これを、ハンナ・アーレントは、『エルサレムのアイヒマン』で暴いた。
さて、国内向けから優先順位は下になるが、わが国に影響があるのは、WHOとパリ協定からの脱退であろう。
手続上、WHO脱退には1年を要する。
一方、「パリ協定からの脱退」というのは不正確で、正しくは「パリ協定も含めたすべての気候変動関連からの離脱」であって、これを総じて「気候変動詐欺」と呼んでいるのである。
なお、アメリカの大企業もトランプが「いいだしそう」ということにかこつけて、すでに気候変動詐欺からも離脱をすすめている。
本音では割高なゆえにイヤイヤつき合ってきたが、「コスト削減」という当然が理由だ。
このほかに目立たないが、「OECD世界税協定からの離脱」もある。
これは、日本でいう「消費税」やEUの「付加価値税」にも関係する問題であるから、日本国内マスコミは破壊力がおおきすぎるので報道しない可能性がある。
つまり、「関税」に目を向けさせて、「消費税」を隠すのである。
内外問わず基本的なことでは、「性別」を「男女だけ」とした。
日本総督エマニュエルがゴリ押しした「LGBT法」をどうするのか?次期総督からのご指示を待つのか?
これに、「DEI」も廃止したけれど、気候変動詐欺同様に、アメリカの大企業はすでに取り止めている。
日本経団連がいう、女性管理職やらの「目標数」も、撤廃となるのか?
ようは、国連が推す「SDGs」の終わりなのだ。
就任式招待組では、Metaのザッカーバーグ、Amazonのベゾス、Googleのスンダー・ピチャイやAppleのティム・クックも参列していたのが目立った。
それで、「政府による言論統制禁止」の大統領令を出しつつも、これまでの統制実態の調査も命じ、その対策提案立案も促したのである。
バイデン最後の日に禁止されたTikTokも、期限付き延長とされた。
これで、GoogleとYouTubeの言論統制がいつ解除になるかが注目されるまでになった。
日本政府が「X」を規制しようというのは、もはや周回遅れどころではないナンセンスなのである。
しかも、トランプ政権2.0では、大統領令と連動して連邦議会が法案づくりを開始している。
さらに、高級官僚(SES)の身分を変更し、「終身」ではあるが政権に従わない者は解任できるようにしたことは、日本の官僚制についてのインパクトも生じよう。
ただし、連邦政府職員組合が提訴したというから、労組としてどうなっているのか?
SESは、新規採用時から「古典的猟官制の管理職を管理する職」なのである。
ちなみに、こないだ亡くなって国葬となった、ジミー・カーターによってできたのがSESであるから、生前に絶望しないで済んだのは幸いだったかもしれない。
SES発足のそもそもが、日本の官僚制の強化版であることに注意がいるし、これをまた発展強化させたのがEU委員会なのである。
さて、問題は、アメリカの大企業が「乗ってきた」ことによる影響力なのだ。
株式の支配権を通じて、あるいは商取引を通じて、日本企業は「ちゃぶ台返し」を受けているからである。
だから、どうする日本政府?もあるけれど、どうする経団連?になっている。
そこで、次の注目は、23日にオンラインで参加するトランプ氏の「ダボス会議年次総会演説」なのである。
就任式で歴代大統領の目前でやったように、邪悪の権化、生きているクラウス・シュワブの目の前で、どんなちゃぶ台返しを喰らわすのか?
プーチンがやった「ざまぁ」よりもはるかに痛快にちがいないから、楽しみにしているのである。