日本の常識は、世界の非常識といわれて久しい。
いい意味でいえば、「日本人の優秀性」という自画自賛となる。
それはたとえば、世界に冠たる「理想的官僚制」の構築に成功したからだ、ともかんがえられてきたことでもわかるし、日本国民も、超難関校(たとえば「東大」)に入学して官僚になった人物こそが、超エリートなのだと信じてきたからである。
しかし、有名なアクトン卿の言葉、「権力は腐敗する、絶対権力は絶対に腐敗する」にあるように、わが国の官僚も、この言葉どおりに腐敗してしまった。
ただ、日本が絶好調だった70年代まで、政治家もそれなりの人物がまだいたために、官僚のコントロールをしていた、はずだったかに見えた。
それで、真似っこしたのがカーター政権のアメリカで実現した「SES」だったとは前に書いた。
ついでに、EUの「制度設計」思想も日本の官僚制を強化して採用したアメリカに倣ったもので、これらはさっさと腐敗していまがある。
逆に、わが国の官僚は、ようやくにして一般国民にも腐敗臭を晒すようになったけど、明治新政府成立時点より腐敗はとっくにはじまっていた。
小池百合子東京都知事(それ以前は、防衛大臣やら環境大臣も歴任した)の、学歴詐称問題がぶり返しでてきて、いよいよご本人には政治的に致命的な「追い込み猟」がはじまっているようだ。
決定的なのは、今月号の『文藝春秋』に発表された、元側近にして、元環境省(庁)官僚でいまは弁護士の資格をもつひとからの告発である。
背景に、小池氏の後ろ盾だった、二階氏の引退(じつは彼女は「小沢チルドレン」のひとりでもある)による、パンドラの箱が開くがごとくがあることは、素人でもわかる。
つまるところ、旧田中派の生き残った二枚看板によって、「虎の威を借る狐(タヌキではない)」の化けの皮が剥がれだしたのだともいえる。
天邪鬼なわたしなので、告発者の側のトンチンカンが気になるのは、当初、小池氏の学歴についてなにも疑わなかったことにある。
東大を三番(どうして順位がわかるのかしらないが)で卒業したという、ご本人からしたら、相手がカイロ大学だということも、東大とおなじ事務能力だと思いこんだらしい。
この程度の社会常識が、わが国のエリート官僚の世間知らずなのである。
大政治家の神通力が消えたからか?朝堂院大覚氏という「本命」が現れた。
この御仁は築地移転騒動のときに、「女将さん会」にこうした情報を提供していたというから、今回がはじめての証言ではない。
氏は、小池氏の父(勇二郎氏)の借金を肩代わりして、エジプトでの一家の生活を支えていたのだと証言し、百合子氏がカイロ大を卒業したはずがないことに切り込んだ。
日本レストラン『なにわ』にまつわる話は、わたしがしる話と合致している。
逆に、この店の名前の元になった「浪速冷凍機工業」との関係がようやくわかった。
そんなわけで、この「詐称」についての定義は、日本的感覚とはことなる部分と、「国内法」にてらした部分とに分解できる。
日本的感覚とはことなるのは、人脈(コネ)とカネでなんとでもなる世界が、あんがいと世界では「ふつう」であることが重要な基本認識だ。
たとえば、同時代で世界でもっとも腐敗していると評価されていたのが、ウクライナであって、これはいまもおなじだ。
ちなみに、ゼレンスキー氏の母語はロシア語で、このひとは、ウクライナ語を話しても、第二語学レベルでしか話せないのである。
40年程前にわたしが暮らしたカイロも、なにかといえば袖の下を、相手から要求されるのがふつうであった。
上の、朝堂院氏の発言にある「ドクター、ハーテム氏」というのは、わたしもしっている有名なエジプト政界のフィクサーで、大統領だけではない、政官民へ果てしない影響力を行使していた人物である。
そんなわけで、朝堂院氏が、ハーテム氏を通じて百合子氏を「2年生に編入」というのは、カイロ・アメリカン大学からの編入という意味だとおもわれ、1年後に全科目で落第して退学したというのは、進級試験を受けた、という意味で意外だった。
わたしは、聴講生だとばかりおもっていたからである。
聴講生は、百年学ぼうが決して卒業はできないからだ。
よって、彼女がいう、「卒業証書」やら「卒業証明書」の真偽が問われるのは当然として、重要なのが、「本物」である可能性がある、ということなのである。
すると、日本的には絶対にあり得ない事態となるのだが、彼の国の実情からしたら、「本物」を裏ルートから入手することは、いがいと容易だとおもう。
しかし、どうしてこのような「不正」がはびこるのか?と問えば、こたえはいがいと単純で、「本人の実力を評価せよ」という思想があるにちがいないのである。
たとえば、中東世界の伝統的な買い物で、定価あるいは表示価格でそのまま買う者はいない。
値切ることが重要なのではなくて、買う側が示す金銭的価値と売る側が示す価値を一致させる手間をかけるのがふつうだからである。
自分が定価通り100で買った同じモノを、横の人が50で買っているのだってふつうにある。
それで返金してくれっこないのが、店主のいう「あなたは100だと評価した」というひとことでおわるからである。
ならばもう1単位を追加で、25で売れと要求したら、店主はニヤリと笑って応じてくれてるような国なのだ。
この計算を、エジプト人の店主はちゃんと暗算でやる。
日本人が交渉ベタなのは、骨髄反射的な暗算もできないからで、儲けたつもりで損をしていることにも気づかない。
小池氏は、エジプトの価値観を利用して「本物」を手にしたかもしれないが、その実力がぜんぜんないことがバレだして、彼女を利用してきたものたちの化けの皮までもが剥がされているのである。
驚くのは、彼女が用いた最強の武器が、アラビア語ではなくてただの「女の武器」だったことの証言である。
さて、ここは日本という、特殊な事情の国だから、「法」をもってすると、「私文書偽造」が刑事罰の対象となる。
すでに、股分の千代田区長は雲隠れして、彼女にまつわる者たちの悪事が晒されだした。
もう、これは、ただの「学歴詐称」なんてものではなく、政界・民間をまたにかけた大スキャンダルになるかもしれないのだ。
浄化は、いがいなところからはじまっているけれど、半世紀も彼女を利用してきた者たちの「被害」が絶大なので、とかげの尻尾切りもはじまっているにちがいないのである。