睡眠の謎

何のために眠るのか?と質問されたらば、脳や身体を休めて、リフレッシュするためとこたえるのがふつうだろう。

ところが、近年の研究で、意外な「眠りの謎」が明らかになって、はたして何のために眠るのか?の謎は深まるばかりなのである。

人間のばあい、だいたい8時間の睡眠時間をとっている、とはむかしからいわれている。

一日の3分の1、もっといえば人生の3分の1は、眠っているのである。
これがまた、寝具メーカーの宣伝文句になっている。
どんな敷蒲団がいいのか?どんな枕がいいのか?毛布は?掛け布団は?シーツは?

西洋だと、藁(むぎわら)のベッド。
日本だと、筵(むしろ)や茣蓙(ござ)から畳(たたみ)が生まれた。
「たためる」から「畳」なのだという。
板の間しかなかった時代に、こうしたものを敷いて眠ったので、ずいぶんと固かっただろう。

「枕を高くして寝る」というのも、「髷((まげ)」に絡めている言葉である。
富裕層がその富を示すためにしっかり結った日本髪に特有の「髷」が崩れないようにするのが「枕」の優先機能だったので、はたしてそれで「安眠」できたのか?
現代人なら頸が痛くなったのではないか?

当時のひとだって骨格は現代人とおなじだから、ふつうに慢性の肩こりになっていたそうで、見栄のため、とはいえ、「もののあはれ」を感じるのである。
美人画の物憂げな風情は、肩こりと睡眠不足からなのか?

「散切り頭を叩いてみれば 文明開化の音がする」という歌のあたらしさは、髷を気にせずに枕を低くしたら、なんだか寝起きがスッキリした感があるように聞こえる。

旅に出たときに「枕があわない」のでよく眠れないということがいわれていた。

もしや、むかしの宿は、「髷用」の陶器枕やら、最新の洋髪用そば殻枕やらが施設によって混在していたのか?と想像した。
わたしの祖父は、籐で編んだ枕を愛用していた。
タオルではなくて、日本手ぬぐいを畳んで置いてクッションにしていた。

一泊ずつの旅先ごとに、かくほど枕が変わったら、たしかに熟睡はできないだろう。

若いときには気づかないが、齢を重ねた昨今は、現代の宿における寝具が気にくわないことが多々あって、いまでは自動車に「旅先用枕」を積んだままでいる。

20年前に「オーダー」した枕のメンテナンスで、ほころびがみつかって新たにオーダーした折に、もったいないので古い方を廃棄せずに、「旅用」としたまでのことである。
それが、たいへん重宝しているのは、やっぱり「枕があう」からである。
何種類か材質や大きさを選べる宿もあるが、寝てみないとわからないのが、枕というものだ。

とある宿では、ベッドの「へたり」がひどくて、床に寝たこともある。
なんのために宿泊料を払ったのかわからない宿は、いまでもある、というのも困ったものだ。
雨露がしのげるだけで有り難いと思えということか?

ときに、すべての生物が睡眠していることがわかった。

動物しかり、昆虫しかり、なんと「脳がない」原生生物も眠っている。
「怪談」の枕には、「草木も眠る丑三つ時」という常用句があるが、なんと「草木」も眠っていることがわかっている。

これらの事実から、ひとつの仮説が提唱されて、それがまた「謎」を生んだのである。

生命体の「通常」が、「睡眠」時であって、たまに「覚醒」して意識がある時とは、じつは「異常」なのではないか?
こんなことをかんがえついたのも「異常」な覚醒時だろうから、なんだか不思議なのである。

それにしても、眠れない、という悩みは深い不安を引き出して、ついうっかり「睡眠導入剤」なる薬に手を出すと、こんどは「認知症」の発症を促してしまうかもしれないという。
かんがえようによっては、認知症とは半分眠っているようなものだとすれば、「通常状態」に薬物の効果で近づいているのだともいえる。

そうやって、ついに「永眠する」ことになるのである。

眠るということが、生きるということと、死ぬることとに直結しているのだ。
これが、量子論でいう「現実とは幻の世界」なのだすれば、やはり「覚醒時」という異常は、ほんとうは夢の中で、睡眠時にみる「夢」こそが「現実の世界」なのかもしれない。

夢と現実が相対化する時代になった。

それにしても、旅先の寝具はなんとかならないものか?

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