悪政競争

善・悪の定義について、日本人は儒学からの影響を強く受けてきた。

そのエッセンスのひとつである、「経世済民」(世をおさめ、民をすくう)というかんがえが貨幣の流通が浸透した江戸期に流行って、それから「経済」になったのである。

このベースに、幕府が推奨する「朱子学」があった。

もちろん、幕藩体制の維持に都合がよいことに推奨の第一の理由はあったろうが、上からの影響を庶民が無視できるはずもなく、日本社会の「道徳」としての素地ができたことはまちがいない。

それで、幕末や明治のはじめに来日した欧米人を驚嘆させる、「文明人としての日本人」がおおくのエピソードとともに紹介されたのである。
イザベラ・バード『日本紀行』や、シュリーマン『旅行記 清国・日本』が有名どころである。

こうした日本礼賛本を、学校教育では習わないので、戦後のおおくの日本人はしらないままに成人し、物故している。

なぜに教えないのかといえば、GHQが定めたWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)が、相変わらず効いているからである。
つまり、日本人は日本政府による反日教育にサラされている。

文化大革命の嵐では、すさまじい「孔子批判」が巻き起こった。

それで、儒学をふくむ伝統文化破壊こそがただしい革命的態度ということになって、いまでも少しは「漢詩」を暗記させられる日本の高校生とはちがって、ぜんぜん読めないことになったのである。

もちろん、物的な歴史遺物も破壊の対象になった。
このなかに、「漢字」もあって、「簡略字」が記号となって久しいので、台湾で採用され続けている「旧漢字=繁体」をみてもわからないようになっている。

逆に、韓国では「漢字廃止」をやって文体のぜんぶをハングル表記にしたので、漢語由来の同音異義語の区別がつかず、漢字を残している「北」と、論理的な思考での応酬に太刀打ちできないようになった。

こうして、むかしは「善政競争」を促しながらも、それでも最後には滅亡することを繰り返してきたが、いまでは「悪政競争」をもって選挙で勝とうとする倒錯が蔓延している。

むかし、カレル・ヴァン・ウォルフレン著『民は愚かに保て』という本があったけれど、これはなにもわが国のことだけを指すのではなくて、西側社会全体にいえる「論」になったことが注目される。

すると、「愚民化」政策という悪政が、いまや世界共通のスタンダードに見えるのは、前に書いたように『共産党宣言』にある政策を忠実に実行した成果だといえるのである。
つまり、ここから抜け出すには、共産主義からの離脱がひつようであるから、「毒抜き」としての『裸の共産主義者』ぐらいは読んでおこう!ということの主張に変化はない。

19日、参議院東京選挙区から、参政党公認でシンガー&キャスターの「さや」氏が立候補表明したときに、彼女が口にした「政治に無関心でいられても、無関係ではいられない」は、悪政競争からの離脱宣言であった。

けれども、悪政競争をうながすメディアは、無視を決め込むのである。

これはこれで、世界潮流なのではあるが、19日、アメリカではトランプ氏が200億ドルの損害賠償と、放送免許剥奪を訴えていた、CBSテレビのCEOが辞任したことを、20日付けブルームバーグが伝えている。

トランプ氏の訴えは、昨年の大統領選挙期間中に同局が放送した『60Minutes』に出演したカマラ・ハリス候補へのインタビュー内容が、「捏造=選挙介入した」というもので、放送免許剥奪ともなれば親会社=株主の利益が失われるとした、パラマウント・グローバルからの圧力だという。

この件では、すでに4月22日に同番組担当のエグゼクティブ・プロデューサーが辞任しているが、「捏造の証拠」がハッキリしたために、経営陣へ責任問題が波及したのであろう。

なんにせよ、アメリカ人の内共和党支持者は、テレビ報道を信じないと答える者が9割というありさまで、すでにテレビの報道番組は「エンタメ以下」の位置付けにある。
なので、まともな人物は、コメンテーターとして発言することもキャリア上の「リスク」になっているから、出演拒否することが「一流の証」になっている。

日本では、研究費というカネに目がくらんだ「一流大学」の教授職の肩書きをもつ人物たちが、クズな解説を垂れ流しても責任問題にすらならないのは、高校生が志望大学をきめる根拠が「偏差値」だけになって、どんな学問を誰から学びたいとかんがえるのか?が完全欠如しているための「安全地帯」が形成されているからである。

しかし、時差はあっても確実に、アメリカの影響を受けるのが日本という環境なので、これら教授たちの末路もまた、将来の楽しみ(=エンタメ)になっている。

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