20日付け「プレジデントオンライン」における、船津昌平東京大学大学院経済学研究科講師による、「どんなスキャンダルも参政党を崩せない」としたタイトルの記事が興味深いので書いておく。
その第一に、この記事ではバーナードの組織成立要件を挙げていることがある。
それは、共通目的、協働意欲、コミュニケーションの3つである。
「協働」であって、「共同」でも「共働」でもないことに注意がいる。
あんがいとこの漢字の組合せを気分で使い分けるひとがいるけれど、意味がぜんぜんちがうので気をつけたい。
船津氏はここで、以上の要件を参政党は満たしていると書いている。
さらに、加えて、参政党は「帰属意識」の醸成にも成功しているようにみえるという。
これは、たんに集団に加わっているということではなくて、心から生活根拠として感じている、という意味でのことであると説明している。
これを、党員が語ったという「大人の部活」を引用して解説していることでも説得力がある。
むかしの「日本的経営」の特徴だった、「メンバーシップ型雇用=終身雇用」が欧米型の「ジョブ型雇用」に移行(させられて)して、「正社員」と「非正規」に分裂する中、参政党のメンバーシップ型が企業組織で達成し得ない機能を見出している、という指摘はおもしろい。
本ブログでは、こうした制度上の移行と変化は、ソ連との冷戦に勝利したアメリカのグランドストラテジーの変更に伴う、日・独経済の「刈り取り」モードに入ったことでの指示だったと論じてきた。
ちなみに、「戦前」のはるか前、明治30年から策定がはじまった、オレンジ計画=日本占領計画、は、アメリカという国の恐るべき戦略性の証拠になっていて、そこにも「日本経済殲滅計画」が含まれていたのである。
まぁ船津氏は東大の教員なので、しっかり自己保身の文章(マスコミがいう参政党批判)もかましていて、教授連からの糾弾を予防していることが目立つのは、それほど左派に乗っ取られたアメリカの大学と東大がそっくりだと読めるのはオマケである。
さて、この文章には意外なポイントがある。
まず、古い価値観とされている「メンバーシップ型雇用」の時代こそが、経済成長期であったという事実である。
逆に、あたらしい「ジョブ型雇用」がはじまると、経済成長がとまって長い衰退の時代にはまり込んだのである。
そのエネルギーの逃げ口が、参政党という「大人の部活」だということだ。
つまり、よく指摘される「参政党現象」とは、あんがいとわかりやすい「物理現象」なのだと解釈できるのである。
もうひとつは、結果論からではなく、計画・設計上の試行錯誤の中で、なぜに参政党だけがバーナードの組織要件を満たすのか?ということである。
既存政党は、その結党時からこれまでの時間のなかで、どうしてこれを実行しなかったのか?ともなる。
すると、そもそも、政党を組織として捉えていないのではないか?という疑問に突き当たるのである。
それがまた、フランス革命におけるジャコバン党の興隆と独裁、挙げ句の崩壊といった歴史からの学習が無いことを意味するので、深刻なのである。
もちろん、その筆頭が自民党の現状における「(小さな)独裁」であろう。
いつ崩壊・辞任するともしれない石破首相が、19日、首相官邸でビル・ゲイツ氏と面談するやいなや彼の財団へ公金810億円の支援を約束したのは、いかなる予算措置があってのことなのか?がわからないのである。
これを、秋の臨時国会で追及するのはどの政党なのか?というリニアな問題になっているのだが、増税派こそここ一番の出番なのになにもしないだろうという暗黙の了解ができている。
横浜で開催の「アフリカ会議」用の予算だといえばその通りだが、ビル・ゲイツ財団を通す必要がどこにあるのか?
また、視点を変えて参政党の政策ではなくて、組織づくりを真似る政党がどこから出てくるのか不明だが、最強の組織づくりをしないで、民主主義ができるのか?という、段階にわが国の政界が入ったことは事実だろう。
逆に、企業が「メンバーシップ型雇用」をやっていた時代に、自民党と社会党の「55年体制」で安定政権が維持可能だったのは、民意を企業が肩替わりできていた良き時代だったともいえる。
これを壊した者共が、好き勝手しようかと目論んだところに「メンバーシップ型」の政党が民意を受けて成立しているので、既得権益者たちのイライラが攻撃的な代行をする組織を通じて、日当なにがしかでの日雇い妨害活動をしているのに、マスコミ以下がこれを批判しないことで答合わせが完了している。
船津氏がここまで書けない事情を隠さずに表現すれば、そういうことなのであろう。
すると、参政党の弱点は、参政党へと向かうエネルギー供給を止められることがもっとも痛手となるのである。
それには、メンバーシップ型雇用=終身雇用への回帰、が重要な施策となる。
少子化で若い労働力不足はいよいよ深刻度を増す中、その若者たちの雇用が非正規がメインとなる現状の構造を、過去のメンバーシップ型雇用=終身雇用にはやく回帰させる経営判断がキーとなるのは当然で、とくに退職者の扱いがどのようなものかを若者は観察していることも、鈍感な経営者に理解できているかどうか?が問われているといえよう。
まさに、マリー・アントワネットが生涯理解できなかったポイントなのである。