ダラダラ続く、新政権人事承認(トランプ政権1.0では候補全員の承認に2年かかった)で、4日、連邦上院軍事委員会の公聴会で、国防総省ナンバー3の政策担当次官候補、エルブリッジ・コルビー(Elbridge Colby)氏への質問が注目されている。
アメリカの省庁は、長官、副長官、次官(筆頭が政策担当)の序列になっている。
なお、コルビー氏の著作で有名なのはベストセラーになった、『拒否戦略』(日系BP、2023年)や、『アジア・ファースト』(文春新書、2024年)があり、本人は、6歳から13歳まで東京で暮らした経験がある、いま45歳の人物である。
この公聴会の様子を、YouTubeで長谷川幸洋氏が解説している。
質問者は、与党共和党の議員であるが、その内容は「インド太平洋地域の安全にヘッジング(Hedging)するような国の存在についての所見」であった。
ここでいう、「ヘッジング」とは、国際政治用語としてのものである。
長谷川氏も指摘しているが、こうした専門用語を用いる質問が飛び交うのも、アメリカの国会の特徴で、議員も学位(修士、博士)があるし、返答する側にも学位があるふつうがある。
たとえば、トランプ政権1.0で国務長官を務めた、マイク・ポンペオ氏は、主席士官学校時に取得した工学と、軍を退役して取得した法学のふたつの博士号を持っている。
さて、その「ヘッジング」とは、日和見主義のことで、同盟相手を天秤にかける態度をさす。
コルビー氏は歯に衣着せずにあっさりと、具体例に日本と台湾を挙げた。
日本の政権が、親中であることを見抜いているし、そのためにアメリカはどうするのか?をかんがえている、ということだ。
この答弁を、日本側はどこまで承知しているのか?
ワシントンの日本大使館しかり、報道機関の特派員しかり。
特に、日本大使館から東京の外務省本省にどのような報告がなされているのか?が気になるが、発言の場所が議会の公聴会なので、なにもデスクに座ったままネットから議事録をみることもできる。
さて、マスコミは例によって、防衛費の増額要求として「GDPの3%」という数字に固執しているが、わが国の衰退からすればかつての「GDP1%」ということも、インフレと金額ベースに換算したら、慌てるようなものではない。
むしろ、わが国の置かれている周辺環境の激変こそが問題なのである。
これを法律用語としては、「事情変更の原則」があり、いまや問題なのは、日本政府(「自・公・立憲共産」政権)が、こうした事情が変わってしまったことを認めるか認めないか?という、政治的認知の問題になっていることなのである。
それなのに、悪い意味でのアメリカ依存と「有職故実=前例優先」による官僚主義が行きすぎて、とうとう国家戦略さえも自分で構築することができなくなっている。
これを、「保守主義」というのかどうか?
ずいぶん前に、「保守は危険思想になる」というテーマで書いた。
改めて加筆すれば、わが国の「保守」が歪んだのは、「五箇条の御誓文」を起源とする、ヨーロッパ近代の全面的な受入をもってしたことだ、とまた、長谷川幸洋氏が指摘していることに同感する。
あたかも、明治政府がずっと続いてきた「旧暦=太陰太陽暦」をあっさりと捨てて、「新暦=太陽暦」を全面採用したり、戦後の日本政府が、「尺貫法」を放棄して「メートル法」を強制したのと似ている。
つまり、時間単位を引き伸ばすと、ぜんぜん「保守ではない」のが、お上が幕府から政府になってからのわが国なのである。
京都人的な「いけず」な言葉遣いが得意のトランプ氏だが、彼のいう言葉に嘘はない。
たとえば、パナマ運河にしてももう片がついたし、グリーンランドについてもなんとかするだろう。
パナマ運河通行のための順番待ちをするための「港湾運営」を、トランプ政権2.0は、早くも、中共から取り上げてブラックロックへと引き渡すビッグデールを実行した。
なんとなれば、それがアメリカの国益であり、自由陣営にとっての最善だからである。
すると、ウクライナの農地の半分以上を取得・管理しているブラックロックは、戦後も継続することが決まった、という意味にもなる。
ここで、ぶらっくという会社は、巨大だが、「資産管理会社」であることに注意がいる。
つまり、彼らには管理依頼者=投資家があっての「管理者」であるということだ。
だから彼らの意思決定は、預かり資産の効率的運用であって、資産そのものを自分で投資・取得するという積極的意思は持たないという特徴がある。
トランプ氏は、もちろんプーチンのロシアを「敵」だとして口ではいっているが、本音はそうではなく、グリーンランドを得ることで、北極海の米・露協力での平和利用が構想にあるはずだ。
すると、日本ファーストという視点に立てば、あるいは「道義国家」だと本気で世界にいうなら、日本が台湾を領有するという戦略もあっていいし、大懸案のパラオだって領有すべきなのである。
あるいは、フィリピンやらの東南アジアもどうするのか?
究極的に、「大東亜共栄圏」となるのは、わが国が海洋国家としての固めができてからの大陸という順番になるはずで、先に大陸に手を出した失敗の繰り返しではない。
ただし、プーチン後のロシアがどうなるのか?とか、トランプ政権2.0による中共の解体策の結果はまだわからない。
なんにせよ、アメリカはもはや一国で太平洋すらままにならないほどに衰退したのである。
つまり、トランプ政権2.0にとっての「日米同盟」とは、これまでの上・下関係でなく、左・右の水平関係になる。
この大変化に、わが国はついていかないといけないことにある。
ようは、アメリカは日和見主義を許さない、ことだけははっきりしている。
しかしながら、「自・公・立憲」政権ではこれに対応できないから、わが国も政権交代が必至なのである。
それがどんな政党なのか?をアメリカが急いで吟味しているというメッセージが、コルビー氏の答弁なのである。
この意味でも、ジャパン・ラストという順番は、言行一致しているのがトランプ政権2.0なのである。