1979年の映画『チャンス:オリジナルタイトルは、Being There』は、奇しくも主演した名優、ピーター・セラーズの遺作になってしまった。
わたしはこの映画をいつどこで観たかをすっかり失念しているけれど、その破天荒なストーリーと深い演出で、それなりに記憶している。
あらすじをこれ以上ないように大雑把にいえば、庭師で知的障害がある主人公のチャンスが、日本のむかしばなし「わらしべ長者(『今昔物語』『宇治拾遺物語』)」に似た展開で、最後に自分の意志とは関係なく大統領候補にされる、というファンタジー・コメディだとおもっていた。
しかし、約半世紀のあとのいま、まったくもってこの映画のような、すなわち「ファンタジー」でもなんでもなくて、どこも「コメディ」だと嗤えない、ただひたすら現実になっていることが信じられないほどひどいのである。
それが、バイデン撤退とカマラ・ハリスの候補者選定の流れに観る、むちゃくちゃだ。
まずはじめのおかしなことは、「大統領免責特権」があるアメリカ(韓国にはこれがない)で、現職大統領だったトランプ氏の「機密ファイル持ち出し問題」が、連邦特別検察官によって事件化され起訴に至ったのである。
先月はじめ、連邦最高裁は、「大統領免責特権」についての画期的解釈を示す判決を出して、トランプ氏の事件は自動的になくなったとみられている。
なお、この余波で、起訴した連邦特別検察官の任命が違法だという指摘もされて、任命した司法長官の責任問題にもなっている。
これに先立ち、オバマ政権の副大統領だったバイデンにも、機密文書持ち出し問題が発覚したが、トランプ氏とは別の連邦特別検察官はバイデン自身から直接に調書(録音も)をとっていたが、なんと大統領免責特権がない副大統領にもかかわらず「不起訴」となった。
理由は、高齢による記憶力の減衰が認められ、この可哀想な老人を起訴したところで陪審員全員から有罪の評決を得ることは困難だ、という勝手な憶測によるものだった。
しかも、「録音」は、司法省によって一切公開を拒否されていて、どの程度の「記憶力の減衰」なのかをアメリカ国民に知らせようとしていない。
この不起訴処分の前段の理由だけで、現職大統領としての職務遂行能力が疑われるのは当然だ。
けれども、アメリカ民主党という全体主義政党は、この段階に至ってもバイデンを引き続き次期大統領候補にすべく、州の伝統的な予備選挙日程やら予備選挙投票結果の無効をいいだすなどの強権で、「圧倒的支持」としてきたのである。
もちろん、有力対抗馬のロバート・ケネディ・Jrに関しては、あらゆる方法で「排除」を決めて、とうとう民主党といえばケネディ家というほどの血統をも、無所属に追いやることに成功し、なお、各州からの候補者資格を得られないような妨害活動もやっている。
ところが、これも本来は民主党が仕込んだ、やたらと早期の「テレビ討論会」(民主・共和料とも全国大会の前=正式に大統領候補に指名されていない状態)での、バイデンの決定的な呆け症状の発露によって、「バイデン降ろし」に火がついたのである。
どうやらこの討論会を主導したのは、腹黒さで当代随一のオバマだったことが判明した。
しかして、オバマが糸を引くなかでの、「選挙撤退」となったのだが、さすれば数千万人が投票した「予備選挙」はなんだったのか?
こうして、いつの間にかカマラ・ハリスがあたかも正規の候補者になったのは、アメリカの選挙法における選挙資金が目当てなのである。
「バイデン」の名で集めた資金を合法的に委譲できるのは、現職の副大統領だけだからである。
アメリカ大統領選挙は、大統領と副大統領、二人の候補がセットになって闘うものだから、前回の選挙が生きていて、選挙法上もこうした扱いになっている。
意図せざる結果として、こうやって、密室で候補者が決まることを全世界にみせてしまった
3日のわが国での報道では、「カマラ・ハリスが正式に大統領候補に決まった」とあるが、民主党全国大会は19日から22日を予定しているから、あくまでも現段階では「事実上」と書かないとルールが不明瞭になる。
こうした「既定」を勝手にマスコミがしたら、全国大会の意義はなにか?になる。
ちなみに、紅麹問題でゆれるように見せかけている小林製薬の役員人事についても、NHKは、小林製薬広報が否定コメントをだしているのに、具体的な「人事」を報道したのは、もはや「誤報」のレベルではなく、ただのインチキである。
まったく、共産党とおなじことをやっているのは、マスコミも同罪なのである。
なぜにバイデン降ろしに本人が同意したかといえば、
・修正憲法の規定から、大統領職を失職させる脅し(不起訴が証拠)というムチ
・次男のハンターをはじめとするバイデン一族による汚職の見逃しというアメ
こんなことも、世界に知らしめた。
ちなみに、バイデンを不起訴にした連邦特別検察官は、不起訴理由の記者会見の直後に辞任し、さっさと逃げだして命の危険からも回避する賢明さを発揮した。
それに加えて、トランプ氏暗殺未遂事件については、共和党連邦下院議員が独自の捜査を開始すると発表している。
とにかく、要人警護の専門部署たるシークレットサービス自体が、民主党によって汚染されているし、捜査を担当するFBIも同様なのだ。
シークレットサービスといえばむかしは、財務省の管轄で、本来業務は偽札捜査だったけれども、「9.11」以降にできた、国土安全保障省の傘下に移行したのである。
ようは、RINO(軍産複合体)のブッシュ(息子)政権時に設立させて、いまでは国防総省と退役軍人省につぐ巨大官庁になっているのが国土安全保障省なのである。
「火事場太り」のごとくまことにみにくい、「パーキンソンの法則」がそのままにあらわれているのである。
こんな状態のアメリカを、冷静にみれば、どこにも「民主主義」はないのだが、これこそが「民主主義」だといいはるアメリカ民主党の腐敗は、もはやジョークの領域にあるけれど、実体は、『ジョーカー』(2019年)のように恐ろしいのである。
全米からはじまって西側世界が、「ゴッサムシティ化」しているのだ。